踏んだり蹴ったり殴ったり

JUN

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女友達

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 世間でイケメンと呼ばれる色々なタイプの男がそこにいた。流石はお見合いパーティーだ。
 しかし私は、彼らを無視して、テーブルに並んだ食べ物、飲み物を楽しむ事にした。
「あら、璃々」
「夏子じゃない」
 夏子もいたので、2人で焼酎を飲みながら、さきいかとだし巻き卵と焼き豚と枝豆を食べる。
「パーティーの割に、食べ物がちょっと庶民的ね」
「どうせ皆はこっちには興味ないからでしょ」
 言いながら、パクパクと食べる。
 そんな私達に、司会者が声をかけた。
「好みのタイプはいませんでしたか」
「残念ながら。わたし、イケメンは嫌なんです」
「ほう」
「もう結婚はこりごりです。良い声を聞くだけで十分です。
 ああ、こんな声」
 どこからか読経の声がする。
 思わずうっとりとしてしまう。
 と、誰かが肩を叩いたので、振り返った。
「永世君、素敵でしょう?」
 永世君に飛びついて来たあの女だった。

 目を覚ますと、天井が見えた。そして今日も読経の声がする。
「ああ。夢……」
 おかしいと思った。さきいか、だし巻き卵、焼き豚、枝豆は、昨日DVDを見ながら食べたものだ。流石にあれがパーティーで出て来たら驚く。
 話題の映画は、イケメンと呼ばれる色んなタイプが出て来るだけで内容的には大した事が無かった。
「買って損したわ」
 憮然として言い、私は立ち上がった。

 いつものように、うろを確認し、日誌に異常無しと書き込むと、本日の業務は終了だ。
 畑に水でもまこうかと外に出ると、寺の前に昨日の女性がおり、掃除をしていた。
 目が合ったので、軽く会釈しておく。
 すると彼女は笑みを浮かべて走り寄って来た。
「おはようございますぅ」
「え、はい、おはようございます」
 勢いに気圧されて、2歩後ずさってしまった。
「私、坂上 奏っていいますカナデって呼んでくださいね。永世とはバンドで一緒だったんですよ。お姉さんは、永世君の彼女さん?」
「へ?ち、違います。この通り、隣の者です」
「それだけですかぁ?」
「あ、あの、坂上さん」
「カナデ」
「か、カナデさん」
「カ・ナ・デ」
「……」
 これが永世君の好みのタイプなのか。確かにかわいい。それに、こう、女らしい。
「永世君、カッコいいでしょう?昔からもてたんですよ」
「へえ」
「ギターテクも抜群で、デビューを前にして抜けちゃったのが本当に惜しかったわ。あれでバンドも解散することになって」
「ふうん」
「ほかの人と組んでも、永世以上に合う人が見付からなかったの。運命だったのね」
「そうですかぁ」
 と、カナデの頭が激しく叩かれた。
「痛てっ」
「永世君。おはようございます」
 憮然とした表情で立っていたのは、永世君だった。
「おはようございます」
「いきなり頭を叩くのはどうかと。仮にも元彼女でしょう」
 それに、永世君とガバリと顔を上げたカナデは、こぼれんばかりに目を見開いた。
「これが!?」
「彼女!?」
 カナデは喜び、永世は肩を落とす。
「こいつの本名は坂上奏太。男です」
「は?こんな美人なのに?」
「ありがとう、お姉さん!」
 カナデは喜んで万歳していた。
 聞くと、カナデはバンドを解散した後、別のメンバーと組んだがダメで、バンド活動をやめる事にしたらしい。その時にバイトとしてゲイバーに勤め、出会ったのが今の彼氏だという。
 が、彼氏はお堅い会社のサラリーマンで、見合いを勧められている最中らしく、それでカナデは家を出て来たそうだ。
 バンドがビジュアル系で、メイクも女装も忌避感がなく、ゲイバーも単にバイトとして勤めていただけなのに、気付けば彼に本気になっていたと、カナデは乙女の顔で言った。
「そうなんですか」
 3人で、支所の玄関前に並んで座って話し込んでいた。
「写真見る?」
 答えも待たず、スマホの写真を見せる。
「イケメン……」
 敵だ。
「カッコいいでしょ」
「カナデ。イケメンは敵です」
「へ?」
「カナデ」
 永世君が、カナデに小声で言って、首を小さく横に振る。
「わからないけど、そうなのね」
「そうです」
 カナデは泣きそうな顔で笑うと、私の頭を撫でた。
「璃々ちゃんも、傷付いたのね。イケメンに傷つけられたのね」
「カナデ」
「大丈夫。そいつが悪かっただけよ。璃々ちゃんはまた元気になって、幸せになっていいのよ」
「カ、カナデも、幸せになって」
 なぜか抱き合って、私とカナデは泣き出してしまった。そして永世君は、溜め息をついた。




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