20 / 25
盗賊団でござる
仮契約
しおりを挟む
彼らの里は攻め滅ぼされ、辛うじて生き延びた者がここに落ち延び、隠れ暮らしていたという。当然、暮らしは貧しい。それでも、武器である諜報能力と自然の中で生きる術を頼りに、どうにか生きているという。
首尾よく盗賊団の隠れ里を見付ける事ができれば、抱える。そういう事で仮契約を交わした後、早速数人が調査のために里を出て行った。
「ガセネタをつかまされたなあ、坂口達は」
「情報は大事だからな、何事でも」
「否定はしないけど、忍びと聞いて喜んだよね、佐之」
「う、それは、まあ、ロマンだ!」
「おお、開き直ったぞ、宗二郎、秀克」
「ははは!」
「いや、あんたの許嫁、無鉄砲で型破りすぎるから。わかってるのかな、秀克」
ぎゃあぎゃあ言いながら待つ4人を、彼ら「烏丸衆」は面白そうに見ていた。
「国家老の嫡男も器が大きいし、あれでも決して油断していなかった」
「ああ。もしもあの姫に少しでも何かするそぶりを見せたら、一瞬のうちに首を飛ばされていただろうな」
「恐ろしい夫婦になりよるな」
そうこうしているうちに、もう戻って来た。
「わかったぞ。隣の山の滝つぼの奥だ。荷車と馬と米は、港近くの倉に運び込んでいる」
「早いな!」
ドヤ顔をして、報告を続ける。
「ケガ人も、ここに運び込まれて寝かされていた」
それを聞いて、表情を引き締める。
「倉に米を運び込んでも、売られた米を運び込んだだけと思われたんだろうな」
光三郎は半ば感心したように言った。
「ケガ人のいる今踏み込んでしまえば、米問屋諸共、言い訳ができないだろう」
「その倉のある港は、どちらの領地だ」
秀克が訊く。
「本宮家か、それとも」
「白井家です」
「すぐに国家老に文を書いて、白井家にも話を通してもらおう。
まあ、俺達はこのまま倉を見張って、可能なら援軍を待つ。逃げそうなら先に捕縛する」
秀克が方針を決め、佐之輔が同意し、急いでそこを目指した。
港近くの倉庫街は、物を運び込んだり運び出したりする人々がたくさんいた。
「イカか。これが気に入ったぞ」
「私はイワシの煮付けがいいなあ」
倉の見える食堂でまずは腹ごしらえと、見張りながら食事を摂っていた。
「この辺りは新鮮な海の幸が豊富だからな。大きな貝を捕ってすぐ焼いて食うのも美味いぞ」
「わあ。いいなあ」
「いずれ、浜で楽しもう」
秀克が穏やかに笑って佐之輔に言い、佐之輔は嬉しそうに、
「だったら、これも捕ってみたい」
とマグロを指した。
「それは、ちょっと難しいな。大物だから、漁師に頼まないと」
「そうか」
言いながらも、諦めていない目付きの佐之輔だった。
「あ」
坂口が部下と2人で現れたので、手招きして呼ぶ。
「どうだ」
「はい。今頃あちらに知らせが届いているかと」
丼を食し、見張りを続ける。食べ終わったので、酒を注文し、チビチビとやりながら居座る。
それもそろそろ限界かと思いかけた頃、倉に商人が入って行き、荷車が倉の前につけられた。
「まずい。もう待てん」
「行くぞ」
一同はすっくと立って、倉を目指した。
「待ってもらおうか」
「何でしょうか」
「あ、お前らは――!」
浪人がこちらに気付いて指を指し、商人がチッと舌打ちをしてから、笑顔を浮かべた。
「お役人様ですか。勝手に入り込んだネズミがおりまして、困っておりました。どうか退治をお願いいたします」
ギョッとしたように、浪人達やケガ人達が体を固くした。
「貴様、裏切るか!」
「何の事でしょう」
それに、佐之輔がフフフと笑う。
「大黒屋とやら。この者達はネズミと申すか」
「はい、その通りでございます、お武家様」
