199 / 230
第十二章 まるで終わらぬ年の暮れ
CASE95 パンデミック①
しおりを挟む季節は冬。
──と言う表現を使いすぎじゃないかと思う今日この頃。
だって冬に入ってからのイベントの濃度が高すぎるんだもの。
早めの忘年会から始まり、ダンジョンへの強制アタック。魔の国で胃液を切らし、村へ帰っての雪合戦。
これらが全て一か月以内に収まっているというのだから驚きである。
という訳でまだ季節は冬。
先日の雪合戦で、パプカが作り出した馬鹿デカ雪製ゴーレムの残骸の後片付けに手を取られて数日が経過。
当初の予定では雪合戦名目で雪を集めて処理……と言う運びになっていたのだが、ゴーレムの素材として集められた雪は異常な密度となっており、その固さは鋼鉄並み。
結局村総出で解体作業と後処理に走り回る羽目となった。これならば普通に除雪作業をやった方がよほど楽だっただろう。
だがまあそんな解体作業も終わり、俺とアヤセはしんと静まり返った村を歩いていた。
「…………静かだな」
「…………静かッスねぇ」
いや、実際は耳を澄ませてみれば声は聞こえる。だがその大半が「ゴホゴホッ」と言う咳き込む音であった。
────そう、何を隠そう俺たちの住むリール村…………原因不明のパンデミック到来である。
「原因不明って……どう考えても先日の雪合戦の後片付けが原因──」
「原因不明のパンデミック到来である!!」
「支部長さん、勢いで誤魔化そうとしてるッスよね」
ギルドの業務も終了した冬休みに、なぜ俺たち二人が村を歩き回っているかと言うと、この村で無事な人間が俺達二人だけだからである。
「支部長さんって結構丈夫ッスよね。自分はゴーストなんで病気にならないんスけど」
「健康だけが取り柄だからな──言ってて悲しくなるが」
ドクターの指示により、俺たち二人は薬を配給している最中である。今回のパンデミックは、感染力こそ強いものの普通の風邪と変わりないらしく、薬を飲んで大人しくしていれば治るとの事。
とはいえ歩き回れるほどの気力はないようなので、無事である俺とアヤセが一軒一軒見回って世話をしているという訳だ。
これは決して雪合戦が原因で罪悪感があるから世話を焼いているという訳ではない。
「いちいち言い訳しなくても良いッスよ──さて、村の皆さんは先ほどの家で最後ッスね。冒険者さんたちも大半は見回り完了ッス」
アヤセは名簿の紙をめくりながらそう俺に報告した。
「後残ってるのはパプカが住んでる女子寮とギルドの職員ってところか?」
「そうッスね。支部長さん、身内は最後に回すタイプッスか?」
「こういうところで身内を優先すると各方面からのバッシングがひどいんだよ……」
「世知辛いッスね」
ちなみにパプカの住む女子寮を後回しにした理由だが、パプカはともかくとして他の女性陣の部屋に男の俺が入り込むのが憚られたからである。
「よし、じゃあ早速家に帰ってルーンの看病をしよう」
「身内も身内じゃないッスか。さっきの発言はいずこへ……と言うか、ルーンさんの看病は今朝がたに済ませてるでしょ?」
「馬鹿野郎!! こうして話している間にも熱が上がってるかもしれないだろうが!! ルーンのしたたる汗を拭きとるのは俺の仕事なんだよ!!」
「本音駄々漏れッス」
という訳で俺たちは帰路に着く。
跳ねる足を不謹慎だと諫めつつ、フィクシィのいるリビングを通りルーンの私室の前へと到着。
ノックをし、返事を受けて扉を開く。そこにはベットの上に女の子ズ割をしながらパジャマのボタンに指をかけるルーンの姿があった。
「何をやってるんだルーン! 安静にしてなきゃだめだ!! 汗を拭くのは俺がやってやるから横になれ!! パジャマも俺が脱がせてやる!!」
「アンタが何やってんスか支部長さん」
「あ、いえ……汗は今拭き終わったところなので大丈夫ですよ?」
すなわち、ボタンに指をかけていたのは外す行為ではなく、留める行為であるらしい。
俺の膝は床へと落下。両こぶしを床に叩きつけ、大粒の涙を落としながら嗚咽を漏らした。
「──ルーンが……無事で……良かった……っ!」
「言動が一致してないッス」
ひとまずルーンの無事を確認した俺は、飲み水を補充したり追加の薬を飲ませたりと、一通りの看病をこなす。
朝に比べても熱は下がっておらず、横になってなお辛そうなルーンを見ていると心が痛む。
「悪いなルーン。本当ならずっと付き添ってやりたいんだが……」
「気にしないでください。私こそお手伝いできずにすみません」
「病人なんスから仕方ないッスよ。と言うかむしろ、病気で全滅してる村の中でピンピンしてる支部長さんが異常なだけッスから」
「健康なだけが取り柄だか……あ、コレさっきやったな」
と、いつまでも談笑していたいがルーンは病人。俺も残る病人たちの見回りをしなければならないため、このぐらいにしておこう。
最後に額の濡れタオルを交換して、俺とアヤセは名残惜しくもルーンの私室を後にする。
「じゃあなルーン。また後で来るから、大人しくしてろよ?」
「はい、ありがとうございますサトーさん」
「本当にキチンと大人しくしてるんだぞ? 無理に自分の汗を拭かなくて良いからな? 次来た時に俺が拭いてやるからそのままにしておくんだぞ?」
「…………サトーさん、それが目的じゃないですよね?」
良し! 念も押したし、次へ行こう次っ!!
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる