まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第十一章 まるでやらせな接待業

CASE83 パプカ・マグダウェル その1

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「ぜぇぜぇ…………な、なんとか撒いたか」

 恐るべきジュリアスからの逃走劇。普段ならば彼女から逃げ切ることなどまず不可能だが、今回は状況が少しばかり味方してくれたようだった。
 逃げ始めたちょうどその時、サイン会が始まるアナウンスが流れたのだ。
 俺を捕らえてサインを数枚ずつ確保するか、それともすぐに列に並んで確実に一枚確保するか。
 サインは一枚で十分だろうと言う正論を無視した葛藤を覚えたのか、途中で追いかけるのを止めたので、その隙に撒くことに成功したという訳だ。
 乱れた息を整えて、ようやく一息付けたといったところだ。

「────ここどこ?」

 落ち着いてあたりを見回してみてみれば、そこは先ほど居た場所よりもさらに複雑な路地。背の高い建物が密集し、陰になったその場所は治安の悪さを示しているようだった。

 これはまずい。

 ただでさえ俺は一般人以下のステータス。チンピラにでも絡まれたら即詰みだ。
 しかもここは魔の国。チンピラであろうとも相手は魔族であり、そのステータスはそこらの冒険者軽く凌駕していてもおかしくない。
 最悪ギャングなんかに捕まってしまえば、どこかに連れ去られてしまう可能性だってあるのだ。内臓とかを売られてしまうかもしれない。
 他国に対する偏見だと言われてしまえばその通りだが、ここは俺にとって初めての外国。警戒感を持つことは決して悪いことではないだろう。


「何してるんでちか、サトー?」
「おぎゃああああああああああああああっ!?」
「わああああああああああああああああっ!?」

 不意に話しかけられたことで、俺の口から心臓が飛び出した。
 先ほどまであたりを見渡しても人影はなかったはずなのに、なぜか唐突に出現した声と俺の服を引っ張る感触。
 その場から飛び上がり、路地の片隅に縮こまって命乞いをする。

「わ、私は食べてもおいしくありません! 不摂生が祟って内臓もあまりきれいじゃないんです! 奴隷として売り飛ばすなら体力仕事じゃなくて事務方の方がお力になれると思います!!」
「何でちかその自己PR。────もぉ、サトーが急に叫ぶから驚いちゃったじゃないでちか」
「こう見えて保護者はギルドのお偉いさんでしてリンシュに言えばそれなりの額の身代金が…………パプカ?」

 思いつく限りの命乞いを羅列していた俺は、ずいぶん低い位置から放たれた聞き覚えのある声と口調に気が付いた。
 それはダンジョンのトラップによって若返った我が村の冒険者、パプカ・マグダウェルその人であった。
 どこかで買ったのか、学生服のようなスタイルで俺を見上げる彼女の存在に気が付かなかったのは、その身長がとても低いからであったらしい。

「な、なんだお前か……」
「なだとは失礼な話でち。全く……こんなところで何してるんでちか?」
「ああ、実はジュリアスから逃げてホテルに向かってたんだけど、途中から道が分からなくなって……」
「ぷっぷー。いい歳して迷子でちか? 格好悪いでちねサトー」

 ほっとけよ。

「良いでしょう。ではお姉さんが哀れなサトーを導いてあげます。ちょうどわたちも散歩に飽きてきたところでちから、一緒に戻るとしましょう」
「その姿でお姉さん属性は無理があると思うぞ。ただでさえ小っちゃく…………なんか成長してる?」

 リアル幼女と化したパプカ。その姿は最初の頃は赤ん坊、そして数日のうちに幼稚園児と同程度までに成長を果たしていた。
 マオーの計らいで検査を受けた結果、時間が経てば自然に元に戻るとの事。成長スピードは早く、数日中にはもとに戻れるという話を聞いている。
 にしても、彼女の幼稚園児姿を見たのは先日のこと。だが今の姿は年齢にして7~8歳と言ったところだ。さすがに成長スピードが尋常ではない。

「ふふん、やはり気づきまちたか。あふれだす色気、これこそわたちの学生姿でち。ちょうど良い感じの学生服が売ってあったので、マオーさんから貰ったお金で買ったのでちよ」
「無駄遣い……という訳じゃないのか。俺らの服、ダンジョンでドロドロだったからな」
「サトーもギルドの制服を一度洗った方が良いでち。ちょっと臭いがひどいでちから」

 ルーンの魔法で軽くクリーニングしてもらっていたものの、さすがに完全に汚れは取れなかったらしい。
 しかし、そのような事実をズバリ言われてしまい、かつそれが幼女パプカの口から放たれたものとなるとショッキングである。「お父さん臭い!」と娘から言われた父親の気分になってしまう。

「後で新しい服を買うよ……」
「それが良いでち────で? 何かわたちに言うべきことは無いのでちか?」

 胸を張り、どうやら服装を強調しているらしいパプカは、思わず頭をなでてしまいたいほどあどけない笑顔を浮かべていた。
 言うべきこと? こんなところで普段の言動に対する説教を望んでいるわけでもあるまいし、何を言ってほしいのだろうか。抽象的な言葉ではなく、はっきり言ってもらいたいものだ。

「えっと……?」
「分からないのでちか? 今サトーの目の前に居るのは、リアルJKでちよ? 可愛いの一言があっても良いと思うでち」
「えっ!? その姿って女子高生だったのか!? 入学したての小学生かと思った!!」
「失敬極まりないでちよ!!」

 全く痛くないローキックを喰らったが、それよりも衝撃的なのはパプカの年齢である。
 俺の目には幼稚園を卒業して進学した程度の幼女しか映っていない。中学生ですら無理があるのに、一足飛びに女子高生とはさらに無理があるだろう。
 しかも悲しいかな、女子高生でその姿と言うことはもう成長の余地がほとんどないのだろう。ここから元のパプカの姿に成長しただけでも大きな前進と言えるのかもしれない。
 どうやら彼女は、母親であるヒュリアンのようなグラマラスボディになることはなさそうである。

「…………強く生きろ」
「なんでちょっと涙ぐんでるんでちか! えっ、わたち同情されてる!?」

 これからはもっとパプカにやさしく接してやろう。


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