「そうか。貴様はそのネズミの親玉ではないか。のう?」
「何を仰います」
「坂口!倉を閉めよ!1人として逃がすでないわ!」
「ははっ!」
坂口が倉を閉め、逃げ道がなくなった。
「な、な」
狼狽える米問屋大黒屋主とケガ人達を見、全員殺してやると言わんばかりの目付きの浪人達を見た。
「抵抗いたすな。証拠、証人は揃っておる」
「黙れ、黙れ、黙れ!」
血走った目で睨みつけ、反撃の意志があるのは、浪人4人と軽症の百姓者3人ほどだった。
その浪人の中の1人が、スッと前へ出た。中々の手練れと推測できる構えだ。
「大人しくしてはもらえぬか。仕方が無いのう。秀克、光三郎、宗二郎。猶予は与えた。それでも向かって来る者は斬れ」
言いながら、刀を抜く。同時に皆も抜いた。
「御意」
「我ら、ここで死ぬ気はない。参る!」
浪人達がかかって来る。
まずは最初の1人が、秀克に向かった。秀克は静かにそれを待つかの如く見え、いきなりこちらから仕掛け、押し、危なげなく斬り捨てた。
ほぼ同時にかかって来たのは佐之輔へと向かったが、それを佐之輔はふわりふわりと受け、相手がじれて乱れたところで電光石火の如く攻撃に転じ、顔色も変えずに斬り捨てる。
それを見ていてやや怯んだ様子の2人は光三郎と宗二郎に向かう。
光三郎は呑気そうな表情のまま、初手を受けてそのまま押し込み、一気に決めてしまう。
宗二郎はおろおろとしたような顔で、
「やっぱりこうなったよなあ」
と言いながら、相手の攻撃を受け流し、位置を変え、相手がイラッとしたところを一気に突き込んだ。
4人共、息の乱れもない。
「ああ……」
これで残りも抵抗の意志を失い、ヘナヘナと座り込んだ。
そこで、外から声がかかった。
「白井家ご家中の方々が到着されました!開けます!」
重い扉が開き、ドヤドヤと捕り方がなだれ込んで来て、中の光景に足を止めた。
「抵抗され、やむなく」
秀克が言い、大黒屋主が頭を抱えた。
首尾よく盗賊団の隠れ里を見付ける事ができれば、抱える。そういう事で仮契約を交わした後、早速数人が調査のために里を出て行った。
「ガセネタをつかまされたなあ、坂口達は」
「情報は大事だからな、何事でも」
「否定はしないけど、忍びと聞いて喜んだよね、佐之」
「う、それは、まあ、ロマンだ!」
「おお、開き直ったぞ、宗二郎、秀克」
「ははは!」
「いや、あんたの許嫁、無鉄砲で型破りすぎるから。わかってるのかな、秀克」
ぎゃあぎゃあ言いながら待つ4人を、彼ら「烏丸衆」は面白そうに見ていた。
「国家老の嫡男も器が大きいし、あれでも決して油断していなかった」
「ああ。もしもあの姫に少しでも何かするそぶりを見せたら、一瞬のうちに首を飛ばされていただろうな」
「恐ろしい夫婦になりよるな」
そうこうしているうちに、もう戻って来た。
「わかったぞ。隣の山の滝つぼの奥だ。荷車と馬と米は、港近くの倉に運び込んでいる」
「早いな!」
ドヤ顔をして、報告を続ける。
「ケガ人も、ここに運び込まれて寝かされていた」
それを聞いて、表情を引き締める。
「倉に米を運び込んでも、売られた米を運び込んだだけと思われたんだろうな」
光三郎は半ば感心したように言った。
「ケガ人のいる今踏み込んでしまえば、米問屋諸共、言い訳ができないだろう」
「その倉のある港は、どちらの領地だ」
秀克が訊く。
「本宮家か、それとも」
「白井家です」
「すぐに国家老に文を書いて、白井家にも話を通してもらおう。
まあ、俺達はこのまま倉を見張って、可能なら援軍を待つ。逃げそうなら先に捕縛する」
秀克が方針を決め、佐之輔が同意し、急いでそこを目指した。
港近くの倉庫街は、物を運び込んだり運び出したりする人々がたくさんいた。
