公安部公安総務課魔術係

JUN

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潜入捜査(6)仁義なき戦い

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 探すフリをしながら、キングと幹部の到着を待った。
 1時間弱で、車が2台到着した。どちらもルーフがあるバンだ。
 そして片方からは2人、もう片方からは5人の男が下りて来た。その5人の方にBが走り寄り、ヘコヘコして何かを言い、殴られて転がると、悲痛な声を上げる。「キ、キング!必ず見つけ出します!だから!」
 それで男達は、揃って建物の中に入って行った。
 それを上の階から見ていたあまねとイチは、頭を引っ込めた。
「来たな。で、どうするって?」
 あまねは杖を空へ向けた。
「上は囲われてないからな。狼煙を上げるんだよ」
 すると光の玉は上空に上がり、パアッと広がった。明るい日中なので目立たないが、注意してここを見ているならわかる。そんな光量だ。
「さて。万が一に備えて、入り口をふさぐか」
 あまねとイチは、部屋を出た。

 1階に降りると、エントランスに幹部とキングとBが揃っていた。
 Bは無駄に偉そうに言う。
「見つかったのか!?とっとと探しやがれ!」
 あまねとイチはその前を通って建物の外に出ると、入り口付近にしゃがみ込む。
「いつ来るんだ」
 こそっとイチが訊くので、あまねもこそっと答える。
「すぐだろう」
 背後では、Bが幹部やキングに質問されて、頭を下げながら答えていた。
 と、
「見つかり次第知らせろ。それと、犯人もここの連中も、逃がすな。B班は消毒した方がいいだろう」
「はい!」
というやり取りの後、キングと幹部が車の方へ歩いて来る。
 しかし、車のタイヤはパンクさせてある。
「ああーっ!?」
 乗り込もうと近付いたところで、気が付いた。しかも2台共なので、人為的なものだとも気付いた。
「誰だ!?」
 中の2人が杖を引き抜いて構え、ほかの幹部連中と一緒に周囲を見やる。
 その視線が、そこを通ったあまねとイチに向くのは自然な事だろう。
「おい!」
 尖った声がかけられる。
「はい?」
 のんびりと返事をしながら、あまねとイチは肩越しに振り返った。
「サンとイチ。またお前らか」
 Bがズカズカとあまね達の方へと近付いて来る。
 あまねはイチに、
「目を閉じてろ。できれば向こうを向いて」
と小声で言っておく。
「また?」
 聞きとがめる幹部に、Bは失点回復のチャンスと見たのか、張り切ってあまねの胸倉を掴んで立たせた。
「ええ。こいつら、妙に――」
 言った途端、体を硬直させる。
「どうした?妙に、何だ?おい?」
 変なところで途切れた言葉に彼らは怪訝な表情を浮かべるが、次の瞬間、いきなり目の前に眩しい光が出現し、目を抑えて叫び出した。
「眩しい!?」
「くそ!何も見えねえ!?」
 あまねは目を閉じた上で、雷で失神させたBの体を盾にしていたので大丈夫だ。
「おい、イチ――何やってんだ」
 イチは同じように悶絶していた。
「目を閉じて向こう向いてろって言っただろ?」
「何するかわからないから、つい見てたんだよ!」
「ああ。6係だと魔術慣れしてるから、こういう時には素直に皆従うんだよなあ」
 あまねが、参ったなあとぼやいていると、
「警察だ!!」
とヒロム達がなだれ込んで来た。
「あまね!ん?」
「こいつらがキングと幹部とこのB班のリーダー。魔術士が2人いるぞ」
「そいつは?」
 ヒロムが訊き、イチは立ち上がって小声で言った。
「マトリだ。先に潜入捜査していた。窃盗と魔術士は譲るが、クスリと工場と密売ルートはウチで引き取らせてもらおう」
 キリッと宣言したのはいいが、視力が回復していなかったので、壁に向かって宣言する事となった。

 無事にあの青年と妹は保護され、窃盗団の残りのメンバーも逮捕された。
 クスリと工場と密売ルートは、各々の上の方で話し合いがあり、厚生省が押さえた。
 そしてあまねも潜入中の報告書を書き、ようやく解放された。
「お疲れさん。いやあ、まさかマトリの潜入捜査員とかち合うとはなあ」
 ヒロムが面白そうに言う。
「無駄に警戒して損したよ。まあ向こうも思ってるだろうけどな」
 あまねはそう言って、イチの無駄にクールな顔を思い出した。
「あいつ、メロンパンを笑うんだぞ。パンの一番はチョココロネだとか言うんだ」
 それにヒロムも真面目な顔になる。
「何?一番はコロッケパンだろう」
 ブチさんも口を出す。
「待て待て待て。やっぱりあんぱんこそが王道だ」
 マチも負けてはいない。
「意義ありです!クロワッサンに決まってます!」
「ちょっと待てよ。メロンパンだろ?」
「何でだよ。あれはおやつだぜ」
「いや、おやつって」
 そしてここでも、パン戦争が勃発したのだった。



 
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