銀の花と銀の月

JUN

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邪神アトラ

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「どわあっ!」
 ガアグが無造作に剣を振るい、大木がバタバタと倒れかかって来た。
「あっぶねえな!」
 カイが避けて言うが、ガアグは視線をユーリから外さない。
「ふうん。俺に恨みがあるのか?邪神アトラかガアグ殿下か、どっちです?」
 ユーリは盾で、ガアグの放った風を上空に逃して訊いた。
「フン。アトラであってオレでもある。アトラの考え方とオレの考え方は似ているのでな。共闘することにしたまでだ」
 言いながら、側に来た魔物の頭を鷲掴みにして魔力を吸い殺す。
 ドクン、と、頭にかぶった頭蓋骨のかぶとが脈打ったように見えた。
「カイ、ジン、引くぞ。ここでこれ以上チャージさせるのもな」
 小声でそう言うと、カイもジンも小さく頷き、一斉に走り出す。
「逃げるかあ!!」
 ガアグは鬼のような形相で追って来た。
 魔の森をジグザグに走り、外におびき出す。
 そこで魔術団に囲まれ、ガアグはおびき出された事にやっと気付いた。
「単細胞だな」
 ユーリは思わず呟いた。
「殿下!?そのお姿は!?」
 副官がギョッとして声を張り上げた。
「祠を破ったらしい。アトラの考えと同調して、共闘するとか言ってたぜ」
 カイがガアグから目を離さずにそう言うと、副官はその場で膝をつきそうになった。
「立て!一応狙いは俺らしいけど、かすっても死ぬぞ」
 ユーリの言葉に、周囲がギョッとする。
「団長、取り敢えず半数を防御に集中させてくれませんか」
「わかった」
 すぐに団長が指示を飛ばし、魔術士は2人ずつくっつく。
「ガアグ殿下。一応聴いておきたいんですがね。あなたの目的はなんです?あなたはこれから何をしたいんです」
 ガアグは仁王立ちになり、胸を張った。
「近隣諸国に攻め入り、併合し、大陸をトゥヤルザ帝国にする!」
「それは陛下の考えとは違うようですけど?」
「弱腰になるなど、トゥヤルザ帝国の皇帝ではない!」
 緊張が走る。
「では、帝位簒奪でも?」
「お考えを正していただけないなら、オレが皇帝になるまで!邪魔はさせん!」
「殿下!!」
 副官が、卒倒しそうな顔で叫ぶ。
「聞いた通りだ。ガアグ殿下は逆臣となった。遠慮すると死ぬから、そのつもりで」
 ユーリは背後の魔術師、兵にそう言うと、魔銃剣の引き金を引いた。
 ガアグの眼前で竜巻ほどの炎が弾かれる。
 直後にカイが斬りかかったが、刃を腕で受け、無傷で振り払った。
「何だぁ!?」
「硬化か?」
 ユーリはカイに向けて魔術を4つほど撃った。硬化と筋力増強と魔術無効と速度アップ。要はドーピングのようなものだ。
「うおっしゃあ!!」
 カイは蹴とばされたように飛び出した。
 ジンは矢をいつでも放てるようにしながら、待つ。
「ええい、邪魔をするな!!オレがあ!皇太子にい!なるのだあ!!」
 ガアグはカイの攻めをどうにか受け、凌いでいる。
 硬い腕で庇えると思ったが、今度は浅いながらも傷が付いて行く。
 が、ガアグも武人だ。すぐにカイと打ち合い始めた。
「カイ!」
 ユーリの合図でカイが離れ、同時にガアグの足元にジンの矢が射込まれる。それらには油の入ったビンが付いており、下半身と足元をべったりと濡らした。
 そこに間髪入れず、ユーリが炎を撃ち込む。
 巨大な火柱が上がった。
「うおおおおお!!」
 ガアグが声を上げるが、一瞬後、ユーリが声を上げる。
「盾!!」
 魔術団員らが盾を展開し、そこにガアグが弾き飛ばした炎が突き刺さって行く。
 それを確認せず、ユーリとカイはガアグに肉薄して行く。
 カイとユーリが互いの攻撃のタイミングを利用して隙を窺い、攻撃する。
 だが、深く入った傷も、かぶとが光ると治ってしまう。
「きりがねえな」
「魔物を吸い殺してチャージした魔力が尽きるまで待てないな」
 カイが斬り飛ばされたのを機に、一旦離れる。
 その前に魔術団員が出て、半数は盾の準備をし、半数は魔術を叩き込む。
 そしてユーリは素早くカイに治癒を撃ち、ガアグに向かって構える。
「効いてないよ」
 ジンが言う通り、魔術に対して盾を展開できるようだ。
 ガアグは物理に特化していると聞いていたので、それはアトラの力なのだろう。
「ん?」
 しかしよく見ると、合間に治ってしまったが、一射目はわずかに傷を付けたようだ。
「あの盾は、いつも展開してるわけじゃないのか」
 団長がいつの間にか隣に来ていた。
「力押しで、魔力の枯渇を狙うしかないか」
「たぶん、森へ逃げて、魔物からチャージして来ますよ」
 ジンが言う。
「どうするよ、ユーリ。ユーリ?」
 ユーリはぶつぶつと、新しい魔式を考えて唱えていた。


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