「イカか。これが気に入ったぞ」
「私はイワシの煮付けがいいなあ」
倉の見える食堂でまずは腹ごしらえと、見張りながら食事を摂っていた。
「この辺りは新鮮な海の幸が豊富だからな。大きな貝を捕ってすぐ焼いて食うのも美味いぞ」
「わあ。いいなあ」
「いずれ、浜で楽しもう」
秀克が穏やかに笑って佐之輔に言い、佐之輔は嬉しそうに、
「だったら、これも捕ってみたい」
とマグロを指した。
「それは、ちょっと難しいな。大物だから、漁師に頼まないと」
「そうか」
言いながらも、諦めていない目付きの佐之輔だった。
「あ」
坂口が部下と2人で現れたので、手招きして呼ぶ。
「どうだ」
「はい。今頃あちらに知らせが届いているかと」
丼を食し、見張りを続ける。食べ終わったので、酒を注文し、チビチビとやりながら居座る。
それもそろそろ限界かと思いかけた頃、倉に商人が入って行き、荷車が倉の前につけられた。
「まずい。もう待てん」
「行くぞ」
一同はすっくと立って、倉を目指した。
「待ってもらおうか」
「何でしょうか」
「あ、お前らは――!」
浪人がこちらに気付いて指を指し、商人がチッと舌打ちをしてから、笑顔を浮かべた。
「お役人様ですか。勝手に入り込んだネズミがおりまして、困っておりました。どうか退治をお願いいたします」
ギョッとしたように、浪人達やケガ人達が体を固くした。
「貴様、裏切るか!」
「何の事でしょう」
それに、佐之輔がフフフと笑う。
「大黒屋とやら。この者達はネズミと申すか」
「はい、その通りでございます、お武家様」
「そうか。貴様はそのネズミの親玉ではないか。のう?」
「何を仰います」
「坂口!倉を閉めよ!1人として逃がすでないわ!」
「ははっ!」
坂口が倉を閉め、逃げ道がなくなった。
「な、な」
狼狽える米問屋大黒屋主とケガ人達を見、全員殺してやると言わんばかりの目付きの浪人達を見た。
「抵抗いたすな。証拠、証人は揃っておる」
「黙れ、黙れ、黙れ!」
血走った目で睨みつけ、反撃の意志があるのは、浪人4人と軽症の百姓者3人ほどだった。
その浪人の中の1人が、スッと前へ出た。中々の手練れと推測できる構えだ。
「大人しくしてはもらえぬか。仕方が無いのう。秀克、光三郎、宗二郎。猶予は与えた。それでも向かって来る者は斬れ」
言いながら、刀を抜く。同時に皆も抜いた。
「御意」
「我ら、ここで死ぬ気はない。参る!」
浪人達がかかって来る。
まずは最初の1人が、秀克に向かった。秀克は静かにそれを待つかの如く見え、いきなりこちらから仕掛け、押し、危なげなく斬り捨てた。
ほぼ同時にかかって来たのは佐之輔へと向かったが、それを佐之輔はふわりふわりと受け、相手がじれて乱れたところで電光石火の如く攻撃に転じ、顔色も変えずに斬り捨てる。
それを見ていてやや怯んだ様子の2人は光三郎と宗二郎に向かう。
光三郎は呑気そうな表情のまま、初手を受けてそのまま押し込み、一気に決めてしまう。
宗二郎はおろおろとしたような顔で、
「やっぱりこうなったよなあ」
と言いながら、相手の攻撃を受け流し、位置を変え、相手がイラッとしたところを一気に突き込んだ。
4人共、息の乱れもない。
「ああ……」
これで残りも抵抗の意志を失い、ヘナヘナと座り込んだ。
そこで、外から声がかかった。
「白井家ご家中の方々が到着されました!開けます!」
重い扉が開き、ドヤドヤと捕り方がなだれ込んで来て、中の光景に足を止めた。
「抵抗され、やむなく」
秀克が言い、大黒屋主が頭を抱えた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる