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噂
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2階から降りると、ロビーにいた探索者達の目がチラリチラリと向けられ、ヒソヒソと、あるいは堂々と噂話がなされる。
「殲滅アリをたった3人で200匹以上討伐して来たらしい」
「ピクニック依頼だろ?何でだ?」
「たまたま、別のやつらが襲われている所に行き合わせたんだと」
「凄えな。やっぱり、ドラゴンの卵を盗み出そうとしただけあるな」
「それだけど、違うって言ってたぞ。それに皇都から帝国魔術団副団長が来てて、あの件はまだ調査中だとか言ってたし」
そんな会話がそこかしこでなされた。
その中を、ユーリ達は椅子に座って買取の計算ができるのを待っていた。
「噂で持ち切りだねえ」
「俺達がしたんじゃないって噂も広まってくれればいいのになぁ」
ユーリがぼやくと、カイが嘆息した。
「そう上手くはいかねえのが問題だよな」
言っていると名前を呼ばれ、買取の内容を示されて、それで了承して代金を受け取る。
そして悠々とドアへ向かうユーリ達のそばに、そのグループが立った。トニーだ。
「おい、殲滅アリを大量に駆除したって本当か」
子供の頃は一緒に遊んだ仲だが、戻って来てから、どうにも刺々しい。
「ああ、そうだけど」
「おかしいだろ。合同でどうにかってもんじゃないのか?」
猜疑の目を向けるのに、ユーリ達は事も無げに答えた。
「そうか?」
皇都の探索者協会には、高等学校の生徒が多く所属している。なので、魔術師の数も多いし、落ちこぼればかりというわけでもない。そんな皇都では、殲滅アリの対処方法と言えばこれだったので、手際や魔力の高さで人数は変われど、そう苦労する依頼でもなかったのだ。
そこに、お互いがお互いを知らない事情があった。
トニーはムッとしたように口を結び、そして、ニヤリと笑った。
「流石は銀花楼のユーリ。もしかして、殲滅アリは全部メスだったのか?いや、男好きのオスって事もあるか」
数人がニヤニヤと嗤いを浮かべ、カイとジンがいきり立った。
ユーリはカイとジンを制し、ドアを開けると、外のポツンと立っている木に杖を向けて氷の魔術を放った。その途端、離れていても冷気を感じるくらいに木がガチガチに凍り付いた。
「これを撃って行ったんだけどな。威力、自分で受けて試してみたいか?
ああ。因みにこれは、絶対零度」
ロビー中がシーンとして、トニーは青い顔でプルプルと首を振った。
「そう?じゃあな」
ユーリ達はそう言って協会を出た。
「腹立つやつだなあ」
カイが口を尖らせるのに、ユーリは、
「ま、仕方ないよ。ははは」
と笑う。
「余裕だな、ユーリ」
カイはそう言って苦笑したが、ジンが、
「そうでもないみたいだよ」
と言うので振り返ると、ユーリは空に向かって腹立ちまぎれに風の刃を連発しまくっていた。
それから、メンテナンスしておこうかと武器屋へ行った。
カリムから紹介状を持たされて行って以来、自分で設計した魔銃剣の制作からメンテナンス、色々なアドバイスなど、世話になっている店だ。皇都にあったが、ユーリ達がセレムに移ったすぐ後から、ここに移転して来たのだ。
ニキータ・セエトというこの道では有名な職人で、薬師をしている妻のミリア共々、ユーリに良くして、可愛がってくれる。
その縁で、カイとジンも、この店で武器を調達していた。
「こんにちは」
声をかけると、カウンターの向こうにいたニキータが顔を上げた。
「ああ。いらっしゃい」
「メンテナンスをお願いしたいんだけど。殲滅アリをかなり捌いたから」
言って、3人共武器類を出す。
「殲滅アリか。ケガはなさそうだな。
ああ。刃の欠けもないし、研ぎ直しで済むな。待ってろ。すぐにしてやる」
ニキータは店の奥の工房で、刃を研ぎだした。
「いらっしゃい。クッキーがあるから、お茶にしましょう」
にこにことして、ミリアがお茶を持って来た。
「あ、いただきます!」
ユーリ達は椅子に座って、お茶を飲み出した。
「どう?お友達はできた?」
「聞いてよ。カウンターの職員なんだけど」
ユーリ達はワイワイと色んな事をミリア相手に喋り、それをミリアはにこにこと聞く。やがて作業を終えたニキータも合流して、なんだかんだと喋るのがいつものパターンだ。
ここへ来ると、ユーリはどこかホッとする気がした。
ユーリ達が仕上がった武器を手に帰って行くのを、ニキータとミリアは見送った。
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、ドラゴンの卵の件、犯人扱いされてるみたいよ。治療院に来た探索者から聞いたわ」
「貴族も王族も、碌でもないな、この国は」
