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狩り(1)バイトの誘い
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新しい、連続女子高生拷問殺人事件の被害者は、前橋弓香。
セレとも、あの友人達との誰とも、接点が見付からなかった。学校も違うし、塾などにも通ってない。春に越して来たばかりで、小中学校が同じというわけでもない。
捜査本部は、世間からも上からも、厳しい目で見られていた。
刑事は何が何だか推論も立たないまま、前橋の周囲や遺体発見現場の周囲を調べていた。
「犯人はどんなやつなんだろうな」
刑事コンビはそう言って、少し休憩と川沿いの日陰にあるベンチに座った。
2人のホームレスが、ブルーシートのテントの外で涼み、話をしている。
「ああいうやつらかな」
「どうだろう。ホームレスだと、女子高生が最初から警戒して近付けないんじゃないか?」
「まあ、そうですよね」
本気で言ったわけでもないとは、相方も分かっている。
何となく眺めてから、
「行くか」
と腰を上げた。
ホームレスは、温くなったペットボトルの水を飲みながら、話をしていた。
「暑いなあ」
「はは。夏は暑くて地獄だけど、冬は凍えて地獄だ。どっちがましかね」
それに新入りは苦笑した。キズと名乗ってはいるが、モトだ。
「こんな所から出て、クーラーの効いた部屋でキンキンに冷えたビールでも飲みてえな」
初老の方はそう言って嘆息すると、新入りを見た。
「キズさんよ。お前さん、まだ若いのにこんな暮らしを続けてていいのか?」
それにモトは苦笑を浮かべて顔を俯けた。
「俺は、表には出られないんですよ」
初老のホームレスはそんなモトを横目で見ると、一応辺りを見回して誰も近くにいない事を確認し、言った。
「バイトがあるんだけどよ。やってみるか?」
モトは顔を上げた。
「そこそこ若いヤツがいいらしくてな。俺はこの通り膝を傷めちまってて無理なんだ。
でも、お前さんなら行けそうだ。どうだ。募集は1人。俺はこれと思った相手に声をかけるのを頼まれててな」
モトは考えるようにしながら、訊いた。
「何のバイトですか。もしかして、特殊詐欺の受け子とか」
「そういうんじゃないらしい。よくは知らないけどよ、何か、金持ち連中のアウトドアの手伝いらしい」
「へえ、アウトドアかあ。やります」
「そうかい。わかった。じゃあ、日時が決まったら知らせるからよ」
「はい」
モトは控えめな笑みを浮かべた。
話は1週間前にさかのぼる。
薬師が持って来たのは、狩りの話だった。それもただの狩りではない。人間を獲物とした狩りだ。
矢傷や銃創を負った遺体が何体も発見されたのは、偶然だった。不法投棄の調査で赴いた山でそういう遺体が遺棄されているのを発見し、あまりにも衝撃が大きい事を考慮し、発表を控え、捜査が始められた。
そして浮かび上がったのが、この河川敷で暮らすホームレスだった。ここにいたのが急に姿を消し、遺体となって見つかったのだ。
しかし姿を消す前に、親しい間柄のホームレスに、
「秘密だけど、割のいいバイトを紹介されたんだ。1回に1人の募集らしいから、次はお前がやるといいぜ。言っちゃだめなんだけどな、これ。
だから、ハッキリとは言わない。いいか。ヤブさんには嫌われるな。いいな」
そう言っていたらしい。
そこで、探りを入れるために河川敷に潜入する事になったのだが、誰が行くかが問題だ。
が、
「オレは無理だね」
といの一番にリクが抜けた。
確かに、引きこもりのリクにできるとは誰も思わない。
だが、高校生のセレにできるとも、させていいとも思えなかった。
「わかった。俺がやる」
こうしてモトが、その役に立候補したのだった。
セレとも、あの友人達との誰とも、接点が見付からなかった。学校も違うし、塾などにも通ってない。春に越して来たばかりで、小中学校が同じというわけでもない。
捜査本部は、世間からも上からも、厳しい目で見られていた。
刑事は何が何だか推論も立たないまま、前橋の周囲や遺体発見現場の周囲を調べていた。
「犯人はどんなやつなんだろうな」
刑事コンビはそう言って、少し休憩と川沿いの日陰にあるベンチに座った。
2人のホームレスが、ブルーシートのテントの外で涼み、話をしている。
「ああいうやつらかな」
「どうだろう。ホームレスだと、女子高生が最初から警戒して近付けないんじゃないか?」
「まあ、そうですよね」
本気で言ったわけでもないとは、相方も分かっている。
何となく眺めてから、
「行くか」
と腰を上げた。
ホームレスは、温くなったペットボトルの水を飲みながら、話をしていた。
「暑いなあ」
「はは。夏は暑くて地獄だけど、冬は凍えて地獄だ。どっちがましかね」
それに新入りは苦笑した。キズと名乗ってはいるが、モトだ。
「こんな所から出て、クーラーの効いた部屋でキンキンに冷えたビールでも飲みてえな」
初老の方はそう言って嘆息すると、新入りを見た。
「キズさんよ。お前さん、まだ若いのにこんな暮らしを続けてていいのか?」
それにモトは苦笑を浮かべて顔を俯けた。
「俺は、表には出られないんですよ」
初老のホームレスはそんなモトを横目で見ると、一応辺りを見回して誰も近くにいない事を確認し、言った。
「バイトがあるんだけどよ。やってみるか?」
モトは顔を上げた。
「そこそこ若いヤツがいいらしくてな。俺はこの通り膝を傷めちまってて無理なんだ。
でも、お前さんなら行けそうだ。どうだ。募集は1人。俺はこれと思った相手に声をかけるのを頼まれててな」
モトは考えるようにしながら、訊いた。
「何のバイトですか。もしかして、特殊詐欺の受け子とか」
「そういうんじゃないらしい。よくは知らないけどよ、何か、金持ち連中のアウトドアの手伝いらしい」
「へえ、アウトドアかあ。やります」
「そうかい。わかった。じゃあ、日時が決まったら知らせるからよ」
「はい」
モトは控えめな笑みを浮かべた。
話は1週間前にさかのぼる。
薬師が持って来たのは、狩りの話だった。それもただの狩りではない。人間を獲物とした狩りだ。
矢傷や銃創を負った遺体が何体も発見されたのは、偶然だった。不法投棄の調査で赴いた山でそういう遺体が遺棄されているのを発見し、あまりにも衝撃が大きい事を考慮し、発表を控え、捜査が始められた。
そして浮かび上がったのが、この河川敷で暮らすホームレスだった。ここにいたのが急に姿を消し、遺体となって見つかったのだ。
しかし姿を消す前に、親しい間柄のホームレスに、
「秘密だけど、割のいいバイトを紹介されたんだ。1回に1人の募集らしいから、次はお前がやるといいぜ。言っちゃだめなんだけどな、これ。
だから、ハッキリとは言わない。いいか。ヤブさんには嫌われるな。いいな」
そう言っていたらしい。
そこで、探りを入れるために河川敷に潜入する事になったのだが、誰が行くかが問題だ。
が、
「オレは無理だね」
といの一番にリクが抜けた。
確かに、引きこもりのリクにできるとは誰も思わない。
だが、高校生のセレにできるとも、させていいとも思えなかった。
「わかった。俺がやる」
こうしてモトが、その役に立候補したのだった。
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