41 / 230
第三章 まるで混沌な運動会
CASE17 マクダウェル親子
しおりを挟む『レディースエーンジェントルメーン! いよいよ運動会も最終競技! チーム対抗リレーを残すだけ! 盛り上がってるか野郎ども!!』
「「「おおおおおおおぉっ!!」」」
観客席から、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。
舞台は王都の外れに出来た競技場から変わり、王都の中心地区に移っている。
『では最後のルール説明をするよ~。今回は、総合ポイントの上位5チームによるチーム戦だよ~』
『チーム全員で中心地区を一周してもらいます! 区間は3つ! それぞれの区間にバトンを渡しつつ、ゴールを目指せ!』
『ちなみに今回の競技は、強化に妨害、飛行魔法でもなんでも有りだよ~』
『ただし! 戦闘は区間にバトンが渡る瞬間まで禁止です! 1チームでもバトンが渡れば、その瞬間からその区間の戦闘を許可します!』
なんという野蛮な競技であろう。
いや、最初から分かっていたことであるが、この運動会は頭のネジがぶっ飛んでいると思う。
しかも、リンシュの頭がぶっ飛んでいるから、というわけではない。歴代の運動会だって相当頭おかしい。
誰か止めろよこんな大会。命がいくつあっても足りないよ。
実際死にかけた人間、たくさん居るしね。回復魔法で回復させてるだけだからね。
ちなみにこの『チーム対抗リレー』。運動会の名称である”栄光を我が右手に”と呼ぶきっかけになった競技らしい。
なんでも、バトンを右手に持って走るからだそうだ。
……散々引っ張って置いて、そんなオチかよ!
『上位5チームの紹介だよ~。まずはぶっちぎりの第一位、中央チーム~』
観客の拍手とともに、各区画にて選手たちが手を振った。
第一区画は二人。ヒュリアン・マクダウェルとモブなんとかさん。
第二区画も二人。アックス・ル・モンドとミンティア・ルールブック。
そして第三区画、それぞれのチームで必ず参加している職員枠。最強のドS上司、リンシュ・ハーケンソードである。
次に西方本部チーム、東方本部チーム、西方支部チームの紹介が終わり、いよいよ最後の5チーム目。
我らが東部辺境、リール村支部チームである。
元々、俺とジュリアスを除けば、非常に優秀な冒険者を有するリール村。参加させた競技は、ほとんど全てにおいて、大変優秀な成績を収めている。
最終競技に食い込むことは、俺にとって計算通りと言えるだろう。
何より魅力なのが、最終競技において、上位3チームに食い込むことができれば、賞金総額が倍近くに跳ね上がる。
今の段階でも、減棒分は補填できている。しかし、今後のこともあるため、できれば貯金をしておきたい。あのドSのことだ、今後も減棒攻撃は続くことだろう。
我が第一区画はマクダウェル親子。
第二区画はメテオラとジュリアス・フロイライン。正直、ここが一番心配。
第三区画は俺。他のチームが先に到着した場合、瞬殺される可能性が否定できない。
ボンズによるチーム紹介が終わり、そろそろ競技が始まる。覚悟を決めないとなぁ。
各区画の様子は、ゴール近くに設けられた巨大スクリーンに映し出され、俺もそれを見ることが出来る。
……なんだあの超技術。あそこだけ完全に現代日本じゃないか。
『さて! 泣いても笑ってもこれが最後! 表彰台を飾るのはどのチームか!?』
『みんな~、用意は良いかな~?』
『位置について!』
『よ~い』
『ドンッ!』
魔法で打ち上げられた、スタートの合図の花火。
そしてそれと同時に、参加者たちの叫びがこだました。
「「ク」」
「「タ」」
「「バ」」
「「レ」」
「「!!」」
スタートの合図とともに、第一区画で戦争が巻き起こった。戦闘ではなく、戦争。
大規模魔法が複数炸裂し、武器同士がぶつかり合う金属音が響き渡る。
悲鳴と血しぶきが交互に撒き散らされて、その光景を見る観客たちの大歓声が巻き起こる。なんだこの世紀末、すごく怖い。
「あら? ゴルフリート、よく避けられたわね? 殺すつもりで撃ったのだけれど」
「お前のやり口なんてお見通しだよ、ヒュリアン。何年夫婦やってると思ってんだ」
第一区画でも別格の、ゴルフリートとヒュリアンが対峙する。この化物二人には、他のチームも手出ししたくないらしく、一対一の戦いになりそうだ。
「パプカ、ヒュリアンの相手は俺がする。お前はバトンを持って先にいけ」
「言われなくてもそうします。お母さん! お父さんを殺しちゃ駄目ですよ! 対人戦闘保険には加入してないんです、殺すなら加入してからにお願いします!」
「パプカ、お父さん流石に泣いちゃうぞ!」
なんで家族喧嘩やってるんだあいつら。
「ならモブ君。貴方も先に行きなさい。貴方にこの場は荷が重いわ」
「言われなくてもそうするッス。命がいくつあっても足りません」
相当な実力者であるパプカやモブでも、各チームの精鋭がドンパチやっている第一区画では、力不足が否めない。
各チーム、実力者をスタート地点で戦わせ、相方がバトンを持って先に進むという手段を取っている。その相方が消し炭になっているチームもあるが。
「思えば、全力でお前と戦うのは、随分と久しぶりな気がするな、ヒュリアン」
「いつもは貴方の浮気が原因で、一方的な折檻だものね、ゴルフリート」
二人の間に火花が飛び散った。
最強の冒険者、オリハルコンランクの二人が本気で対峙する。通常、あってはならない状況に、観客の盛り上がりは天井知らず。
バトンを持って先行するパプカ達等そっちのけで、スタート地点に視線が集まっている。
一方のパプカ達先行組。こちらはこちらで、普通のバトルを普通にこなしつつ、普通に区間を走っていた。
「フルプレートガントレット!」
「なんの! もう二度と不覚は取らん!」
パプカの攻撃を上手にいなすモブ。名前はその他大勢のくせに、その実力は本物のようだ。
おまけに前衛職の中でも正統派。筋肉モリモリのモブは、パプカの攻撃を避けると、その距離をどんどん開いていく。
「ふはははっ! 走るのは苦手のようだな? おとなしくそこらの日陰で休んでから来ると良い!」
「お、おのれ……こんな走る競技は、想定外……です。はぁはぁ」
まだ数十メートルも走っていないくせに、何が想定外だ。素の体力がなさすぎる。
杖をまさしく杖代わりにして区間を歩く。歩くなよ。走れよ。リレー競技だぞこれ。
先行組の中でも、良いスタートダッシュをきれたにも関わらず、どんどん追い抜かれてしまう。
「くそう、走る競技以外なら…………ガクッ」
『パプカ選手、区間の半ばで力尽きてしまったー!』
『これはリタイアかな~? どちらにしても、先頭グループには追いつけないかもしれないね~』
なんということだろう。実力を見越して第一区間を任せたのに、アレほど体力が無いとは思わなかった。
だが、ここで思いがけない幸運が訪れた。
「極大爆裂魔法!!」
「”気合防御”!!」
スタート地点で、超巨大な爆発が発生した。
ヒュリアンからゴルフリートへ放たれたその魔法は、ゴルフリートによるスキル”気合防御”、すなわちただの我慢にぶち当たる。
ただの我慢と言っても、ゴルフリートのジョブは狂戦士。攻撃を受ければ受けるほど、身体能力が跳ね上がる能力を持つ。
魔法を食らったそばから耐性力がついて、極限にまで鍛え上げた肉体と相まって、ヒュリアンの魔法を退けることに成功した。
そして、その余波は周囲へとそれ、先行組へと襲いかかる。
「あ」
「うぎゃぁ!?」
爆炎が先行組に直撃。ヒュリアンの味方であるはずのモブは、絶望の表情を浮かべつつ、炎に巻き込まれて吹き飛んだ。
「あちゃー」
「お前味方にも容赦ないな」
「不可抗力よ」
地面に倒れ伏していたパプカは、運良く難を逃れて無傷。その他の先行組は、モブを含めて全滅した。
「チャンスですパプカさん! 今のうちに第二区間にバトンを渡してください!」
「ふっふっふ……わたしの勇姿を特と目に焼き付けてください、サトー。いざっ……うっ!?」
しばらく地面に伏していたパプカは、体力が回復したのか、勢い良く立ち上がった。
しかし、立ち上がったのは良いものの、数歩歩かぬうちにうめき声を上げて立ち止まってしまった。
「うぶっ……おろろろろろろ!」
『うわっと!? パプカ選手ゲロった!』
えんがちょ。一応の美少女がリバースする姿に、会場全体がドン引きするのを感じた。もちろん、俺もドン引きである。
スタート地点の強者達は、未だドンパチを続けている。
先行組は爆炎に巻き込まれ、難を逃れたパプカは吐き散らかしている。
これもう……分かんないなぁ。果たして、無事ゴールできるチームは現れるのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる