208 / 230
第十二章 まるで終わらぬ年の暮れ
CASE96 誕生会⑤
しおりを挟む深夜。いつもならばリール村の住民たちが眠りにつき、静かで位様相が広まる時間帯。
しかし本日は年末。各家庭は飾り付けられ、広場には灯りが煌々と灯り、住人たちは酒を片手にどんちゃん騒ぎをしている。
そんな村の風景の中、ギルドの内部でも同様にお祭りがおこなわれていた。
基本的にズボラな冒険者たちのため飾り付けこそしていないが、酒や肴が存分にふるまわれ笑い声以外が聞こえてこない。
────ただ一人を除いて。
「はああああああああ」
「長いため息ですね。こっちまで気が滅入ってきますよやめてください」
「なぁパプカ……俺、ルーンに嫌われたかなぁ」
「何を落ち込んでるのかと思いきや……サトーのルーンに対する痴態はいつもの事です。誰も気にしていませんよ」
それはそれで傷つくんだが。
「まあそれはそれとして……お前、実は俺の事最初から気づいてたんじゃないだろうな? 悪ふざけしまくってたけど」
「はっはっは。察知系のスキルは持っていない物でして、悪ふざけに関しては──素です」
素で悪ふざけするんじゃないよ。
「でも良かったじゃないですか。あの後ちゃんと欲しい物もらえたんでしょ?」
結局、我に返った友人たちからの贈り物は、パプカが捻じ曲げたおかしな物ではなく、本来のちゃんとしたものだった。
アグニスからは上等な酒。
ルーンからは手編みのマフラー。
ジュリアスからはミナス・ハルバンの大冒険二次創作グッズ。
大満足である。
「唯一変わっていないのはリュカンさんの土産話でしたね……けっ」
「今も大テーブルを独占して冒険者たちの舌打ちを量産してるしな……ちっ」
ティアルと付き合うことになったと言う報告こそがリュカンの土産話であり、俺へのプレゼントだと言う。
だが正直独り身の俺としては憎しみしか抱かないし、そのほかの冒険者たちも同様だろう。
そんな醜い嫉妬心を酒と共に流し込み、俺はふとプレゼントについて思い出した。
「そう言えば、パプカからまだプレゼントって貰ってないよな?」
「はっ(嘲笑)。誕生日プレゼントを催促するとは、意地汚い男ですねサトーは」
「いや……まあ別にくれないなら別にそれでも良いんだが、リュカンに遮られてパプカが用意した物って聞いてなかったなって」
思い返せば、パプカがプレゼントを発表する直前にリュカンが乱入。舌打ちしか出ないプレゼントを持ってきたので、パプカの物が何なのか分かっていないのだ。
──いや、これまでのパプカの言動を見ていれば、悪ふざけの末に用意されたものだと言う予想は出来る。だが、せっかく用意してくれたのだから、聞いておくべきだろう。
「ふむ……せっかく用意したんですし、渡しておくべきですかね」
と言って、パプカは俺に手を出すように要求。自らのポケットをまさぐり、取り出したものを俺の掌に放り投げた。
「こ、これは…………なんだ?」
「見てわかりませんか?」
「いや、分からないから言ってるんだが……」
放り投げられたのは、手のひらに収まるサイズの人形。
プレゼントに対してこんなことを言うのは性格が悪いと思われても仕方がないが、はっきり言って趣味の悪いデザインである。
口には糸が縫い付けられ、かばんなどに取り付けるために設けられたストラップが、絞首刑に処せられているように首に巻き付いている。
胸元に設けられた青色のガラス細工が無ければ、呪いの人形として地面に叩きつけているところだ。
「先日村にやって来た行商人から買った人形なんですが……見覚えありませんか?」
俺は目を凝らして人形を観察する。そう言われてみれば、見覚えが無いわけでもない気がする。
だが、パプカが見てほしいのは別の場所だったらしく、咳払いをして俺の視線を誘導させた。
その場所はパプカが持っている杖の先。中央に赴いた際、強制的なデートで買わされた教会土産の人形であった。
「ああ、あの時の人形か! ちょっとデザインは違うけど、確かに似てるな」
「そうでしょう! 行商で見かけた時はびっくりしましたよ。こんな趣味の悪い人形が全国展開しているとは思っていませんでしたからねぇ」
趣味が悪いと思ったならプレゼントにするなよ。
「で、面白かったんで値切りに値切って買わせてもらいました」
「そんな裏話を贈り相手にするなよ」
「でも、買った後ふと冷静になって……「あれ? なんでこんな趣味の悪い人形を買ったんでしょう? いらない」と思ったんです。で、サトーへの贈り物として用意したことにしようと考えた訳ですね」
「だからそれを本人に言うなって!! やっぱり在庫処分じゃねぇか!!」
せめて内緒にしておけば問題なかったろうに。
「まあまあ、落ち着いてください。さすがの私もそんなに失礼な人間ではありませんよ」
「もうすでに評価は地に落ちてるけどな」
「正確に言うと、プレゼントは人形ではありません。胸元のガラス細工にご注目」
人形の胸元にあるガラス細工。よくよく目を凝らしてみてみれば、どうやら中に呪文のようなものが刻まれているらしい。
「これはわたし特製の【厄除けのお守り】です。魔力を込めたものなので効果も絶大。普通に購入しようとすれば10万イェンはするでしょう!」
「そうか、じゃあ売り払うか」
「ちょっと!?」
流石に冗談である。しかし10万イェンと言うのはかなりの大金であるため、将来困ったときは候補として考えておこう。
「けど、そんな高価なもの貰って良いのか? 自分で装備した方が良いんじゃ……」
「ああ、良いんですよ。いつもお世話になっているサトーのためです。プレゼントはそう言う物ですし、遠慮しないでください」
「で、本音は?」
「こんなもの鼻をほじりながら30分程度で作れるものなんでそこまで恩を感じられても困ります」
正直な奴である。
「いや、まあ……ありがとう。で、厄除けって言ってたけど具体的にどんな効果があるんだ?」
「小さな不幸なら打ち消せます。例えば躓いても転ぶのを防ぐとか、切り傷なら即治る効果なんかもありますね」
「へぇ、地味だけど結構実用的だな」
「あまりに大きい不幸は無理ですけどね。その場合は、不幸が近づいたときにお守りが割れて警告してくれるようになっています」
鼻をほじりながら作ったにしては随分と素晴らしい出来栄えのようだ。
普段の言動から見ると忘れがちだが、パプカは超一流冒険者であり、非常に人口が少ない錬金術師と言う職に就いている人間だ。
そんな彼女が作ったものなのだから、作成手順が適当でも効果が絶大なのは間違いないのだ。
「お前がこんな細やかな気遣いが出来るようになるとは……成長したな、パプカ!!」
「普段からわたしの事をどういう風に見てるんでしょうかねこの男は」
それは自業自得だと思う。
と、話がはずんでいるところ、カウンターに立っているルーンからアナウンスが入った。
「皆さん。もう間もなく年が明けますので、カウントダウンを始めたいと思います」
どうやら随分と時間が経っていたようだ。
今年一年、苦労に苦労を重ねた年だったが、過ぎ去ってしまえばよい思い出…………と割り切ることは出来ないが、それでもそれらは過去である。
過ぎてしまったものは仕方がない。次の年をより良い一年にすることを目標にして、過去の黒歴史を払しょくすることにしたい。
カウントダウンが始まり、いよいよ新年の幕開けである。
「「「あけましておめでとうございまーす!!」」」
何度目かの乾杯と祝いの言葉が響く────そして
バキィッ!!
厄除けのお守りが砕け散った。
「…………お守りが砕けたんだが?」
「…………お守りが砕けましたね?」
────幸先が悪い!!
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる