220 / 230
第十三章 まるでカオスな視察団
CASE102 ゴルフリート①
しおりを挟むゴルフリート・マグダウェル。
この世に6人しかいない最強の冒険者であるオリハルコン。リール村における最大戦力であり、その親バカぶりや暴走の具合を除けば優秀な男性である。
そのような大人物の訃報が病院内に響いた。発信元はジュリアスである。
肩で息をして、額には脂汗。どうやら急いでここまで走って来たのだろう。
「へぇ、そうなんですか?」
そんなジュリアスの必死さを鼻で笑うかのごとき、パプカ・マグダウェルの安穏とした立ち居振る舞い。
父親の訃報に対してここまで無関心を決め込めるというのは逆に凄い。
「……え、あの……話を聞いていたのか?」
「はい。お父さんが死んでしまったんでしょう?」
「なんでそんなに冷静なんだ!?」
「まあ、年に2、3回は死んでいる人ですからね。バーサーカーと言うジョブは安定感が無くて困ります」
あっけらかんと言い放つパプカだが、中々凄まじいことを言ってらっしゃる。
確かにこの世界は【蘇生魔法】と言う物が存在し、死に関しても【仮死状態】というバットステータス扱いが基本である。
寿命だったり魔法で治せない病気。さらに死後時間が経過していない限りは復活できるのである。
だからこそパプカは冷静なのである。
──いや、実際はジュリアス並みに焦る場面なのだが、いくら何でも慣れすぎだろう。
「で、お父さんはどこです? 時間切れになる前に復活させに行きましょう」
「あ、ああ……道端で倒れていたから担いで連れてきたんだ。今は別室でドクターに見てもらってる」
「──ところで、復活って言ってもリール村には司祭なんていないし、ヒーラーも復活魔法が使えるレベルの奴はいないんだが、大丈夫か?」
「──あ、そう言えば復活用のエリクサーの在庫も切れてるんでした」
────ヤバくね?
「もう一度聞くが大丈夫なのか!?」
「だだだだ大丈夫ですよよ、よよ余裕で問題なんてあるはずありませせせせん」
ジュリアス以上の汗が滝のように流れ出ているのだが。
「ちょっと待て落ち着けパプカ。冷静になって情報を整理してみろ。エリクサーならギルドの備蓄が────そう言えばお前に発注して多分納品してたっけ?」
「正直言ってこの瞬間まで忘れていたので作り置きも無いです」
「────あ、エクスカリバーが転移魔法使えただろ。オッサンごと別の街に飛ばして復活魔法をかけてもらえば──」
「あの駄剣なら北部へアイドルの追っかけをしているはずだが」
「────」
「────」
もうダメかもしれない。
「あの、少しよろしいでしょうか?」
お通夜のような状態の俺たちに対し、クーデリアが挙手をして声を上げた。
「私、復活魔法使えますけど」
俺はその発言を聞くと、すぐさまクーデリアの手を取った。
「あなたは神か!」
「いえ、メイドですが」
「良かった……オッサンが死んだりしたら、俺の首から上が吹っ飛ぶところでした!」
「雇用関係の話ではなさそうですね」
「いやぁ、ひやひやしましたよ。葬式の手配のやり方とか知りませんでしたからね」
「割り切りが早すぎませんか?」
とはいえ、クーデリアさんのおかげでこの唐突な危機は回避された。
ほっと胸をなでおろしていると、今度はジュリアスが口を開く。
「いや待て、クーデリアがメイドにあるまじきスキルを持っているのは知っているが、それは確かシーフ系の物だろう。なぜ復活魔法が使えるんだ?」
「フリーランスのメイド兼忍者が復活魔法を使ってはおかしいですか?」
「────まあ良いか」
どうやらジュリアスは考えることを止めたようだ。
このまま行くとクーデリアの属性の数が凄いことになりそうであるが、今はそんなことを考えている場合では無いだろう。
「どうやら心臓麻痺のようじゃのう」
早速クーデリアと一緒に別室へと向かった。
そこには泡を吹いて白目をむいたゴルフリートが横たわっており、そばにいたドクターから症状が申告された。
「外傷はないみたいじゃし、原因は分からんな。突発性の物かもしれん」
「お父さんの心臓は鋼並みに眼鏡のはずなんですがね。大抵の事には動じない神経の図太さですし」
「そういう話じゃないと思うぞ」
「まあひとまずさっくり蘇生しておきましょうか」
何の感慨もなく、クーデリアは横たわったゴルフリートの前に立ち、手をかざして目をつむった。
すると淡い光がゴルフリートの全身を包み込み、すぐさま消え去った。
「はい終わりました」
「「「早っ!?」」」
「魔法とは得てしてそういうものです」
「パプカの魔法はいつだって長ったらしいけど……」
「何を言ってるんですかサトー。そっちの方がカッコいいじゃないですか」
お前が何を言ってるんだ。
「とにかく蘇生は終わりました。目を覚ますまではしばらくかかるでしょうが、もう大丈夫でしょう」
「結局原因は何だったんだろうな? やはり突発性の病気なのだろうか?」
「ギルドでやった健康診断では健康体そのものだったはずなんだが……」
その他に考えられるのは、魔物などによる攻撃だが、こっちはもっと可能性が低いだろう。オリハルコン冒険者であるオッサンがそう簡単にやられるとは思えない。
やはり病気という線が妥当だろう。今度腕の良いヒーラーに見てもらうこととしよう。
「────ふっふっふ。二人とも見立てが甘いですねぇ」
「おい、何かパプカが良からぬ発言をしようとしてるぞ」
「父親の事だし、真剣な話かもしれないぞ? サトー、ちゃんと聞いてやれ」
「これは巧妙なトリックが施されたミステリー事件です! 名付けて【片乳首殺人事件】!!」
パプカが良からぬ発言をし始めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる