まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第十二章 まるで終わらぬ年の暮れ

CASE96 誕生会④

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 リュカン・ヴォルフ・パーパルディア。と言うのはソウルネームで、本名はリュカン・ヴォルフ・スズキ。
 獣人に転生した召喚者たちによって立ち上げられた西部の街ヴォルフ。召喚者たちの子孫であるその街の獣人たちは、ほぼ例外なくオタクである。
 そしてリュカンという青年も例にもれず、リール村においてはエクスカリバー、メテオラとまとめて『オタクトリオ』と呼ばれているとかいないとか。
 そんな彼がギルドへと入って来る。
 俺は魔の国からリール村へと戻ってきて以来、そう言えば彼の姿を見ていなかったことに気が付いた。

「おや、リュカンじゃないですか。しばらく見ていませんでしたが、どこか出かけてたんですか?」
「うむ。所用があってヴォルフまで赴いていたのだ。お前たち、息災で何よりだぞ」
「ヴォルフ……と言うと、やはり趣味関係か? その……エクスカリバーは……」
「同士カリバーも一緒だったのだが、彼は「みぽりんのライブが終わってから帰るでござる」と言って街に残してきた」
「……ほっ」

 ジュリアスはどんだけエクスカリバーに会いたくないのだろうか。

「それはそうとサトーの生誕祭の話だ! 急すぎる話ゆえ驚いたぞ!」
「俺たちも聞いたのさっきだからなぁ」
「とはいえ間に合ったようで良かった。そしてある意味ナイスタイミングだ! 聞くが良い者どもよ! サトーへ下賜する我が宝物は我が手にあり!」

 リュカンからの誕生日プレゼント。普通に考えればオタクグッズであろう。
 ライトノベルなどを嗜む俺は、リュカンともそういった話をすることがある。
 ならば、小説や漫画の単行本。それらの関連グッズなどがプレゼントの候補として挙がるだろう。
 ヴォルフの街から帰って来たばかりと言うのであればなおさらである。

「我が手にあり……って、見たところ手ぶらのようですが……」
「違いますよルーン。これは例えの話で、今持っているかどうかは問題では無いのです」

 と、中二病仲間のパプカが補足説明。

「いいや小さき同士よ、ルーンが言っていることも間違いではない」
「誰が小さき同士ですか!!」
「我が宝物は形を成さず。なぜならこれは極めて歓喜な土産話だからだ」

 土産話? となると思い当たる節が無い。と言うか、誕生日プレゼントに土産話と言うのも中々聞く事の無い物だろう。
 ふふんと鼻を鳴らすリュカンは、大げさに両手を広げて息を吸う。どうやらようやくプレゼントの内容を発表するようだ。

「実は────この度我はティアル・ヴォルフ・ルートヴィッヒと付き合うことになったのだ!!」
「ちっ!!」
「ちっ!!」
「ちっ!!!」

 リュカンの発言から間髪入れず、ギルド内に三つの舌打ちがこだました。

「──え、今舌打ち……」
「「「ちっ!!」」」
「二度目!?」

 今心の底から思う。リュカンが憎い!! どろりとした憎しみの心が体全体を支配していくのが分かる!!
 そしてその感情をこの場で分かち合っているのは、パプカとジュリアスと言う真の意味での同士だけであった。
 残念ながら、心優しきルーンと、普通にイケメンで女性に不自由はしていないアグニスとこの感情を共有できないようである。

「え、ええと……二人の舌打ちはともかく、おめでとうリュカン。……でも、その報告がなんでサトーへのプレゼントになるんだ?」
「え……だって、幸せは分かち合うものだって道徳の授業で……」

 なるほど、義務教育が浸透しているヴォルフの街のありがたい教えを実行したと言うことか。
 だがしかし、リュカンは根本的に間違っている。
 他人の幸せを自分のように喜べるのは、基本的に余裕のある奴だけだ。
 具体的に言うと、他人に恋人が出来て喜べるのは、すでに恋人を持っている奴だけ。余裕の無い状態で他人の幸福へと向ける感情は嫉妬と憎悪しか無いのである(偏見)。

「はっ(嘲笑)! どうせわたしはこの年になって未だ恋人が出来ていない落ちこぼれですよ。リュカンは何歳でしたっけ? 16、7歳? おお、それはようございましたねぇ」
「これだから恋人が出来た奴らとは疎遠になるんだ。地元の友達から結婚の連絡が来た瞬間絶交を決意したのは何度めか」

 同級生たちが色恋に励む中、ひたすら勉強とリンシュの世話をしてきた俺に喧嘩を売っているとしか思えない。

「うあぁ……負の感情が充満しているのが分かる……」
「で、でも本当に良い話じゃないですか! と言うことは、ティアルさんはコースケさんのパーティーから抜けたということなんですか?」
「あ、ああ。我が告白した後、正式に抜けたと聞いている。正直、コースケへの憎しみは未だぬぐえないが、これで一区切りにはなっただろう」
「はいはいBSS、BSS」
「最近はNTRとは言わないのか?」

 アルファベットを古代語としている世界観で、なぜか生き残っているオタク用語である。

「──あれ? でも、今の舌打ち……三つありませんでした?」

 ギクリ

「えっと……パプカさんとジュリアスさんと……あと一人は?」
「そう言えばそうだな、アヤセちゃんは今日来てないよな?」
「パプカさんに魔力を吸い取られすぎて寝込んでます」

 一帯にクエスチョンマークが浮かび上がる。
 これは不味い。何が不味いって、俺の手の中にはルーンのマフラーがあるのだ。今現在掃除用具入れに入っているが、このマフラーがあるだけでそこは超高級フレグランスで充満された個室と化している。
 そんなレアアイテムを俺が手にしているのがバレたならば、変態と言うレッテル張りをされてしまうに違いない。
 だとするならば、犯人探しが始まる前に出ていくのはどうだろう。今までの話を聞いた結果、俺に対する悪ふざけを糾弾する台詞と共に飛び出すのだ。
 そうすれば俺がなぜ掃除用具入れに入っていたかと言う理由をうやむやにすることが出来るだろう。
 ツッコミとは、ある意味会話の主導権を取る万能アイテムなのかもしれない。
 そうして俺はこの後の行動を決意。ルーンのマフラーの香りを存分に嗅いでバフをもらったのち、掃除用具入れの扉を勢いよく開け放った。

「お前らぁ!! 悪ふざけも大概にしろぉ!!」
「サトー、なんでルーンのマフラーを顔に当てながら出てきたんです?」

 バレた。
 


 
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