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青少年のための管弦楽入門(1)何か違う
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翌朝、3人は朝食をとると、ギルドの場所を訊いてみた。
「こんな小さい町にはありませんよ。この先の街なら、冒険者ギルドも商業ギルドも医療ギルドも、3つ共ありますよ」
つまりギルドとは、この3つしかないということか、と平静を装いながら考えた。
「教会は」
「旅の神と大地の神を祀った簡易的なものがあるだけで、教会も、その街になりますね。
お客さん、外国からの巡礼者さんですか」
「え、うん、まあ」
3人は曖昧に頷いた。
「そうですかあ。どうぞお気を付けて、良い旅を」
疑いの欠片も無い笑顔を向けられ、心苦しく思いながら、出発する。
一応人通りのない所で、収納庫から「車」を出す。流石に宿の部屋で確認ができなかったので、これは今、初めて出す事になる。
戦車が出て来た夢を見たので、理生は気が気じゃなかったが、出て来たのはミニキャンピングカーだった。
「まあ、宿に泊まらなくても困らないから、これはこれでいいかも」
貴音はまずまず気に入ったらしい。
「まあ、流石は旅の神なのかな。よく知ってたなあ、こんなの」
ミハイルは首をひねっている。
そして理生は、
「大きい。後方確認しにくそう。それにオートマじゃないのか」
と、運転席に座って確認を始める。
簡易キッチンもあるし、水のタンクも満タンだ。冷暖房までついている地球バージョンとでもいうものなので、ヘタに宿に泊まるよりも、こちらが快適な可能性もある。
「さあ、行こうか」
意気揚々とアクセルを踏み、エンストした。
次の街ダネンに着くと、車はしまい、早速ギルドとやらに向かう。朝に聞いた3択だと、演奏会を開きつつ資金を稼ぎながら旅をする、まさしく演奏旅行なので、商業が近いのかという印象だった。
しかし、ケガをしない、即回復するというのは、音楽家からすれば色々できるまたとないチャンスだ。子供の頃から、ケガをしてはいけないからと、球技や武術、跳び箱などのスポーツはご法度。料理もさせないという家もある。何かと禁止、禁止で育って来ているものなのだ。まるで、夢のような話だ。
理生も貴音も、敢えてミハイルの冒険者押しに異を唱えず、登録する気満々である。
まあ、勿論、各地で演奏ができるように、商業ギルドとダブルでとろうかとか考えているが。
「ここか」
気負い込んで、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
カウンターで、愛想よくお姉さんとお兄さんが声を上げた。
時間的なものか、あまり客もいなかったので、待ち時間なしで登録できそうだ。
「今日はどのようなご用件でしょうか」
理生は、「ポテトもいかがでしょうか」と言われたような気がした。
「登録をしたいのですが」
「はい、3名様ですね。ではこちらに必要事項をご記入ください」
何を訊かれるかとドキドキして用紙を見れば、氏名、年齢、性別だけだ。拍子抜けする思いで記入し、犯罪歴の有無を訊かれ、新人冒険者の講習会に出席すればカードがもらえると言われた。
「それだけですか?」
「それだけですよ」
手続きを済ませ、講習会の準備のプリントを渡され、外に出たら、3人共、嘆息した。
「拍子抜けだよ」
ミハイルが肩を竦める。
「先輩が絡んで来たりがお約束なのに」
「いや、そんな約束はいらないからね、ミハイル」
「ははは。心配症だね、ミチオは」
「まあ、色々面倒臭い事を言われるよりは良かったよ。
でも、つくづく、身元証明としてどうかと疑問だね」
「講習会は実技だろ。問題はむしろこっちかも」
「あはは。大丈夫、何とかなるよ、ミチオ」
その調子で商業ギルドでも登録をした。こちらは、講習はないが、売り上げの2割を会員料として支払うのだとか、収入の偽装をしたら罰則が高くつくとか、覆面調査員が目を光らせているとか、そういう説明を聞いた。
外に出て、ミハイルは溜め息をついた。何か、思ってたのと違う、と。
「こんな小さい町にはありませんよ。この先の街なら、冒険者ギルドも商業ギルドも医療ギルドも、3つ共ありますよ」
つまりギルドとは、この3つしかないということか、と平静を装いながら考えた。
「教会は」
「旅の神と大地の神を祀った簡易的なものがあるだけで、教会も、その街になりますね。
お客さん、外国からの巡礼者さんですか」
「え、うん、まあ」
3人は曖昧に頷いた。
「そうですかあ。どうぞお気を付けて、良い旅を」
疑いの欠片も無い笑顔を向けられ、心苦しく思いながら、出発する。
一応人通りのない所で、収納庫から「車」を出す。流石に宿の部屋で確認ができなかったので、これは今、初めて出す事になる。
戦車が出て来た夢を見たので、理生は気が気じゃなかったが、出て来たのはミニキャンピングカーだった。
「まあ、宿に泊まらなくても困らないから、これはこれでいいかも」
貴音はまずまず気に入ったらしい。
「まあ、流石は旅の神なのかな。よく知ってたなあ、こんなの」
ミハイルは首をひねっている。
そして理生は、
「大きい。後方確認しにくそう。それにオートマじゃないのか」
と、運転席に座って確認を始める。
簡易キッチンもあるし、水のタンクも満タンだ。冷暖房までついている地球バージョンとでもいうものなので、ヘタに宿に泊まるよりも、こちらが快適な可能性もある。
「さあ、行こうか」
意気揚々とアクセルを踏み、エンストした。
次の街ダネンに着くと、車はしまい、早速ギルドとやらに向かう。朝に聞いた3択だと、演奏会を開きつつ資金を稼ぎながら旅をする、まさしく演奏旅行なので、商業が近いのかという印象だった。
しかし、ケガをしない、即回復するというのは、音楽家からすれば色々できるまたとないチャンスだ。子供の頃から、ケガをしてはいけないからと、球技や武術、跳び箱などのスポーツはご法度。料理もさせないという家もある。何かと禁止、禁止で育って来ているものなのだ。まるで、夢のような話だ。
理生も貴音も、敢えてミハイルの冒険者押しに異を唱えず、登録する気満々である。
まあ、勿論、各地で演奏ができるように、商業ギルドとダブルでとろうかとか考えているが。
「ここか」
気負い込んで、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
カウンターで、愛想よくお姉さんとお兄さんが声を上げた。
時間的なものか、あまり客もいなかったので、待ち時間なしで登録できそうだ。
「今日はどのようなご用件でしょうか」
理生は、「ポテトもいかがでしょうか」と言われたような気がした。
「登録をしたいのですが」
「はい、3名様ですね。ではこちらに必要事項をご記入ください」
何を訊かれるかとドキドキして用紙を見れば、氏名、年齢、性別だけだ。拍子抜けする思いで記入し、犯罪歴の有無を訊かれ、新人冒険者の講習会に出席すればカードがもらえると言われた。
「それだけですか?」
「それだけですよ」
手続きを済ませ、講習会の準備のプリントを渡され、外に出たら、3人共、嘆息した。
「拍子抜けだよ」
ミハイルが肩を竦める。
「先輩が絡んで来たりがお約束なのに」
「いや、そんな約束はいらないからね、ミハイル」
「ははは。心配症だね、ミチオは」
「まあ、色々面倒臭い事を言われるよりは良かったよ。
でも、つくづく、身元証明としてどうかと疑問だね」
「講習会は実技だろ。問題はむしろこっちかも」
「あはは。大丈夫、何とかなるよ、ミチオ」
その調子で商業ギルドでも登録をした。こちらは、講習はないが、売り上げの2割を会員料として支払うのだとか、収入の偽装をしたら罰則が高くつくとか、覆面調査員が目を光らせているとか、そういう説明を聞いた。
外に出て、ミハイルは溜め息をついた。何か、思ってたのと違う、と。
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