腐男子は神様に願望を叶えてもらいました

ミイ

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第3章

132. 世界は広い

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「こんにちは、フェンネル様。先程はこの子達がお世話になりました。」

と頭を下げられる。

僕はローブを取ると「いえ!僕が必要ないのに出しゃばっただけですから。」と言い返した。

顔を上げたシスターは僕の顔を見て目を見開くとまた何事もなかったかのように笑顔に戻った。

「いいえ、クミンから事情は聞きました。大金を支払われたとか…。それにあの者達を捕らえるとは本当ですか?」

「ええ、私、1人の力ではどうにもならないかもしれませんが騎士団の方々に協力して頂きます。」

そう言ったもののシスターの表情は曇ったままだ。

「実は…あの者達は今までも何度か騎士団の方達によって調査が行われてるらしいのです…しかし、どうやってか捕らえる為の証拠が見当たらないとかで逮捕が出来ないそうなんです。騎士団の方いわく何故かいつも調査に入るときには証拠が一切残っていないとか…。」

「それはおかしいですね…。騎士団の中に協力者がいる可能性がありますね…そうすると事前に騎士団に協力を仰ぐのは難しいか…。」

「フェンネル様、私達でお役に立てるかわかりませんが何かあればご協力いたしますので、遠慮なくお申し付け下さい。」

「ありがとうございます。シスター、そんなに畏まらないで下さい。そんなに畏まられると逆に緊張してしまいます。」

と笑ってしまった。

するとシスターもフフッと笑い「お気遣いありがとうございます。」と言ってくれた。

そのままシスターの勧めもあってこちらに1泊させてもらうことになった。この教会には孤児が今12人程いるらしく、成人を迎えると教会を出て行き、独り立ちをするそうだ。

僕は案内された部屋でローブを脱ぎホッと一息入れているところでコンコンッと扉をノックされた。

「クミンだけど。」とぶっきらぼうな声が聞こえる。

「どうぞ。」と言うと部屋に入ってくるなり「大丈夫か?」と心配された。

「何が?」

「だって…騎士団に協力してもらえねぇんだろ?だったらどうするんだよ?」

「ああ…そうだねぇ…騎士団でも色んな隊がいるから要請したら来てくれるとは思うんだけど僕、お忍びでコッチ来てるからなぁ…どうしよう…。ギルドで強い人に協力してもらおうかな?」

「…そうか。なんか事情があるんだな、じゃあ聞かないでおくが、安全なのはギルドで高位ランクの人に頼むことだが、それだけ値も張るぞ。さっき金貨2枚払っただろう?大丈夫なのか?」

クミンが心配そうにこちらを見る。

「正直、手持ちはあんまりないんだけど、いざと言うときは身に付けてるものでも売るよ。アクセサリーならとりあえずは肌身離さずだから大丈夫かなって思って持ってきたんだ。」

「…そうか。あんまり協力出来ないかもしれないけどなんかあったら言ってくれ。出来る限り協力する。」

「うん、ありがとう。それであの人達の住処を案内してもらってもいい?」

「ああ、その為に来たんだ。」

そう言って僕達はあの取り立て屋の住処へ脚を運んだ。




その住処は先程、クミン達が屋台を出していたところから歩いて5分程のところで、周りには殆ど何も無く大きな建物が1つ建っているだけだった。

「アイツらはこの辺一帯の土地を買い占めているらしい。それで自分達が買う土地が無くなったら俺たちが住んでいる土地まで買って、居住者から土地代を貰おうとしているっていう噂がある。」

「(うわ~クズだなぁ~。)そうなんだ…。」

「でも、さっきシスターが言ってたみたいに違法な取引をしている証拠がないんだ。俺たちはさっき標的になって実際金を盗られたわけだが、それを騎士団に言ったところでそれをされたという証拠がない。それに最近は農家の土地が標的になってるっていうのも聞いた。」

「それじゃあ土地を多く持ってる農家の人は大変だろうね…。」

「ああ…俺達がいる教会もいつ標的になってもおかしくないからな…。俺があそこで一番年上だからしっかりしなきゃいけないのに…。」

とクミンは悔しそうに顔を歪めた。

「(そっか…僕は神様にお願いしていいところの家に生まれてきたけど、裕福な暮らしをしている人もいればそうではない人もいるわけで…。僕、周りの人達が人並みに生活できる人ばかりだったから正直、それが普通だと思ってた…。せっかく神様に転生させてもらったのに全然いかしきれてない…もっと広い世界を見ないと。)
…クミンは凄いね。僕、目に見える範囲でしかこの世界のこと、わかってなかった。自分で無意識にそれでいいって思ってたのかも。
…不快にさせたらゴメンね、僕、貴族の出身だからあんまり苦労したことないんだ…だからこうやって1人で旅に出て色んな人の暮らしを見たりクミン達と出会えてよかったよ。もっと広い世界で色んなものを見たいと思ったし、出来る範囲で皆を助けてあげたいとも思った。僕はまだまだ子供だけど、今回のことは僕に任せて。どうにかやってみるから。」

僕はクミンに笑顔を向けた。
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