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第二部
13 始まりは突然に
ルーカスは今朝方城へ向かったラーティを屋敷で待つ間、別の人間の相手をしていた。
「やはり元花嫁候補筆頭がいる場所に行かせるのは嫌か?」
ラーティより二回りほど年は上だが、それを抜かせば瓜二つの容姿を持つ金髪碧眼の美丈夫──彼は城に向かったラーティと入れ替わるようにやって来た。
貴賓室のソファーに我が物顔で座りながらニヤリと笑うオルガノに、ルーカスは「いいえ」と返事して、控えていた使用人達を下がらせる。
使用人の役目を引き継ぎ、ルーカス自らが入れたお茶をオルガノに差し出しテーブルの上に置く。彼は相変わらずの不遜な態度でお茶を一瞥するも、素直に手に取った。
元主が飲んだのを確認してからルーカスはオルガノの向かいに座り、口を開く。
「ウルスラ様は大変な思いをされてきたのです。今は色恋に構っている場合ではないでしょう」
「私は色恋の話など一言も出していないが」
「失礼致しました。早とちりでしたね」
取り成して収める。ルーカスは必要以上に深追いしない。下手に構うと、この人はいつも面倒事を起こすのだ。
「そんなことを言って、色恋には状況など関係ないぞ。寧ろ危険な状況ほど燃え上がると言う。国を追われ、助けを必要としている姫君に同情しない男などいないとは思わないか?」
「……オルガノ。からかいたいなら他を当たって下さい」
「少しは嫉妬しろ、そういった感情も出して見せろ。息子が寂しがる」
「今回は随分と息子思いな発言をなさる」
「ふん、違うな。私はお前思いの発言をしているのだよ」
「それで、城に向かった息子を放ってくるほどのお話とは、どのようなことでしょうか」
確か早起きは苦手ではありませんでしたか。と問うと「今日はやけに堅苦しいな」とオルガノが不機嫌を出したので、ルーカスは仕方なしに口調を戻す。
「一国の国王が何用で来たのか、聞いてもいいだろうか?」
「ようやく普通になったな」
「貴方は物好きだな。気にかける相手を間違えている」
ルーカスは溜息を吐く。こちらが距離を開けようとしても、オルガノにはすぐさま気付かれてしまう。
「私が話をしたかったのは、今城にいる客人のことだ」
オルガノの言う客人とはウルスラのことだ。
「私は客人の後継を引き受けた。それに際し、お前の意見を聞きたい」
「私の意見ですか?」
オルガノはウルスラをラーティの正妻にしたいという話をしに来たのだろうか……
けれど次にその端整な口から出てきた内容は、憶測していたものとは全く別のものだった。
「勇者と魔王の呪いが解けた今、紋章は力を与え、戦況を変える道具となった。今後は紋章による争いが起こる時代となる」
代々勇者を輩出してきたラスクールは、古来より特別視され優遇されてきた。しかしそれも勇者の力があってこそだ。国は徐々に弱体化していくだろう。
「今回我が国がエストラザの王女を擁護したように、これから後は他国との協力が一層必要になる。その戦略にお前達家族が巻き込まれることもあり得るということだ」
そういうことか。
オルガノは言葉通りルーカスに意見を聞きたいのではない。わざわざ息子が留守の間を狙って、旧友を訪ねる振りまでしながら忠告しに来たのだ。お前は関わるなと。
どこまでも従者思いな方だ。だから私は……
「そうですね……オルガノ、頼みがあります」
「何だ改まって」
「もし私が囮を引き受けたとして、もしものときは後のことを頼みます」
*
オルガノは最初、何かの冗談かと思った。これは暇を持て余した貴族の戯れ言の一環だと。──が、ルーカスは本気だった。
見慣れたはずの黒い瞳がオルガノを見据える。当人は自覚していないようだが、強い意思を宿した瞳は美しく人を惹き付ける。
「さて、私は巻き込まれんよう目立たず下がっていろと、お前に忠告しにきたはずが。とんでもない発言を聞かされたものだな」
「オルガノ……」
飲んでいたカップの取っ手ごと握り潰しかねないオルガノの様相に、消え入りそうな声を出しながら、けれどルーカスは慣れたものだ。一瞬不味そうな顔をしたものの、それを押し隠し、この状態のオルガノを相手にわずかに目を細める。その程度の反応ですむのだから。
せっかく手折られることのないように昔逃がしてやった蝶が、自らのこのこ戻ってきた。それも──
「お前は息子無しでは生きられぬも同然の体となり、子まで成したというのに。今度は囮になると申し出てくるのか」
「ラーティ様はこの国にとって価値ある人間だ」
「何だと? ではお前は何だと言うのだ」
「私は……」
答えられずにいるルーカスに、オルガノは更なる苛立ちと怒りを覚えた。
お前はこれが息子に向けられた怒りであったなら、内心酷く慌てるものを……
元勇者パーティーの仲間ですら、こうなるとオルガノの怒りを制御できないと恐れて近寄りたがらなかった。ルーカスだけだオルガノの怒りを心の底から恐れないのは。
ルーカスはオルガノがけして自分を傷付けないと知っている。
惚れた弱味を無自覚についてくる元恋人に、オルガノは不愉快だと顔を背ける。それでも収まらない苛立ちに、興が削がれたと舌打ちする。
「オルガノ、私は……」
「そのように愚かなことばかり口にするのなら、今度こそ私の子を孕ませるぞ」
「っ!」
黙らせるためとはいえ、半ば本気の入り交じったオルガノの宣言に、ルーカスはようやく顔を翳らせる。
ルーカスの信念は諸刃の剣だ。忠誠を誓う彼は誰よりも強い。関係が守られている間ならば、ルーカスの信念を曲げられる者などいないだろう。
しかし忠誠を主自らに切り捨てられたなら……それに比例して反応する。ラーティのときのようにあっさりと命を絶つほどに脆く弱い。
「先程のとんでもない発言を息子が聞いたらどうなるか見物だな」
若返ったことと引き換えに、ルーカスはすっかり戦士の力を失った。
オルガノは以前、ルーカスを腕に抱き上げたときの感覚を思い出す。軽すぎる体。細腰を腕に、女を抱くような頼りない感触に酷く驚き、動揺を押し殺した。
自身が守られるべき対象となったことに未だ認識の疎いルーカスを、王の権威をもって力尽くでものにすることもできる。
ラーティは勇者の力を失った。それに託つけてオルガノこそが現在に残る真の勇者だと主張すればいい。それ以外にもルーカスを手に入れる方法ならばいくらでもある。けれどオルガノがルーカスの信頼を違えることはない。
絶対の信頼の上に、ルーカスとの関係があることは、オルガノ自身が一番よく分かっている。
「口止めに、奉仕してもらっても構わないぞ?」
からかうように言うが、やはりルーカスはどんな苦境にあっても、オルガノを拒絶したり媚びる素振りすら見せない。だから余計に惜しくなるのだ。
「私がラーティ様に話していないとお思いか」
「お前は言わんだろう。けして口にはしないはずだ。するのは全てを終わらせてから語るか、生涯口を閉ざすかする」
「…………」
*
怒りを収めたオルガノの全てを見透かす発言に、依然としてルーカスの旗色は悪い。
「お前の行動原理など聞かなくても手に取るように分かる。そうして抱え込むのはよくないぞ。ああ、そういえば、息子のナディルはどうした?」
会わせろと言われ、テーブルに置かれた呼び鈴を手に取り鳴らす。部屋の扉の後ろに控えていた使用人が、すぐさま入室した。ナディルを連れてくるよう頼む。
「あの子は大丈夫です。クーペが一緒にお話ししてくれているので」
「お話し? 産まれてまだ三月も経っていないだろう。いくら成長が早いと言っても……」
「あの子はラーティ様が出ていかれてすぐに、二歳児の姿まで成長した」
オルガノにはもちろん予言の妖精のことも全てを話してある。
その予知夢の見た目とおそらくは一致した。
あの様子だと何かが起こるとしたら、あと少しと言ったところかと述べる。オルガノはもちろん咎めたが、それは予測できていたことだ。
「それはまずいだろう。お前は何を呑気なことを言っている」
「予言の妖精の言葉は絶対です。違えることはない。それにフォルケはまだ見つかっていないと聞きました。彼は私の前に必ず姿を現すでしょう」
「ルーカス、お前は奴が来るのを待っているのか?」
言葉を失うオルガノなど、そうそう見られない。ルーカスはクスリと忍び笑う。
「予言の妖精の言葉は絶対だ。違えることはない。たとえ貴方でも止めることはできない」
「だから抗うこともせず待つと言うのか。お前はそれを私と息子が許すと本気で思っているのか?」
重々しいオルガノの問い掛けを、ルーカスは手元のお茶を口に含むことでやり過ごす。
「ルーカス!」
強く名を呼ばれ、ルーカスは淡々と答える。
「ウルスラ様に呼ばれてラーティ様が城に向かったのも、このタイミングで貴方が現れたのも全ては変えられぬ事柄なのでしょう。私は……」
言いかけて、オルガノに「待て」と止められた。
「息子が王女に呼ばれた? お前は何を言っている?」
「?」
「あの客人は使いなど出していない。いや、出すことなどできない」
「出すことなどできない? 確かに怪我の具合が思わしくないからと、療養中ということはオフィーリアス卿から聞いている。けれど使者を差し向けるくらい可能なのでは?」
貴方こそいったい何の話をしているのだとルーカスが言い切る前に、オルガノのからかいを含まない真剣な眼差しに、ルーカスはハッと口を噤む。
「ルーカス……王女はそのオフィーリアス卿に連れてこられたときよりずっと、眠り続けている」
「しかしラーティ様はウルスラ様からの使者だったと……」
「オフィーリアス卿が息子に話があると、使者の手配を願い出たことは知っているが……まさか」
──急ぎ城へ戻るぞ!
オルガノがマントを翻す、バサリとカーテンを勢いよく開けたときのような音が鳴った。
廊下に待機していた王の従者達が、謀を察した主に従い、連れ立って屋敷を出る。開門し、去っていく後ろ姿を、ルーカスは部屋の窓越しに静かに見守っていた。
そうだ。始まりはいつも突然にやってくる。
「やはり元花嫁候補筆頭がいる場所に行かせるのは嫌か?」
ラーティより二回りほど年は上だが、それを抜かせば瓜二つの容姿を持つ金髪碧眼の美丈夫──彼は城に向かったラーティと入れ替わるようにやって来た。
貴賓室のソファーに我が物顔で座りながらニヤリと笑うオルガノに、ルーカスは「いいえ」と返事して、控えていた使用人達を下がらせる。
使用人の役目を引き継ぎ、ルーカス自らが入れたお茶をオルガノに差し出しテーブルの上に置く。彼は相変わらずの不遜な態度でお茶を一瞥するも、素直に手に取った。
元主が飲んだのを確認してからルーカスはオルガノの向かいに座り、口を開く。
「ウルスラ様は大変な思いをされてきたのです。今は色恋に構っている場合ではないでしょう」
「私は色恋の話など一言も出していないが」
「失礼致しました。早とちりでしたね」
取り成して収める。ルーカスは必要以上に深追いしない。下手に構うと、この人はいつも面倒事を起こすのだ。
「そんなことを言って、色恋には状況など関係ないぞ。寧ろ危険な状況ほど燃え上がると言う。国を追われ、助けを必要としている姫君に同情しない男などいないとは思わないか?」
「……オルガノ。からかいたいなら他を当たって下さい」
「少しは嫉妬しろ、そういった感情も出して見せろ。息子が寂しがる」
「今回は随分と息子思いな発言をなさる」
「ふん、違うな。私はお前思いの発言をしているのだよ」
「それで、城に向かった息子を放ってくるほどのお話とは、どのようなことでしょうか」
確か早起きは苦手ではありませんでしたか。と問うと「今日はやけに堅苦しいな」とオルガノが不機嫌を出したので、ルーカスは仕方なしに口調を戻す。
「一国の国王が何用で来たのか、聞いてもいいだろうか?」
「ようやく普通になったな」
「貴方は物好きだな。気にかける相手を間違えている」
ルーカスは溜息を吐く。こちらが距離を開けようとしても、オルガノにはすぐさま気付かれてしまう。
「私が話をしたかったのは、今城にいる客人のことだ」
オルガノの言う客人とはウルスラのことだ。
「私は客人の後継を引き受けた。それに際し、お前の意見を聞きたい」
「私の意見ですか?」
オルガノはウルスラをラーティの正妻にしたいという話をしに来たのだろうか……
けれど次にその端整な口から出てきた内容は、憶測していたものとは全く別のものだった。
「勇者と魔王の呪いが解けた今、紋章は力を与え、戦況を変える道具となった。今後は紋章による争いが起こる時代となる」
代々勇者を輩出してきたラスクールは、古来より特別視され優遇されてきた。しかしそれも勇者の力があってこそだ。国は徐々に弱体化していくだろう。
「今回我が国がエストラザの王女を擁護したように、これから後は他国との協力が一層必要になる。その戦略にお前達家族が巻き込まれることもあり得るということだ」
そういうことか。
オルガノは言葉通りルーカスに意見を聞きたいのではない。わざわざ息子が留守の間を狙って、旧友を訪ねる振りまでしながら忠告しに来たのだ。お前は関わるなと。
どこまでも従者思いな方だ。だから私は……
「そうですね……オルガノ、頼みがあります」
「何だ改まって」
「もし私が囮を引き受けたとして、もしものときは後のことを頼みます」
*
オルガノは最初、何かの冗談かと思った。これは暇を持て余した貴族の戯れ言の一環だと。──が、ルーカスは本気だった。
見慣れたはずの黒い瞳がオルガノを見据える。当人は自覚していないようだが、強い意思を宿した瞳は美しく人を惹き付ける。
「さて、私は巻き込まれんよう目立たず下がっていろと、お前に忠告しにきたはずが。とんでもない発言を聞かされたものだな」
「オルガノ……」
飲んでいたカップの取っ手ごと握り潰しかねないオルガノの様相に、消え入りそうな声を出しながら、けれどルーカスは慣れたものだ。一瞬不味そうな顔をしたものの、それを押し隠し、この状態のオルガノを相手にわずかに目を細める。その程度の反応ですむのだから。
せっかく手折られることのないように昔逃がしてやった蝶が、自らのこのこ戻ってきた。それも──
「お前は息子無しでは生きられぬも同然の体となり、子まで成したというのに。今度は囮になると申し出てくるのか」
「ラーティ様はこの国にとって価値ある人間だ」
「何だと? ではお前は何だと言うのだ」
「私は……」
答えられずにいるルーカスに、オルガノは更なる苛立ちと怒りを覚えた。
お前はこれが息子に向けられた怒りであったなら、内心酷く慌てるものを……
元勇者パーティーの仲間ですら、こうなるとオルガノの怒りを制御できないと恐れて近寄りたがらなかった。ルーカスだけだオルガノの怒りを心の底から恐れないのは。
ルーカスはオルガノがけして自分を傷付けないと知っている。
惚れた弱味を無自覚についてくる元恋人に、オルガノは不愉快だと顔を背ける。それでも収まらない苛立ちに、興が削がれたと舌打ちする。
「オルガノ、私は……」
「そのように愚かなことばかり口にするのなら、今度こそ私の子を孕ませるぞ」
「っ!」
黙らせるためとはいえ、半ば本気の入り交じったオルガノの宣言に、ルーカスはようやく顔を翳らせる。
ルーカスの信念は諸刃の剣だ。忠誠を誓う彼は誰よりも強い。関係が守られている間ならば、ルーカスの信念を曲げられる者などいないだろう。
しかし忠誠を主自らに切り捨てられたなら……それに比例して反応する。ラーティのときのようにあっさりと命を絶つほどに脆く弱い。
「先程のとんでもない発言を息子が聞いたらどうなるか見物だな」
若返ったことと引き換えに、ルーカスはすっかり戦士の力を失った。
オルガノは以前、ルーカスを腕に抱き上げたときの感覚を思い出す。軽すぎる体。細腰を腕に、女を抱くような頼りない感触に酷く驚き、動揺を押し殺した。
自身が守られるべき対象となったことに未だ認識の疎いルーカスを、王の権威をもって力尽くでものにすることもできる。
ラーティは勇者の力を失った。それに託つけてオルガノこそが現在に残る真の勇者だと主張すればいい。それ以外にもルーカスを手に入れる方法ならばいくらでもある。けれどオルガノがルーカスの信頼を違えることはない。
絶対の信頼の上に、ルーカスとの関係があることは、オルガノ自身が一番よく分かっている。
「口止めに、奉仕してもらっても構わないぞ?」
からかうように言うが、やはりルーカスはどんな苦境にあっても、オルガノを拒絶したり媚びる素振りすら見せない。だから余計に惜しくなるのだ。
「私がラーティ様に話していないとお思いか」
「お前は言わんだろう。けして口にはしないはずだ。するのは全てを終わらせてから語るか、生涯口を閉ざすかする」
「…………」
*
怒りを収めたオルガノの全てを見透かす発言に、依然としてルーカスの旗色は悪い。
「お前の行動原理など聞かなくても手に取るように分かる。そうして抱え込むのはよくないぞ。ああ、そういえば、息子のナディルはどうした?」
会わせろと言われ、テーブルに置かれた呼び鈴を手に取り鳴らす。部屋の扉の後ろに控えていた使用人が、すぐさま入室した。ナディルを連れてくるよう頼む。
「あの子は大丈夫です。クーペが一緒にお話ししてくれているので」
「お話し? 産まれてまだ三月も経っていないだろう。いくら成長が早いと言っても……」
「あの子はラーティ様が出ていかれてすぐに、二歳児の姿まで成長した」
オルガノにはもちろん予言の妖精のことも全てを話してある。
その予知夢の見た目とおそらくは一致した。
あの様子だと何かが起こるとしたら、あと少しと言ったところかと述べる。オルガノはもちろん咎めたが、それは予測できていたことだ。
「それはまずいだろう。お前は何を呑気なことを言っている」
「予言の妖精の言葉は絶対です。違えることはない。それにフォルケはまだ見つかっていないと聞きました。彼は私の前に必ず姿を現すでしょう」
「ルーカス、お前は奴が来るのを待っているのか?」
言葉を失うオルガノなど、そうそう見られない。ルーカスはクスリと忍び笑う。
「予言の妖精の言葉は絶対だ。違えることはない。たとえ貴方でも止めることはできない」
「だから抗うこともせず待つと言うのか。お前はそれを私と息子が許すと本気で思っているのか?」
重々しいオルガノの問い掛けを、ルーカスは手元のお茶を口に含むことでやり過ごす。
「ルーカス!」
強く名を呼ばれ、ルーカスは淡々と答える。
「ウルスラ様に呼ばれてラーティ様が城に向かったのも、このタイミングで貴方が現れたのも全ては変えられぬ事柄なのでしょう。私は……」
言いかけて、オルガノに「待て」と止められた。
「息子が王女に呼ばれた? お前は何を言っている?」
「?」
「あの客人は使いなど出していない。いや、出すことなどできない」
「出すことなどできない? 確かに怪我の具合が思わしくないからと、療養中ということはオフィーリアス卿から聞いている。けれど使者を差し向けるくらい可能なのでは?」
貴方こそいったい何の話をしているのだとルーカスが言い切る前に、オルガノのからかいを含まない真剣な眼差しに、ルーカスはハッと口を噤む。
「ルーカス……王女はそのオフィーリアス卿に連れてこられたときよりずっと、眠り続けている」
「しかしラーティ様はウルスラ様からの使者だったと……」
「オフィーリアス卿が息子に話があると、使者の手配を願い出たことは知っているが……まさか」
──急ぎ城へ戻るぞ!
オルガノがマントを翻す、バサリとカーテンを勢いよく開けたときのような音が鳴った。
廊下に待機していた王の従者達が、謀を察した主に従い、連れ立って屋敷を出る。開門し、去っていく後ろ姿を、ルーカスは部屋の窓越しに静かに見守っていた。
そうだ。始まりはいつも突然にやってくる。
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