魔王の懐胎 

動く山菜

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第一章 心優しき聖女

02

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 馬車に揺られること約一時間。テオは千歳とリックが住んでいるケイル村に立ち寄った。ケイル村は人口50人程の小さな村。店などはなく、月に一度訪れる移動販売所の存在に頼り切っていると千歳は教えてくれた。

 「あ、そういえば。自己紹介してなかったわね」

 何をいまさら‥と呆れるリック。千歳はコホンとわざとらしく咳払いをし

 「私の名前は千歳 深雪【せんざい みゆき】。よろしくね。えーと‥」

 「テオ。テオ・エルピス」

 「テオくんね。あ、そんでこっちがケイル村の雇い騎士。リック・エルゼン君です」

 「あ、おい!。まあよろしくな坊主‥」

 コクリと頷き早々に会話を切り上げるテオ。千歳はテオの名前を知れて嬉しそうだが、リックは透かした態度が気に入らないようだ。

 「あいた!!」

 目の前で千歳が転けた─が立ち上がらない。テオは黙って見ているがリックは急いで千歳に駆け寄る。頬は赤く染まり、気管から「ヒューヒュー」と嫌な音が聞こえる。

 「ああ‥!!ほら言わんこっちゃない!!。坊主!!突っ立てないで運ぶの手伝え」

 「面倒だ。"ここで治す"」

 「はぁ?お前なにいって‥」

 テオは何もない空間から黒いハンドガンを出現させ千歳に銃口を向ける。リックが静止に入ろうとするが、テオはそれよりも素早くトリガーを引き千歳の胸に弾丸を放った。

 「千歳!!てめぇ!!」

 テオの胸元を掴み睨み付ける。テオは「聞こえなかったのか?」と落ち着いた声でリックを煽る。顔に青筋をたてたリックがそのままテオを殴ろうとした時──

 「う‥うぅん?あれ」

 「千歳?!おま、え?」

 「言っただろ。治すって」

 千歳とリックは一度首を傾げてからテオに視線を向ける。テオはため息つきそのまま歩きだす。私何されたんだろう?と疑問に思う千歳。対してリックは状況が飲み込めておらず硬直しているが

 「て、待って。待ってよ~テオくーん」

 「‥‥ん。あ、コラ。待ちやがれガキンチョ!!」 

 テオがいつの間にか移動した事に気づいた二人は、テオの後を追うのだった。

 ◇

 「つまり、テオ君は私を撃った‥‥て事?」

 「そうなんだよ!!いきなりバン!!だせ?!バン!!」

 テオに追いついた二人はテオを挟むように並び、歩幅を合わせる。大人二人に挟まれているテオの顔は無表情だ。

 「ねぇ。テオ君?君てスキル主体?それとも魔法?」

 「‥‥‥」

 「何かいえよ。」

 「‥‥‥‥」

 少年はうんともすんとも言わない。それに対しリックは青筋を作るが千歳は彼女なりにテオの戦闘スタイルを考えている。リックは立ち止まりテオのフードを掴む。

 「あのな。そういうお年頃なのかしらねぇけど、誰かが話してくれたら返事くらいしろ。」

 「なぜ」

 「はぁ?!「なぜ」じゃねーよ!!。失礼だろうが」

 「まあ、まあ。落ち着きなってリック」

 「質問に答えればいいのか?」

 「そうじゃねぇよ!!」

 腹わたが煮え繰り返りそうになっているリックを千歳は必死に止める。「違うのか。」そう言ってまた一人で奥に進んでいく。

 「んだよ!!あのクソガキは」

 「落ち着きなって。」

 リックを落ち着かせながらテオに視界を向け。まだ、リックには話せない、あの子の正体を。千歳は馬車で彼を治療した時気づいていたテオが────"人"ではない事に。人の形をした魔獣はいる。けれどそのどれにもテオは該当しない。それどころかあの少年からは女神の力を感じ取れない。あったのは闇。まるでこちらを覗いているかのような不快感を感じる闇だ。
 
 千歳に何かが伝えている。彼の正体を暴いてはならない。彼の生まれた場所を聞いてとはならない。彼の"存在意義"を疑わせてはならない。これら全てが地雷だと。

 『ごめんね‥リック。辛いだろうけどもう少し耐えて。ちゃんと話すから』

 千歳はリックに目で訴えかける。長年共に過ごした幼馴染だった二人だからだろうか。千歳の目を見ただけでリックは理解した。あの子供には何かあると。それをテオに悟らせないように自然に怒りを収める"演技をする"。

 「‥クソが!!」

 そう言って地面を蹴り軽く小さな土煙を上げた。千歳は「うわぁぁ?!リックちょ、ゴホゴホ」と咳き込む。がリックはしっかりと見ていた。

道の先にいるテオ─────二人を見つめている。二つの赤い瞳からは感情を読み取る事は出来ない。

 『クソが‥やばい奴を村に引き入れちまったな。』

 ゴクリとリックは生唾を飲み込んだ。
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