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爆ぜる魔術士(10)大人と子供の攻防戦
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あまねは深見と女児の様子を窺っていた。
失敗作と言っていたが、深見は女児を、魔術が使えると言っていた。
対して、あまねの魔銃杖は取り上げられていてここにはない。あまねは今、一般人と同じだ。
訓練をそれなりには受けているが、自信があるかと言われれば、無いと答えるだろう。
「21号。悠月君を捕まえろ。ケガをさせるのはいいが、頭はダメだ」
言いながら、深見は脳を再び床下に収納した。
深見の命令に、女児が人形のような顔のまま答える。
「はい、ドクター」
その声に温度はなく、目付きにも感情は浮かんではいない。それでも子供特有の幼い声だ。
テログループなどでは子供がれっきとした敵兵である事もあり、いちいちその見た目に騙される事が無いようにと研修では教える。
だが、そのために誕生させられ、そのための扱いだけを受け、それでも失敗作だと言われる目の前の子供を、「排除するべき敵魔術士」と即割り切れるものでもなかった。
(甘いと言われればそうなんだろうけどなあ)
やり難さを感じながら、あまねは前に一歩進み出る女児を注視した。
その頃、近くに潜んでいたヒロムたちは慌てていた。
「何で発信機とマイクが急に妨害されるの!?」
「あの家はそういう電波を遮断するようにできてるんだろ。落ち着けマチ」
「でもでもでも、そういうヒロムはさっきからずっと貧乏ゆすりしてるじゃないですかぁ」
ヒロムはグッと詰まった。
首尾よく深見の家に入り込めたのはいい。しかしその後、コーヒーを深見が淹れ始めた辺りで、いきなり全てが途絶えたのだ。
まあ頭では、深見が妨害するような仕掛けをコーヒーを淹れながら作動させたのだとはわかっている。そして、まだあまねがあの家を出ていない事も。
「突入のタイミングもこれではわからん」
ブチさんが唸り、
「個人宅でここまでの備えをしているとは予想外だった。俺のミスだ」
と言う。
「まさか、最新クラスの軍用品を装備しているとは、誰だって思わねえよ。
大丈夫。あまねはこの中ではキャリアこそ一番短いけど、機転が利くし、なんとかするぜ」
「でも、あんなものを準備するようなやつですよ?当然、魔術封じの手は打ってますよ」
そしてヒロムは、またしてもマチの言葉にグッと詰まったのだった。
女児は、一応外で子供が持っていてもおかしくないものを選んだのか、見た目はアニメの魔法少女のバトンを持っていた。まあ、魔法少女のバトンを買って来て、中に魔術士の本物の杖を仕込んだのだろう。
「へえ。子供のために魔法のバトン?いいお父さんじゃないか」
女児は相変わらずの無表情。深見はにっこりと笑い、
「君のオリジナルの脳を入れるケースを工夫しようか。リクエストがあれば受け付けるよ」
と言う。
「自前の頭蓋骨がいいね」
深見は肩を竦めた。
女児はバトンをあまねに向けた。
魔力のゆらぎを感知して、横っ飛びに跳ぶ。するとあまねのいた所に、雷が突き刺さった。
続けてあまねは場所を次々と変え、女児はそのあまねを追って、雷を落としまくる。
次第に慌て出したのは深見だ。
「あ。まずい!」
しかし気付くのが遅かった。雷が電線をショートさせ、灯りが落ちた。真っ暗だ。
その中で周囲がわかるのは、感知能力を持った魔術士だけだ。
あまねは素早く接近し、女児の手からバトンを取り上げた。女児も感知していたが、純粋な力の差では、子供が大人に敵うべくもない。
そこで初めて、女児が感情を見せた。
「返して!私は、ドクターのお役に立てなければ!」
「どうした!?21号!?ええい、失敗作め!」
「申し訳ありません、ドクター!ドクターの為に!」
「落ち着け!君は誰かの言いなりにならなくていい!」
「ドクター!」
「逃がすな!お前の代わりはいくらでもいる!」
「わかりました!」
「おい!?」
真っ暗闇の中で、声と感情が錯綜する。
「ドクターの為に!!」
あまねにしがみついた女児から、何かの力が一瞬であまねに飛び込んで来た。
失敗作と言っていたが、深見は女児を、魔術が使えると言っていた。
対して、あまねの魔銃杖は取り上げられていてここにはない。あまねは今、一般人と同じだ。
訓練をそれなりには受けているが、自信があるかと言われれば、無いと答えるだろう。
「21号。悠月君を捕まえろ。ケガをさせるのはいいが、頭はダメだ」
言いながら、深見は脳を再び床下に収納した。
深見の命令に、女児が人形のような顔のまま答える。
「はい、ドクター」
その声に温度はなく、目付きにも感情は浮かんではいない。それでも子供特有の幼い声だ。
テログループなどでは子供がれっきとした敵兵である事もあり、いちいちその見た目に騙される事が無いようにと研修では教える。
だが、そのために誕生させられ、そのための扱いだけを受け、それでも失敗作だと言われる目の前の子供を、「排除するべき敵魔術士」と即割り切れるものでもなかった。
(甘いと言われればそうなんだろうけどなあ)
やり難さを感じながら、あまねは前に一歩進み出る女児を注視した。
その頃、近くに潜んでいたヒロムたちは慌てていた。
「何で発信機とマイクが急に妨害されるの!?」
「あの家はそういう電波を遮断するようにできてるんだろ。落ち着けマチ」
「でもでもでも、そういうヒロムはさっきからずっと貧乏ゆすりしてるじゃないですかぁ」
ヒロムはグッと詰まった。
首尾よく深見の家に入り込めたのはいい。しかしその後、コーヒーを深見が淹れ始めた辺りで、いきなり全てが途絶えたのだ。
まあ頭では、深見が妨害するような仕掛けをコーヒーを淹れながら作動させたのだとはわかっている。そして、まだあまねがあの家を出ていない事も。
「突入のタイミングもこれではわからん」
ブチさんが唸り、
「個人宅でここまでの備えをしているとは予想外だった。俺のミスだ」
と言う。
「まさか、最新クラスの軍用品を装備しているとは、誰だって思わねえよ。
大丈夫。あまねはこの中ではキャリアこそ一番短いけど、機転が利くし、なんとかするぜ」
「でも、あんなものを準備するようなやつですよ?当然、魔術封じの手は打ってますよ」
そしてヒロムは、またしてもマチの言葉にグッと詰まったのだった。
女児は、一応外で子供が持っていてもおかしくないものを選んだのか、見た目はアニメの魔法少女のバトンを持っていた。まあ、魔法少女のバトンを買って来て、中に魔術士の本物の杖を仕込んだのだろう。
「へえ。子供のために魔法のバトン?いいお父さんじゃないか」
女児は相変わらずの無表情。深見はにっこりと笑い、
「君のオリジナルの脳を入れるケースを工夫しようか。リクエストがあれば受け付けるよ」
と言う。
「自前の頭蓋骨がいいね」
深見は肩を竦めた。
女児はバトンをあまねに向けた。
魔力のゆらぎを感知して、横っ飛びに跳ぶ。するとあまねのいた所に、雷が突き刺さった。
続けてあまねは場所を次々と変え、女児はそのあまねを追って、雷を落としまくる。
次第に慌て出したのは深見だ。
「あ。まずい!」
しかし気付くのが遅かった。雷が電線をショートさせ、灯りが落ちた。真っ暗だ。
その中で周囲がわかるのは、感知能力を持った魔術士だけだ。
あまねは素早く接近し、女児の手からバトンを取り上げた。女児も感知していたが、純粋な力の差では、子供が大人に敵うべくもない。
そこで初めて、女児が感情を見せた。
「返して!私は、ドクターのお役に立てなければ!」
「どうした!?21号!?ええい、失敗作め!」
「申し訳ありません、ドクター!ドクターの為に!」
「落ち着け!君は誰かの言いなりにならなくていい!」
「ドクター!」
「逃がすな!お前の代わりはいくらでもいる!」
「わかりました!」
「おい!?」
真っ暗闇の中で、声と感情が錯綜する。
「ドクターの為に!!」
あまねにしがみついた女児から、何かの力が一瞬であまねに飛び込んで来た。
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