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大雨の前に
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翌朝の読経は、それなりに元気で、頭に突き刺さった。
軽く二日酔い気味だ。永世君は何ともないのか?負けた気がする。
そして今日も、うろを確認し、お墓に回ったところで、空を見上げる永世君と住職に会った。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます」
「おはようございます」
「どうしたんですか?」
UFOでも出たのかと、空を見た。どんよりと重い雲が広がっている。
「天気予報で、大雨が近いようですよ。周囲を見回っておかないと」
住職が言って、はたと気付いた。
「ああ。雨漏りとか大丈夫ですか?それと、裏が崩れたら大変だ。もし危なくなったら、いつでもうちに来てくださいよ」
「はい。ありがとうございます」
「永世、裏をちょっと見ておいてあげなさい」
そう言って、会釈をして庫裏に入って行ったので、私と永世君は、頂上付近まで確認に行った。
「地盤が緩んでる様子はないかな。それと、木が倒れるとかも」
「これが倒れたら、うちは完全に潰れそうだわ」
揃って、頂上に立つうろのある大木を見上げる。樹齢は相当だとしか言えないが、幹にできたうろが、大人1人くらいしゃがんで入れるくらいには大きいのだ。
「ここが、異界への扉候補だな」
「ああ。創業者の妹さんも、かくれんぼでここに隠れて消えたんだもんね」
2人で覗く。先程見たまま、何もない。
「俺達も子供の頃、よくここに入ったりして遊んだもんだな」
懐かしそうに言って、中に入る。
「異界への扉は、時々現れるのかしらね」
「どうだろうな」
笑って、外に出て歩き出す。
が、何かに呼ばれた気がして、振り返った。
「ああ!?」
うろを指さす。
永世君はビクッとして私を見た。
「何?何か出たのか?」
「うろに!あれ!」
「ああ?え!?」
永世君も固まった。
さっきまでは何もなかったうろの中に、忽然とそれが出現していたのだから。
それは、薄っぺらく小さな袋だった。白い袋で、表に青い鈴がテープでくっつけてある。
「何、あれ。
永世君?」
永世君は、目を大きく見開いて、小さく震えていた。
「だ、大丈夫!私が取って来るから!」
まさか爆発もしないだろう。
そう思って足を踏み出しかけた私の肩を、永世君が掴んで言った。
「俺が行く」
強がらなくても。そう思ったが、次の言葉にこちらが固まった。
「あれ、兄貴からの届かなかったプレゼントだ。最後にメールで、写真が来たんだ。誕生日にいい物をやるって。山で無くしたらしくて見付からなかったんだけど、間違いない」
ゴクリと唾を飲んだ。
そして永世君は、その袋に手を伸ばした。
ちりん、と、音がした。
そして永世君は震える手で袋を開け、中を覗き込んで泣き出した。
軽く二日酔い気味だ。永世君は何ともないのか?負けた気がする。
そして今日も、うろを確認し、お墓に回ったところで、空を見上げる永世君と住職に会った。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます」
「おはようございます」
「どうしたんですか?」
UFOでも出たのかと、空を見た。どんよりと重い雲が広がっている。
「天気予報で、大雨が近いようですよ。周囲を見回っておかないと」
住職が言って、はたと気付いた。
「ああ。雨漏りとか大丈夫ですか?それと、裏が崩れたら大変だ。もし危なくなったら、いつでもうちに来てくださいよ」
「はい。ありがとうございます」
「永世、裏をちょっと見ておいてあげなさい」
そう言って、会釈をして庫裏に入って行ったので、私と永世君は、頂上付近まで確認に行った。
「地盤が緩んでる様子はないかな。それと、木が倒れるとかも」
「これが倒れたら、うちは完全に潰れそうだわ」
揃って、頂上に立つうろのある大木を見上げる。樹齢は相当だとしか言えないが、幹にできたうろが、大人1人くらいしゃがんで入れるくらいには大きいのだ。
「ここが、異界への扉候補だな」
「ああ。創業者の妹さんも、かくれんぼでここに隠れて消えたんだもんね」
2人で覗く。先程見たまま、何もない。
「俺達も子供の頃、よくここに入ったりして遊んだもんだな」
懐かしそうに言って、中に入る。
「異界への扉は、時々現れるのかしらね」
「どうだろうな」
笑って、外に出て歩き出す。
が、何かに呼ばれた気がして、振り返った。
「ああ!?」
うろを指さす。
永世君はビクッとして私を見た。
「何?何か出たのか?」
「うろに!あれ!」
「ああ?え!?」
永世君も固まった。
さっきまでは何もなかったうろの中に、忽然とそれが出現していたのだから。
それは、薄っぺらく小さな袋だった。白い袋で、表に青い鈴がテープでくっつけてある。
「何、あれ。
永世君?」
永世君は、目を大きく見開いて、小さく震えていた。
「だ、大丈夫!私が取って来るから!」
まさか爆発もしないだろう。
そう思って足を踏み出しかけた私の肩を、永世君が掴んで言った。
「俺が行く」
強がらなくても。そう思ったが、次の言葉にこちらが固まった。
「あれ、兄貴からの届かなかったプレゼントだ。最後にメールで、写真が来たんだ。誕生日にいい物をやるって。山で無くしたらしくて見付からなかったんだけど、間違いない」
ゴクリと唾を飲んだ。
そして永世君は、その袋に手を伸ばした。
ちりん、と、音がした。
そして永世君は震える手で袋を開け、中を覗き込んで泣き出した。
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