ニキータとミリアは憤慨したように言って、
「大丈夫かしら」
と小さくなっていく背中を見送った。
「殲滅アリをたった3人で200匹以上討伐して来たらしい」
「ピクニック依頼だろ?何でだ?」
「たまたま、別のやつらが襲われている所に行き合わせたんだと」
「凄えな。やっぱり、ドラゴンの卵を盗み出そうとしただけあるな」
「それだけど、違うって言ってたぞ。それに皇都から帝国魔術団副団長が来てて、あの件はまだ調査中だとか言ってたし」
そんな会話がそこかしこでなされた。
その中を、ユーリ達は椅子に座って買取の計算ができるのを待っていた。
「噂で持ち切りだねえ」
「俺達がしたんじゃないって噂も広まってくれればいいのになぁ」
ユーリがぼやくと、カイが嘆息した。
「そう上手くはいかねえのが問題だよな」
言っていると名前を呼ばれ、買取の内容を示されて、それで了承して代金を受け取る。
そして悠々とドアへ向かうユーリ達のそばに、そのグループが立った。トニーだ。
「おい、殲滅アリを大量に駆除したって本当か」
子供の頃は一緒に遊んだ仲だが、戻って来てから、どうにも刺々しい。
「ああ、そうだけど」
「おかしいだろ。合同でどうにかってもんじゃないのか?」
猜疑の目を向けるのに、ユーリ達は事も無げに答えた。
「そうか?」
皇都の探索者協会には、高等学校の生徒が多く所属している。なので、魔術師の数も多いし、落ちこぼればかりというわけでもない。そんな皇都では、殲滅アリの対処方法と言えばこれだったので、手際や魔力の高さで人数は変われど、そう苦労する依頼でもなかったのだ。
そこに、お互いがお互いを知らない事情があった。
トニーはムッとしたように口を結び、そして、ニヤリと笑った。
「流石は銀花楼のユーリ。もしかして、殲滅アリは全部メスだったのか?いや、男好きのオスって事もあるか」
数人がニヤニヤと嗤いを浮かべ、カイとジンがいきり立った。
ユーリはカイとジンを制し、ドアを開けると、外のポツンと立っている木に杖を向けて氷の魔術を放った。その途端、離れていても冷気を感じるくらいに木がガチガチに凍り付いた。
「これを撃って行ったんだけどな。威力、自分で受けて試してみたいか?
ああ。因みにこれは、絶対零度」
ロビー中がシーンとして、トニーは青い顔でプルプルと首を振った。
「そう?じゃあな」
ユーリ達はそう言って協会を出た。
「腹立つやつだなあ」
カイが口を尖らせるのに、ユーリは、
「ま、仕方ないよ。ははは」
と笑う。
「余裕だな、ユーリ」
カイはそう言って苦笑したが、ジンが、
「そうでもないみたいだよ」
と言うので振り返ると、ユーリは空に向かって腹立ちまぎれに風の刃を連発しまくっていた。
それから、メンテナンスしておこうかと武器屋へ行った。
カリムから紹介状を持たされて行って以来、自分で設計した魔銃剣の制作からメンテナンス、色々なアドバイスなど、世話になっている店だ。皇都にあったが、ユーリ達がセレムに移ったすぐ後から、ここに移転して来たのだ。
ニキータ・セエトというこの道では有名な職人で、薬師をしている妻のミリア共々、ユーリに良くして、可愛がってくれる。
その縁で、カイとジンも、この店で武器を調達していた。
「こんにちは」
声をかけると、カウンターの向こうにいたニキータが顔を上げた。
「ああ。いらっしゃい」
「メンテナンスをお願いしたいんだけど。殲滅アリをかなり捌いたから」
言って、3人共武器類を出す。
「殲滅アリか。ケガはなさそうだな。
ああ。刃の欠けもないし、研ぎ直しで済むな。待ってろ。すぐにしてやる」
ニキータは店の奥の工房で、刃を研ぎだした。
「いらっしゃい。クッキーがあるから、お茶にしましょう」
にこにことして、ミリアがお茶を持って来た。
「あ、いただきます!」
ユーリ達は椅子に座って、お茶を飲み出した。
「どう?お友達はできた?」
「聞いてよ。カウンターの職員なんだけど」
ユーリ達はワイワイと色んな事をミリア相手に喋り、それをミリアはにこにこと聞く。やがて作業を終えたニキータも合流して、なんだかんだと喋るのがいつものパターンだ。
ここへ来ると、ユーリはどこかホッとする気がした。
ユーリ達が仕上がった武器を手に帰って行くのを、ニキータとミリアは見送った。
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、ドラゴンの卵の件、犯人扱いされてるみたいよ。治療院に来た探索者から聞いたわ」
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「大丈夫かしら」
と小さくなっていく背中を見送った。
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