1 / 44
0.0001%の体質
しおりを挟む
景色がとてつもない速さで背後に流れていく。そしてその白い乗用車を、パトカーが猛スピードで追いかけて行く。
進路方向の信号はコントロールされ、交通事故が起こらないようにしつつ、巧みに白の乗用車を誘導している。
と、パトカーを振り切れない事に焦れたのか、白い乗用車の窓から杖が突き出され、パトカー目掛けて発射された。火の魔術だ。
パトカーは火の玉に慌ててハンドルを切り、横道にそれたり後続車とぶつかりそうになったりして、白い乗用車は追跡を振り切った。
「ざまあみろ!」
「ひゃっほう!」
テンションの高いままに歓声を上げる彼らだが、それには気付いていなかった。
「20秒後、来ます!」
「僕が車を減速させる」
「俺は車を止めよう!」
「オレが魔術師を無力化するぜ!」
短く骨伝導式の無線で確認し、その時を待つ。
と、20秒後に、交差点にその白い乗用車が飛び出して来た――と思った時には、3人が飛び込んでいる。
猛スピードの車に突風をぶつけてスピードを殺し、中からの攻撃に備えるのが1人。
白い乗用車に飛びつき、車を止めるのが1人。
白い乗用車に飛び掛かるようにして、魔術士の持つ杖を奪い取るのが1人。
「うおお!?何だ!?」
叫んで、反撃に移ろうとした時には、手遅れだ。3人に囲まれて武器を向けられている。
「警察だ。魔術の違法使用、銃刀法違反、銀行強盗、道交法違反で逮捕する」
そして手早く、犯人達に魔術が使用不可能になる手錠をかけていくと、白い乗用車の位置を捕捉し、タイミングを出す係をしていたもう1人も合流して来た。
「他に逃げた犯人はいませんよお」
坂下麻智、28歳。巨乳アイドルに見えるが、公安部公安公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。
「大丈夫ですか、ブチさん」
悠月 周、26歳。大人しくて目立たない平凡なタイプの、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。車の足止めを担当していた。
「おう!俺は身体強化系だからな!」
ニッと笑うのは、馬淵明夫、34歳。背も高くがっしりとした体格をした、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。車を素手で止めた人物だ。
「お、パトカーが来たぜ」
背後を振り返って言うのは、合田紘夢、26歳。小柄でニコニコとした、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。杖を取り上げる係を担当していた。
この4人が、公安部公安総務課第6公安捜査係4班のメンバーだ。
「係長、犯人を逮捕しました」
班長の馬淵が報告すると、無線の向こうから、女の声が応える。
『ご苦労様。全員ケガはない?』
笙野舞香32歳、公安部公安総務課第6公安捜査係の係長である。キリッとした美人キャリア上司だ。
「大丈夫です」
『なら、戻って来て』
それで、追い付いて来たパトカーの警察官に犯人を引き渡し、彼らは庁舎へと引き上げた。
魔素というものの存在が証明され、魔術というものが確立されるまで、魔術は都市伝説や魔法として扱われていた。
その内魔術という現象が認められると、それが扱える人間の少なさから、奇蹟的な体質と呼ばれた。
そして魔術を使える者が人口の0.0001%を占めている現在。魔術を違法な事に使用する者も現れた。
魔術を使える者は登録が義務化されたが、それでも魔術犯罪はおさまらなかった。その為、魔術犯罪に対抗できる部署を設立し、公安部公安総務課第6公安捜査係、通称魔術係としたのである。
部屋へ戻ると、待機当番に当たっていた1班が既に次の事件で出て行き、2班はまだ捜査中でおらず、待機当番に繰り上がった3班がデスクワークをしたりしていた。
「この分だと、俺達が待機当番になるのもすぐだな」
ヒロムが言うのに、あまねが同意する。
「待機が休暇だな」
「悲しすぎますぅ。買い物にだって行きたいのにぃ」
マチが溜め息をつくと、ブチさんが苦笑した。
「人数が増えればいいが、そう簡単ではないからな」
この公安部公安総務課第6捜査係に配属になるには、魔術士である事が不可欠だ。魔術士が全員警察官になるわけではないため、なかなか、難しいと言わざるを得ない。
「せいぜい、平和を祈ろう」
「ちぇーっ」
あまねが言って、ヒロムが口を尖らせる。
そして報告書を書き上げ、笙野が帰っていいと許可を出したので、彼らは退社した。
進路方向の信号はコントロールされ、交通事故が起こらないようにしつつ、巧みに白の乗用車を誘導している。
と、パトカーを振り切れない事に焦れたのか、白い乗用車の窓から杖が突き出され、パトカー目掛けて発射された。火の魔術だ。
パトカーは火の玉に慌ててハンドルを切り、横道にそれたり後続車とぶつかりそうになったりして、白い乗用車は追跡を振り切った。
「ざまあみろ!」
「ひゃっほう!」
テンションの高いままに歓声を上げる彼らだが、それには気付いていなかった。
「20秒後、来ます!」
「僕が車を減速させる」
「俺は車を止めよう!」
「オレが魔術師を無力化するぜ!」
短く骨伝導式の無線で確認し、その時を待つ。
と、20秒後に、交差点にその白い乗用車が飛び出して来た――と思った時には、3人が飛び込んでいる。
猛スピードの車に突風をぶつけてスピードを殺し、中からの攻撃に備えるのが1人。
白い乗用車に飛びつき、車を止めるのが1人。
白い乗用車に飛び掛かるようにして、魔術士の持つ杖を奪い取るのが1人。
「うおお!?何だ!?」
叫んで、反撃に移ろうとした時には、手遅れだ。3人に囲まれて武器を向けられている。
「警察だ。魔術の違法使用、銃刀法違反、銀行強盗、道交法違反で逮捕する」
そして手早く、犯人達に魔術が使用不可能になる手錠をかけていくと、白い乗用車の位置を捕捉し、タイミングを出す係をしていたもう1人も合流して来た。
「他に逃げた犯人はいませんよお」
坂下麻智、28歳。巨乳アイドルに見えるが、公安部公安公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。
「大丈夫ですか、ブチさん」
悠月 周、26歳。大人しくて目立たない平凡なタイプの、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。車の足止めを担当していた。
「おう!俺は身体強化系だからな!」
ニッと笑うのは、馬淵明夫、34歳。背も高くがっしりとした体格をした、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。車を素手で止めた人物だ。
「お、パトカーが来たぜ」
背後を振り返って言うのは、合田紘夢、26歳。小柄でニコニコとした、公安部公安総務課第6公安捜査係の警察官だ。杖を取り上げる係を担当していた。
この4人が、公安部公安総務課第6公安捜査係4班のメンバーだ。
「係長、犯人を逮捕しました」
班長の馬淵が報告すると、無線の向こうから、女の声が応える。
『ご苦労様。全員ケガはない?』
笙野舞香32歳、公安部公安総務課第6公安捜査係の係長である。キリッとした美人キャリア上司だ。
「大丈夫です」
『なら、戻って来て』
それで、追い付いて来たパトカーの警察官に犯人を引き渡し、彼らは庁舎へと引き上げた。
魔素というものの存在が証明され、魔術というものが確立されるまで、魔術は都市伝説や魔法として扱われていた。
その内魔術という現象が認められると、それが扱える人間の少なさから、奇蹟的な体質と呼ばれた。
そして魔術を使える者が人口の0.0001%を占めている現在。魔術を違法な事に使用する者も現れた。
魔術を使える者は登録が義務化されたが、それでも魔術犯罪はおさまらなかった。その為、魔術犯罪に対抗できる部署を設立し、公安部公安総務課第6公安捜査係、通称魔術係としたのである。
部屋へ戻ると、待機当番に当たっていた1班が既に次の事件で出て行き、2班はまだ捜査中でおらず、待機当番に繰り上がった3班がデスクワークをしたりしていた。
「この分だと、俺達が待機当番になるのもすぐだな」
ヒロムが言うのに、あまねが同意する。
「待機が休暇だな」
「悲しすぎますぅ。買い物にだって行きたいのにぃ」
マチが溜め息をつくと、ブチさんが苦笑した。
「人数が増えればいいが、そう簡単ではないからな」
この公安部公安総務課第6捜査係に配属になるには、魔術士である事が不可欠だ。魔術士が全員警察官になるわけではないため、なかなか、難しいと言わざるを得ない。
「せいぜい、平和を祈ろう」
「ちぇーっ」
あまねが言って、ヒロムが口を尖らせる。
そして報告書を書き上げ、笙野が帰っていいと許可を出したので、彼らは退社した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる