7 / 44
爆ぜる魔術士(6)よみがえる魔女
しおりを挟む
疲れ果てて席に戻ったところで、分析結果が届いた。
人体の構成物の他には、整髪料と、免疫抑制剤、大量の神経伝達物質が検出された。
それと、2種類のDNA。
「片方は首から下と一致。もう片方は別人。10年前に死亡した「魔女」と一致したらしいわ」
その笙野の言葉に、全員が言葉を失う。
10年前、魔女を自称した犯罪魔術士がいた。その魔女は身体強化と火に優れており、快楽殺人と強盗を繰り返しながらアメリカ、韓国、台湾、日本と暴れる舞台を移していたのだが、最後の日本で逃走中に脳梗塞を起こして死亡。氏名不詳の「魔女」のまま被疑者死亡で幕を下ろしたという事件があった。
「ああ、魔女。ちょうどその頃、俺は高校に入ったばっかりだったなあ」
ヒロムが思い出してポンと手を打った。
「うん。僕の周囲も騒がしかったな」
あまねも言う。
「そうか。お前らはその頃16か。
俺は交番勤務だったからな。どこかですれ違うかもと毎日緊張していたぞ。な」
ブチさんが言うと、マチが口を尖らせた。
「私は18ですよう。ピチピチの女子高生でした!」
「で、その魔女のDNAですか?」
ブチさんが聞こえないふりをした。
「ええ。何か移植でもされたのかしら」
笙野が言うのに、あまねが嫌そうに言う。
「爆ぜた頭部から検出したんですよね。という事は、脳?」
各々考える。
「脳移植?聞いた事ないぜ」
「その魔女が脳梗塞を起こした時、どこに運ばれて遺体はどうしたんですか」
「帝都医大に運ばれて、緊急手術をしたのちに死亡を確認。遺体は火葬されて無縁仏として処理された」
そこで、気付く。
「帝都医大で10年前と言えば、ヒロム」
「あ。深見が在籍してた期間と被るな、あまね」
「ますます怪しいってわけか」
ブチさんが鼻から豪快に息を吐き出した。
あまねとヒロムは、深見のところを訪れた。
「浅井さんの件でまだ何か」
深見は楽しそうに言った。
「魔女」
あまねが言うと、深見はわずかに瞳孔を収縮させた。
「――の手術をし、死亡が確認された後に解剖をしたのは、深見先生だと伺いました」
「はい。よく覚えていますよ」
深見はどこかを見つめながら言った。
「獄炎を操り、大の男も敵わないような力と、軽やかで素早い身のこなしを見せつけた、最高の魔術士。脳は梗塞を起こした下垂体がダメになっていましたが、あとはきれいなものでした。
生きて、魔術を使う時はどうなるのか。それが見たい。
どんなふうに脳が働いて、どう変化するのか。
この脳がどうやってあの炎を生み出したのか。直にそれを見てみたい」
そして、ハッと我に返ったようにあまねを見て、笑った。
「それが何か」
「その脳はどうしましたか」
「火葬されましたからねえ。流石に燃え残ったりはしませんでしたよ」
「そうですか。
脳、ね」
深見はうっとりとしたような目をあまねに向け、囁くように言った。
「この前、直にあなたが魔術を使う所を見て、感激しました。あの短時間で確実に魔式を読み、キャンセルする魔式を組み立て、撃つ。その演算能力は大したものです。そもそもキャンセルなんて魔術は聞いた事もない。一体あなたの脳はどうなっているのかと、あなたの脳を思うと眠れません。
せめて、死んだら献体してくれませんか。あなたの頭を解剖したい。あなたの脳が欲しい」
ヒロムは薄気味悪そうな顔をして深見を凝視し、あまねは平静を装って、
「ただの器用貧乏ですよ」
と言いながら、僅かに座り直して距離を開けた。
「ヒロム!何で助けない!?」
「いやあ、悪い悪い。薄気味悪くてよぉ」
「僕はマジで、脳みそ貸して下さいとか言われるかと思って怖かった!」
庁舎へ戻る車に乗り込んだ途端、あまねはヒロムに噛みついた。
「悪かったって、な。ラーメンおごってやるから!」
「……チャーシューデラックス」
「う。給料前に高いヤツを……わかった!奢る!」
そこにあるとわかっているのに届かない。そんなイライラする気分だった。
人体の構成物の他には、整髪料と、免疫抑制剤、大量の神経伝達物質が検出された。
それと、2種類のDNA。
「片方は首から下と一致。もう片方は別人。10年前に死亡した「魔女」と一致したらしいわ」
その笙野の言葉に、全員が言葉を失う。
10年前、魔女を自称した犯罪魔術士がいた。その魔女は身体強化と火に優れており、快楽殺人と強盗を繰り返しながらアメリカ、韓国、台湾、日本と暴れる舞台を移していたのだが、最後の日本で逃走中に脳梗塞を起こして死亡。氏名不詳の「魔女」のまま被疑者死亡で幕を下ろしたという事件があった。
「ああ、魔女。ちょうどその頃、俺は高校に入ったばっかりだったなあ」
ヒロムが思い出してポンと手を打った。
「うん。僕の周囲も騒がしかったな」
あまねも言う。
「そうか。お前らはその頃16か。
俺は交番勤務だったからな。どこかですれ違うかもと毎日緊張していたぞ。な」
ブチさんが言うと、マチが口を尖らせた。
「私は18ですよう。ピチピチの女子高生でした!」
「で、その魔女のDNAですか?」
ブチさんが聞こえないふりをした。
「ええ。何か移植でもされたのかしら」
笙野が言うのに、あまねが嫌そうに言う。
「爆ぜた頭部から検出したんですよね。という事は、脳?」
各々考える。
「脳移植?聞いた事ないぜ」
「その魔女が脳梗塞を起こした時、どこに運ばれて遺体はどうしたんですか」
「帝都医大に運ばれて、緊急手術をしたのちに死亡を確認。遺体は火葬されて無縁仏として処理された」
そこで、気付く。
「帝都医大で10年前と言えば、ヒロム」
「あ。深見が在籍してた期間と被るな、あまね」
「ますます怪しいってわけか」
ブチさんが鼻から豪快に息を吐き出した。
あまねとヒロムは、深見のところを訪れた。
「浅井さんの件でまだ何か」
深見は楽しそうに言った。
「魔女」
あまねが言うと、深見はわずかに瞳孔を収縮させた。
「――の手術をし、死亡が確認された後に解剖をしたのは、深見先生だと伺いました」
「はい。よく覚えていますよ」
深見はどこかを見つめながら言った。
「獄炎を操り、大の男も敵わないような力と、軽やかで素早い身のこなしを見せつけた、最高の魔術士。脳は梗塞を起こした下垂体がダメになっていましたが、あとはきれいなものでした。
生きて、魔術を使う時はどうなるのか。それが見たい。
どんなふうに脳が働いて、どう変化するのか。
この脳がどうやってあの炎を生み出したのか。直にそれを見てみたい」
そして、ハッと我に返ったようにあまねを見て、笑った。
「それが何か」
「その脳はどうしましたか」
「火葬されましたからねえ。流石に燃え残ったりはしませんでしたよ」
「そうですか。
脳、ね」
深見はうっとりとしたような目をあまねに向け、囁くように言った。
「この前、直にあなたが魔術を使う所を見て、感激しました。あの短時間で確実に魔式を読み、キャンセルする魔式を組み立て、撃つ。その演算能力は大したものです。そもそもキャンセルなんて魔術は聞いた事もない。一体あなたの脳はどうなっているのかと、あなたの脳を思うと眠れません。
せめて、死んだら献体してくれませんか。あなたの頭を解剖したい。あなたの脳が欲しい」
ヒロムは薄気味悪そうな顔をして深見を凝視し、あまねは平静を装って、
「ただの器用貧乏ですよ」
と言いながら、僅かに座り直して距離を開けた。
「ヒロム!何で助けない!?」
「いやあ、悪い悪い。薄気味悪くてよぉ」
「僕はマジで、脳みそ貸して下さいとか言われるかと思って怖かった!」
庁舎へ戻る車に乗り込んだ途端、あまねはヒロムに噛みついた。
「悪かったって、な。ラーメンおごってやるから!」
「……チャーシューデラックス」
「う。給料前に高いヤツを……わかった!奢る!」
そこにあるとわかっているのに届かない。そんなイライラする気分だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる