13 / 33
シェヘラザード(1)夜の海上リサイタル
しおりを挟む
真夜中の海上を、静かに船が進む。新月で暗く、却って、満天の星が良く見える。
星座に詳しい人間がいたら、目の前の星空と日本から見える星空を比較して楽しんでいただろうが、生憎、北斗七星を発見するのが関の山、という人間ばかりだった。
その船を取り囲むようにして、青白い炎がぽおと生じる。海上に現れる、船幽霊だ。一見幻想的だが、船に取り付き、転覆させたり座礁させたりして、乗っている人間を殺す幽霊だ。
甲板にいたその冒険者グループは、それを見て、各々準備をした。
収納庫からピアノを引っ張り出して椅子に座るのは、理生。同じく取り出したバイオリンを構え、弓をそっと当てるのは貴音。同様に槍を引きずり出して構えるのはミハイル。腰の2本のナイフを両手で構えるのはトビー。
共通しているのは、4人共、首から小石のペンダントを下げている事だった。
貴音と理生が視線を交わし、そっと、メロディーを紡ぎ出す。バッハのレクイエム。音が、船を中心に海上に広がって行く。その音が到達したところから、フッとかき消されるように幽霊が消えて行く。
それを乗り越えて甲板に辿り着いたものは、ミハイルとトビーが排除する。
貴音の友人怜が短い時間で作った、霊を浄化する、言わば日本人制作による魔道具だ。そういう意思を持って演奏する、または攻撃すると、このように霊が浄化されるのだ。
こちらでは地球にはない何か気配が大気中にあるので、このような、お札のような働きをするものが一般人にも使えるらしい。
これのおかげで、彼らは「アンデッド専門のチーム」として、安全、確実に、依頼をこなして依頼料を得る事が出来ていた。
全部を討伐するのに、たいして時間はかからない。最後の余韻が夜の海上に消えて行き、アンデッドに聴かせるには勿体ないリサイタルが終了した。
「はああ。流石はバッハ。効くなあ」
「大バッハもだけど、むしろ、御崎君に感謝だよ。この石、日本で使えないのかな」
「無理じゃないかな。こっちならではだろうから」
貴音、理生、ミハイルが各々楽器や槍をしまいながら言うのに、トビーは憮然として言う。
「お前らのところでは魔法は無いのに、何で魔道具は作れるんだ?しかも、ぶっつけの短時間だろ?そいつ、何者なんだ?」
訊かれて、貴音が即答した。
「ザックリ言うと、半分人間辞めて、半分神になったやつ」
「・・・よくわからないけど、そいつが普通ってわけじゃないんだな」
トビーは石をしげしげと眺めながら、完全に理解する事は諦めた。
「ありがとうございます。いやあ、鮮やかなものですなあ」
船長が甲板に現れた。
「はあ、どうも」
理生が、日本人的に答える。
「これで、この海峡の幽霊からの安全は確保されました。後は海賊ですな。こちらは、領主に頼んではいるのですが。いやはや。
ああ、どうぞ中で、お食事でも」
勧められて、4人はありがたく、船長に連れられて食堂へ場所を移した。
プチディナーコースという感じの食事をとり、船室でゴロゴロする。
「なあ、トビー。海賊ってさっき言ってたけど」
少しワクワクしながら、ミハイルが言った。
「船を襲って金品を強奪する、あの海賊?大丈夫なのか?」
「お前らの世界では、海賊っていないのか?」
「聞いた事はあるけどな、ニュースで。石油タンカーとかを狙ってきて身代金を要求したり、レアメタルを取られたり、だったっけ」
「あんまり知らないなあ。今どき海賊なんていたのかって驚いただけで」
「アニメみたいな海賊はもういないもんね」
「ふうん。まあ、ここでも、そうそう頻繁に遭遇するわけでもないから、そう心配することもないよ」
トビーの言葉に安心する3人だったが、これがフラグというものなのか。4人はまさか、海賊退治をするはめになろうとは、思ってもみなかったのである。
星座に詳しい人間がいたら、目の前の星空と日本から見える星空を比較して楽しんでいただろうが、生憎、北斗七星を発見するのが関の山、という人間ばかりだった。
その船を取り囲むようにして、青白い炎がぽおと生じる。海上に現れる、船幽霊だ。一見幻想的だが、船に取り付き、転覆させたり座礁させたりして、乗っている人間を殺す幽霊だ。
甲板にいたその冒険者グループは、それを見て、各々準備をした。
収納庫からピアノを引っ張り出して椅子に座るのは、理生。同じく取り出したバイオリンを構え、弓をそっと当てるのは貴音。同様に槍を引きずり出して構えるのはミハイル。腰の2本のナイフを両手で構えるのはトビー。
共通しているのは、4人共、首から小石のペンダントを下げている事だった。
貴音と理生が視線を交わし、そっと、メロディーを紡ぎ出す。バッハのレクイエム。音が、船を中心に海上に広がって行く。その音が到達したところから、フッとかき消されるように幽霊が消えて行く。
それを乗り越えて甲板に辿り着いたものは、ミハイルとトビーが排除する。
貴音の友人怜が短い時間で作った、霊を浄化する、言わば日本人制作による魔道具だ。そういう意思を持って演奏する、または攻撃すると、このように霊が浄化されるのだ。
こちらでは地球にはない何か気配が大気中にあるので、このような、お札のような働きをするものが一般人にも使えるらしい。
これのおかげで、彼らは「アンデッド専門のチーム」として、安全、確実に、依頼をこなして依頼料を得る事が出来ていた。
全部を討伐するのに、たいして時間はかからない。最後の余韻が夜の海上に消えて行き、アンデッドに聴かせるには勿体ないリサイタルが終了した。
「はああ。流石はバッハ。効くなあ」
「大バッハもだけど、むしろ、御崎君に感謝だよ。この石、日本で使えないのかな」
「無理じゃないかな。こっちならではだろうから」
貴音、理生、ミハイルが各々楽器や槍をしまいながら言うのに、トビーは憮然として言う。
「お前らのところでは魔法は無いのに、何で魔道具は作れるんだ?しかも、ぶっつけの短時間だろ?そいつ、何者なんだ?」
訊かれて、貴音が即答した。
「ザックリ言うと、半分人間辞めて、半分神になったやつ」
「・・・よくわからないけど、そいつが普通ってわけじゃないんだな」
トビーは石をしげしげと眺めながら、完全に理解する事は諦めた。
「ありがとうございます。いやあ、鮮やかなものですなあ」
船長が甲板に現れた。
「はあ、どうも」
理生が、日本人的に答える。
「これで、この海峡の幽霊からの安全は確保されました。後は海賊ですな。こちらは、領主に頼んではいるのですが。いやはや。
ああ、どうぞ中で、お食事でも」
勧められて、4人はありがたく、船長に連れられて食堂へ場所を移した。
プチディナーコースという感じの食事をとり、船室でゴロゴロする。
「なあ、トビー。海賊ってさっき言ってたけど」
少しワクワクしながら、ミハイルが言った。
「船を襲って金品を強奪する、あの海賊?大丈夫なのか?」
「お前らの世界では、海賊っていないのか?」
「聞いた事はあるけどな、ニュースで。石油タンカーとかを狙ってきて身代金を要求したり、レアメタルを取られたり、だったっけ」
「あんまり知らないなあ。今どき海賊なんていたのかって驚いただけで」
「アニメみたいな海賊はもういないもんね」
「ふうん。まあ、ここでも、そうそう頻繁に遭遇するわけでもないから、そう心配することもないよ」
トビーの言葉に安心する3人だったが、これがフラグというものなのか。4人はまさか、海賊退治をするはめになろうとは、思ってもみなかったのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる