柳内警備保障秘書課別室

JUN

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オシリスの呼び声(2)オシリスとの再会

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 緩やかな揺れと振動の中、目が醒めた。4畳くらいの部屋の真ん中で、ビニールの結束バンドで後ろ手に拘束され、椅子に座らされていた。
「やあ。おはよう、カナリア」
 オシリスが、目の前に置いた椅子に座って、にこやかに湊を眺めていた。
「麻酔銃で撃ってまで、何だよ」
「迎えに来たんだぜ?また一緒に旅をしようじゃないか」
「断るって言っただろ」
 うんざりとした。
 オシリスは困ったように顔をしかめ、肩を竦める。
「聞いてくれよぉ。商売敵がいやがって、邪魔してくるんだよぉ。おまけに警察も来るしさあ?困ってるんだよ。助けてくれよぉ」
「断る。俺の居場所はここじゃない」
 オシリスは溜め息をついて、笑顔を引っ込めた。
「悪い子にはお仕置きだ」
 そして、立ち上がると、ドアに向かった。
「5分後には、この部屋に仕掛けた発火装置が作動して、火の海になる。5分以内にごめんなさいって言えよ」
 そして、室内には湊1人が残された。
 うかうかしていられない。湊は拘束された両手首を左右に引っ張りながら、思い切り背中に打ち付けた。それで結束バンドは切れ、両手が自由になる。
 次に立ち上がり、ドアへ行きかけるが、立ち止まる。
 それは、危険だ。
 室内を見回し、脱出口を探す。
「ここか」
 椅子を隅に寄せて乗り、天井の換気ダクトに入り込むと、そのまま進む。そして、次の換気口を開けると、下に降りた。
 廊下らしいのはわかるが、それ以外はわからない。
 だが、換気口の下から離れる。
 と、ボンと音がして、数秒置いてから、換気口から炎が吹き出した。
「どこが5分だ」
 湊は不機嫌そうに言って、辺りを見た。
 監禁されていたらしい部屋のドアノブには針金が巻きつけられ、それはドアの前に置かれたバッテリーにつながっている。ドアノブに触れば、感電するところだ。
「仲間にする気があるのか」
 そこは船のようだった。廃棄予定のフェリーか何かか。
 取り敢えず出口を探そうと、湊は移動を始めた。

 錦織は、電話口に向かって怒っていた。
「監視をしておいて、このざまですか。言い訳は必要ありません。ええ、私はあなたの上司ではありませんから」
 かつての部下だった現公安部長西條は、唸るように言った。
『麻酔銃で撃った後、車の前にトラックを突っ込んできて塞いだんです。追えなかった』
「は!
 で、どうなんです。GPSも仕掛けているんでしょう?私にとぼけても無駄です」
『う……ええ。途中で捨てられたようですが、Nシステムや防犯カメラから、廃棄予定のフェリーに乗せられたらしい事がわかっています。今、向かわせている所です』
「篠杜 湊の保護を」
『先輩。オシリスを捕まえる千載一遇のチャンスなんですよ』
「ええ。そう言うと思いました。
 なので、こちらはこちらでやります。邪魔はしませんので」
 言うだけ言うと、電話を叩き切った。
「室長。申し訳ありません」
 雅美が頭を下げる。
「雅美さんのせいじゃありませんとも」
 それに、涼真も悠花も同意した。
「そうですよ」
「湊君を迎えに行きましょう!」
「ええ、そうね」
 雅美は小さく、闘志に燃える微笑みを浮かべた。



 
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