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本当の終結
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頼まれて馬車をバッグに収納し、書いて来た地図を元に地上へ出る。
魔素酔いの者も深刻な症状の者はおらず、死んだ者もなく、日程の遅れといくらかの商品がダメになったほかには被害も無かった事に、誰もがほっと安堵の息をついた。
馬車を出し、荷物を出してそこに積み直し、出立の準備を始める彼らは、逞しいの一言に尽きた。
「無事で良かったぜ」
「カイ達が来た時、てっきり幻かと思ったわ」
エマとカイはそう言って向かい合い、無事を喜びあっていた。
「ああ、いいなあ。私も恋人が欲しい」
ユンが羨ましそうに言い、ライラはほかの探索者を獲物を探す目付きで眺めた。それを見ていたユーリとジンは、
「高等学校で見た目付きだな」
「怖いよぉ」
とこそこそと言い合った。
その時背後で大きな砂煙が立ち上り、皆慌てたが、気配がすっかり消え失せ、迷宮が消失したものだと理解した。
「この迷宮は、アトラ神が核になってたものだったのか」
「言わばラスボスを倒したようなものなんだね。だから迷宮が消えたんだよね」
ユーリが風に流れる砂を見て言い、ジンは結界布でがんじがらめにされているアトラの胴を見た。
リーダーは悲しそうに、呟いた。
「誰も制覇してないし、まだまだお宝もあっただろうに……」
ジンは返された手書きの地図を思い出し、
「地図でひと稼ぎし損ねたね」
と苦笑した。
礼は戻ってから落ち着いてという事で、調査に来ていた国の役人や協会から依頼されて来た探索者に説明し、商隊と護衛団は出立して行った。
そして銀月も、
「こんなものをいつまでも持っていたくない」
と、皇都の教会を目指して出発した。
こうして、誕生してから消滅までの期間が最短の記録を作った迷宮は消えた。
アトラ神のパーツは改めて封印し直され、アトラ原理主義者への調査が約束され、トゥヤルザ、ウヨタリ、ナカシャ、メメンサ、ケイロスの関係も密になったりした。
ラトロヌは、情報を出さなかった事と協力しなかった事、さらに、魔物が溢れて来た時の対応を非難され、隙あらば他国に攻め込もうとしていた態度は軟化した。
いつまでかはわからないが、周囲の国が連携を強めた今は、無茶はできないだろう。
そしてトゥヤルザの国民達は、正式にユーリも皇太子候補になるのかどうか、なったらリアンとどちらが皇太子になりそうかと、噂に忙しい。
ユーリの元に集まるキセルも、数を増やしている。
「そういう事か?」
ユーリは溜め息をついて、並んだキセルを眺めた。
そうしていると、声がかかる。
「お時間です」
ユーリは抽斗を閉めて、サロンに向かうべく部屋を出た。
魔素酔いの者も深刻な症状の者はおらず、死んだ者もなく、日程の遅れといくらかの商品がダメになったほかには被害も無かった事に、誰もがほっと安堵の息をついた。
馬車を出し、荷物を出してそこに積み直し、出立の準備を始める彼らは、逞しいの一言に尽きた。
「無事で良かったぜ」
「カイ達が来た時、てっきり幻かと思ったわ」
エマとカイはそう言って向かい合い、無事を喜びあっていた。
「ああ、いいなあ。私も恋人が欲しい」
ユンが羨ましそうに言い、ライラはほかの探索者を獲物を探す目付きで眺めた。それを見ていたユーリとジンは、
「高等学校で見た目付きだな」
「怖いよぉ」
とこそこそと言い合った。
その時背後で大きな砂煙が立ち上り、皆慌てたが、気配がすっかり消え失せ、迷宮が消失したものだと理解した。
「この迷宮は、アトラ神が核になってたものだったのか」
「言わばラスボスを倒したようなものなんだね。だから迷宮が消えたんだよね」
ユーリが風に流れる砂を見て言い、ジンは結界布でがんじがらめにされているアトラの胴を見た。
リーダーは悲しそうに、呟いた。
「誰も制覇してないし、まだまだお宝もあっただろうに……」
ジンは返された手書きの地図を思い出し、
「地図でひと稼ぎし損ねたね」
と苦笑した。
礼は戻ってから落ち着いてという事で、調査に来ていた国の役人や協会から依頼されて来た探索者に説明し、商隊と護衛団は出立して行った。
そして銀月も、
「こんなものをいつまでも持っていたくない」
と、皇都の教会を目指して出発した。
こうして、誕生してから消滅までの期間が最短の記録を作った迷宮は消えた。
アトラ神のパーツは改めて封印し直され、アトラ原理主義者への調査が約束され、トゥヤルザ、ウヨタリ、ナカシャ、メメンサ、ケイロスの関係も密になったりした。
ラトロヌは、情報を出さなかった事と協力しなかった事、さらに、魔物が溢れて来た時の対応を非難され、隙あらば他国に攻め込もうとしていた態度は軟化した。
いつまでかはわからないが、周囲の国が連携を強めた今は、無茶はできないだろう。
そしてトゥヤルザの国民達は、正式にユーリも皇太子候補になるのかどうか、なったらリアンとどちらが皇太子になりそうかと、噂に忙しい。
ユーリの元に集まるキセルも、数を増やしている。
「そういう事か?」
ユーリは溜め息をついて、並んだキセルを眺めた。
そうしていると、声がかかる。
「お時間です」
ユーリは抽斗を閉めて、サロンに向かうべく部屋を出た。
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