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第十三章 まるでカオスな視察団
CASE99 本部長①
しおりを挟む視察当日。
事前の打ち合わせをバックレたゴルフリートのオッサンと、悪ノリ娘のパプカ。そして何とか都合をつけてもらったメテオラを横に並べ、リール村の入り口付近で視察団を待つ。
選んだメンバーの内、二人は鼻をほじりながらボケっとしており、残る一人は煙草をふかしてリラックスしていた。
おぉ……胃が痛い。
胃薬をかみ砕きながら、今頃選出したメンバーに後悔の念を送っている。
オッサンとパプカは、この村でも有数の高ランク冒険者なので選択肢はなかったが、メテオラに関しては別だ。
仕事を後回しにするとろくなことが無いという典型例。リュカン辺りなら暇しているだろうと高をくくっていたのがそもそもの間違い。
こんなことならもっと前から適当な冒険者に予定を開けてもらっておくのだった。
冒険者ギルドの東本部。そこから来るヒューズサブマスターに対してこいつらが無礼を働こうものなら、俺のクビが飛びかねない。
かと言ってメテオラやオッサンの機嫌を損ねても、今度は俺の首(物理が)飛びかねない。
いざとなったらこいつらを囮に、何もかもを捨てて逃げ出す必要があるかもしれん。
「さっきからサトーが好き勝手言ってるんだが」
「まあまあお父さん。サトーの駄々漏れ独り言はいつもの事です」
「帰って同人誌を読みたいのだが」
しまった、心の声が漏れていたようである。
俺の心配をよそに、こいつらはいつだってマイペースだ。
だがしかし、この状況を考えるとそれも悪くないのではあるまいか。西部のルトンサブマスターの件もあるし、意外とヒューズサブマスターも気さくなお人かもしれない。
だとすれば、こいつらがやらかしたとしても笑って済ませてもらえる可能性もある。最悪こいつらの身柄を差し出して保身に走れば良いのだ。
「いやだから聞こえてるって」
「事ある毎にわたしたちを差し出そうとするの止めてくれません?」
──和やかに会話をしていると、遠目に一台の馬車と、それに先行して走る馬が見えた。
馬に乗っているのは、メイド服に身を包んだ女性。段々と近づいてくるその姿に、俺は見覚えがあることに気が付いた。
「──あれ? クーデリアさん!?」
「お久しぶりですサトー君。本日はお日柄も良く……」
「いやいや! 挨拶はともかく、なんであなたが居るんですか!? ルトンサブマスのメイドでしょう!?」
クーデリア・アインズバーグ。
西部のメイド養成学校で講師を務め、同時にルトンサブマスターの元でメイドをやっている女性。ちなみに忍者でもある。
そんな彼女が、なぜこのタイミングでリール村にやって来たのか。今回の視察はあくまで東本部からの物だ。西部は全く関係の無いはずなのだが。
「言っていませんでしたか? 私は教師が副業。本業はメイド兼護衛の忍者で、かつフリーランスです。たまに別の主人に仕えたりもします」
改めて聞くと属性がてんこ盛りである。
「え、じゃあ今は……」
「はい。ヒューズ様に仕えています。今回は視察として来られるヒューズ様の先駆けとしてあいさつに参りました」
そう言ってクーデリアは馬から降り、メイド服のスカートをつまんで丁寧な一礼をした。
ここに並ぶ冒険者たちに対しても同様で、一人一人に挨拶をしていく。
「…………あれ? アンタ、どっかで会った事ある?」
「ナンパはお止めくださいゴルフリート様」
なぜか訝し気な表情を浮かべるオッサンの台詞を一刀両断にしたクーデリアは、その視線をメテオラへと向ける。
忍者としての実力も極めて高いクーデリア。やはり強者のカンと言う物なのか、メテオラに何かを感じ取ったのだろう。
「メテオラ様、本日はエクスカリバー様はお連れで無いのですか?」
「今日は仕事だからな。俺様だけだ」
「──は?」
随分と気さくな間柄のようである。
強者が云々とか恥ずかしいことを言ってしまったが、どうやら勘違いだったようだ。
「ま、まさか二人は大人な関係──」
「「違う(違います)」」
これも違ったようだ。
「メテオラ様は頻繁にルトン様の邸宅に遊びに来られますので、顔見知りになっているだけです」
「うむ。毎度「ルトン様のお仕事の邪魔をなさらないでください!」と過激なバトルになるのだが、それはそれで楽しい余興になっているからな。またその内行こう」
「おやめください」
メテオラとドンパチやって無事でいられるクーデリアって一体……
「あ、そろそろご到着されるようです」
会話の最中、先ほどまで遠目に見えていた馬車が村の近くまで迫っていた。
俺は背筋を伸ばして体を緊張させた。思いがけず登場したクーデリアによって、多少は和んだ空気だったが、やはり本番となるとヒリついて緊張してしまう。
ルトンサブマスのように、ある程度気さくな性格であれば良いのだが果たして……
「皆様お待たせいたしました。冒険者ギルド東本部・本部長兼サブマスター。ヒューズ・フォン・アルカディア様のご到着です」
馬車の踏み台をギシリと鳴らし、降りてきたのは冒険者ギルドの最高幹部。白を基調とした特殊仕様の制服で長身を包み、四角いメガネとうっすらと整えられたあごひげ。そして鋭い眼光を放つ一人の男性。
ヒューズサブマスターがその姿を現した。
「────君が噂のサトー君だね? どうぞよろしく」
優し気な台詞とは裏腹に──彼は極大の殺気を俺に差し向けていた。
────なぜぇ!?
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