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第五章 まるで祟りな夏祭り
CASE28 ディーヴァ②
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美味いとは言え、大盛りのかき氷を五杯と言うのは多すぎた。
下した腹を抑えながらトイレへと駆け込んでから十数分。なんとか腹痛は収まって、表で待ってくれていたルーンと合流した。
今思えば、パプカに回復魔法をかけてもらえていれば、トイレにこもる時間を無駄にせずにすんだのでは、と思うが後の祭りである。
祭りの様子は、こもっていた間に随分と盛り上がりを見せていた。
中央広場の更に中央。メインステージが設けられたその場所で、夏祭りのイベントが始まっているようだった。
「悪いルーン。待たせたな」
「いえいえ。それより、そろそろ最初のイベントが始まるようですよ? 見に行きますか?」
「うん。もう飯も大分食べたしな。見に行ってみるか」
夏祭りのイベントというが、ここは辺境地と呼ばれるほどに小さな村。流石に田舎であるためか、ごく小規模なものだ。王都での大規模イベントとは比べ物にならない。
せいぜい、冒険者たちが出し物をしたり、この後俺が審査員を務める水着コンテストがあるくらいのものであり、王国でも屈指の規模を誇る運動会を経験した
それでも娯楽に飢える人々がメインステージへと群がって、結構な人混みが出来上がっていた。
『レディーズ&ジェントルメーン! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 夏祭りのメインイベントが始まるよー!』
ステージの上で客寄せをしているのは、本日は酒場が休業しているため同じく休みである、アグニス・リットンである。
せっかくの休みというのに、何をやってるんだあいつは。こういうのが趣味なのだろうか。
客寄せをしなくとも、自然に足を止める村人たち。その内に客席は満員となり、いよいよ一つ目のイベントが始まるようだ。
『では一つ目のイベントを紹介しよう! はるか遠く彼方から、はるばるリール村までやって来てくれたぞ! 普段は王都で活動している、新進気鋭のアイドルだー!』
手をかざすと、ステージの裏手側。出演者たちが控えている場所から、一人の女性が登場した。
フリルとリボンが散りばめられたアイドル風の衣装に身を包むが、髪や肌はミステリアスに彩度が低く、唯一赤い口紅が怪しく光る。極めつけは背中に生えた大きく黒い羽だ。
そしてそんな特徴過多な人物に、俺は心当たりがあった。
『紹介しましょう! 稀代の歌姫! ディーヴァ!』
「ご紹介ありがとうございますわ! そう、ワタクシこそ! 王都で絶賛活躍中のディー……わっ!?」
『わっ!? ど、どうしましたか、ディーヴァさん?』
ドヤ顔で胸を張り、堂々と自己紹介をしていたディーヴァが、俺と目が合ったことにより叫び声を上げた。
想定外の出来事に、アグニスほか、観客たちも怪訝な表情を浮かべている。
だがしかし、そんな中で一人。俺だけが別の顔をしていた。怪訝な顔というよりも、呆れ顔と言うべき表情である。
アワアワとうろたえるディーヴァは、俺に向かって何かを伝えようと体を動かしていた。
親指を控室へと指差し、顎を使ってこっちへ来いと言う催促だろう。
おいやめろ。頼むから、そんなに目立つ場所で俺に向けて視線を送るな。お陰で俺に向けられる観客たちの視線がすごく痛い。目立つのは余り好きじゃないんだ。
正直行きたくはないが、ここまで目立ってしまったのだから行くしかあるまい。
俺はルーンに少し待ってろと伝えると、駆け足で舞台裏へと向かった。
* *
「なんで貴方がここに居るんですの!?」
「そりゃこっちの台詞だ。そもそもここは俺が住んでる村で、お前からここ来たんだろうが」
「え……そうですの? てっきり、ワタクシの追っかけにジョブチェンジしたのかと……」
「王都でのやり取りで、お前の追っかけになるやつなんていない」
舞台裏の控室で、ディーヴァが俺に詰め寄った。どうやら、俺がこの村にいるとは知らずにやって来たようだ。
だからこそ、絶賛活躍中などという大ぼらを観客の前で吹いたのだろう。まあ、こんな辺境地にまで来て、知り合いに会うとは思わないだろうし。
「じ、実は……サトーに相談に乗ってもらってから色々と考えまして。王都だけではなく、全国を周りながら活動をしてるんですの。この村は三件目ですわ」
「ああ、まあ殊勝なことだな。と言うか、それがアイドルのあるべき姿だぞ」
「あのアドバイスは結構参考になりましたわ。王都よりも、各地を巡って地道に活動。ワタクシらしくはありませんが、コレは中々に楽しいですわね」
全国を回るための交通費はどうしているのだろう。こいつは確か、家賃すら払えない貧乏人だったはずなのだが。
アドバイスと言っても、「王都だけで活動するな」とか「属性を絞れ」とか。よく覚えてないがその程度のことしか言っていない。
その程度で売れ始めたのだから、元々アイドルに向いていなかったわけでは無いのだろう。
容姿は淡麗。ジャンル選びは酷いが歌声はかなりのもの。高飛車な口調だって、属性過多でなければ売りの一つとして宣伝できる。
コレで売れていなかったときのほうがおかしいのである…………いや、それらのプラス要素をマイナスにしていた、彼女の自業自得ではあるのだが。
「……あれ? でも王都でお前と会ってからそんなに日数は経って無いよな? 全国で三件目って……移動しながらにしてもペースが早くないか?」
「ワタクシはま…………羽が生えていますから。移動距離など大した障害ではないんですの」
空をとぶことができるのならば、馬車で移動するよりも遥かに早い。
さすがに規格外だが、メテオラが運動会の最中、ほぼ一瞬で魔界と往復してきたことを考えればわかるだろう。
「便利だよなぁ獣人って。俺も空とか飛んでみたいなぁ」
「え、ええ……そうですわね」
何故か気まずそうに顔を伏せるディーヴァ。何かおかしなことでも言っただろうか?
「ま、地道に活動してるなら、俺から言うことは何もないな。せいぜいイベントを盛り上げてくれ」
「ええ、おまかせ下さい。呼び出してすみませんでしたね」
と、話し終わった俺は、客席のルーンの元へと合流した。
はじめは、王都でやっていたようなおかしなアイドル活動で、この場を荒らすのではと心配していたが、どうやらあの後反省していたようだ。
真面目に全国で活動しているらしく、この村に来たのもその一環。俺がここにいたのは偶然で、俺に何かをしに来たというわけではない。
ならば俺は静観するだけだ。俺の助言で、一が成長するというのは中々に気分がいい。普段は人の話を欠片も効かない連中ばかりを相手にしてるからなぁ。
「あの、お知り合いだったんですか?」
「ああ。王都でちょっとな。まさか、ギルド職員としての醍醐味を、勤務外で味わうことになるとは思ってなかったよ」
「? よく分かりませんが、嬉しそうですね」
相談窓口に来る連中も、アレくらい素直であればどれだけ救われることだろうか。ディーヴァの爪の垢でも煎じて飲んでほしいくらいだ。
ディーヴァは再びステージへと上がり、いよいよ彼女のパフォーマンスが始まるようだ。
気を取り直して、マイクを片手にステージの中央に立つ。アグニスがステージから降りて、ディーヴァに照明が当たった。
観客たちは静まり返り、固唾をのんで彼女パフォーマンスを待つ。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございますわ。実は、この場にも居るある人に出会い、ワタクシのアイドルとしての人生が変わりました。その人への感謝も込めて、ワタクシは今日。精一杯のパフォーマンスをさせていただきます!」
何とも照れくさいことを言ってくれる。
軽快な音楽が流れ始め、マイクを口の前に持ってくると、ディーヴァは大きく息を吸った。
「――――こ……」
バツンッ!
ブレーカーが落ちた。まだ歌詞の一文字しか発していないにも関わらず、機械トラブルとは運が悪い。
辺り一面が真っ暗となって何も見えず、聞こえるのは観客のざわつきと、うろたえるディーヴァの声だけである。
「ちょっと! 一体どういうことですの!? ちゃんと説明を……うわっ!? なんでアンタがここに!? え、ちょっ……待って下さい! まだ歌ってもいないのに…………コラァ! 離せこの糞ガキ……うわわっ!?」
暗闇で全く見えないが、何やらステージ上でドタバタとディーヴァが騒いでいるようだ。
内容からして、誰かステージに上って口論をしているらしい。
おまけに、突如として発生した豪風が辺りを襲った。屋台なども吹き飛ばしそうな、強力な風である。
ブーイングを起こす観客たちをアグニスがなだめていると、その内にステージの照明が復旧した。
「…………あれ? ディーヴァは?」
照明が照らすステージの上。先程までディーヴァが立っていたその場所には、なぜだか誰も居なくなっていた。
慌ててアグニスが舞台裏へと向かい、彼女の姿を探し始める。そしてしばらくして戻ってきたものの、やはりディーヴァは一緒ではないようだ。
『えーっと、大変申し訳ありません。探してみたものの、ディーヴァさんの姿が見当たりません』
再びブーイングの嵐。娯楽に飢える辺境地域の住民たちが、アイドルという普段お目にかからないような人種を前に、お預けを食らったのだから仕方がない。
見つからないからと言って、メインステージのイベントを中止にさせるわけにも行かず、アグニスはすぐさま次のイベントに移行することにしたようだ。
『ディーヴァさんのパフォーマンスは、見つかり次第再開と言うかたちにします! 順番を入れ替えて、次のパフォーマンスは彼ら! リール村のオタクトリオ! なんとバンドでの参加です! メテオラ、リュカン、エクスカリバー!』
楽器を携えて登場した三人組。中央に立てかけられたエクスカリバーに、ドラムを運び込むリュカン。そしてギターを携えるメテオラである。本当に仲が良いなこいつら。
演奏の準備に取り組む中、何故かメテオラがアグニスのマイクをひったくった。
『お前たちには迷惑をかける。さっきの女は体調がすぐれないそうだから拘束……休ませておいた。すまないが、もう戻ってくることはない』
それだけを告げると、メテオラも準備をし始めた。どうやら、先程ステージ上での口論相手はメテオラだったようだ。
ディーヴァの行方を間違いなく知っているのだろうが、誰も彼に深く追求はしなかった。
なぜならば、彼が放った殺気は「コレ以上何も聞くな。殺すぞ」と明確なる台詞を含んでいたからである。
ディーヴァ…………生きていると良いのだが。
下した腹を抑えながらトイレへと駆け込んでから十数分。なんとか腹痛は収まって、表で待ってくれていたルーンと合流した。
今思えば、パプカに回復魔法をかけてもらえていれば、トイレにこもる時間を無駄にせずにすんだのでは、と思うが後の祭りである。
祭りの様子は、こもっていた間に随分と盛り上がりを見せていた。
中央広場の更に中央。メインステージが設けられたその場所で、夏祭りのイベントが始まっているようだった。
「悪いルーン。待たせたな」
「いえいえ。それより、そろそろ最初のイベントが始まるようですよ? 見に行きますか?」
「うん。もう飯も大分食べたしな。見に行ってみるか」
夏祭りのイベントというが、ここは辺境地と呼ばれるほどに小さな村。流石に田舎であるためか、ごく小規模なものだ。王都での大規模イベントとは比べ物にならない。
せいぜい、冒険者たちが出し物をしたり、この後俺が審査員を務める水着コンテストがあるくらいのものであり、王国でも屈指の規模を誇る運動会を経験した
それでも娯楽に飢える人々がメインステージへと群がって、結構な人混みが出来上がっていた。
『レディーズ&ジェントルメーン! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 夏祭りのメインイベントが始まるよー!』
ステージの上で客寄せをしているのは、本日は酒場が休業しているため同じく休みである、アグニス・リットンである。
せっかくの休みというのに、何をやってるんだあいつは。こういうのが趣味なのだろうか。
客寄せをしなくとも、自然に足を止める村人たち。その内に客席は満員となり、いよいよ一つ目のイベントが始まるようだ。
『では一つ目のイベントを紹介しよう! はるか遠く彼方から、はるばるリール村までやって来てくれたぞ! 普段は王都で活動している、新進気鋭のアイドルだー!』
手をかざすと、ステージの裏手側。出演者たちが控えている場所から、一人の女性が登場した。
フリルとリボンが散りばめられたアイドル風の衣装に身を包むが、髪や肌はミステリアスに彩度が低く、唯一赤い口紅が怪しく光る。極めつけは背中に生えた大きく黒い羽だ。
そしてそんな特徴過多な人物に、俺は心当たりがあった。
『紹介しましょう! 稀代の歌姫! ディーヴァ!』
「ご紹介ありがとうございますわ! そう、ワタクシこそ! 王都で絶賛活躍中のディー……わっ!?」
『わっ!? ど、どうしましたか、ディーヴァさん?』
ドヤ顔で胸を張り、堂々と自己紹介をしていたディーヴァが、俺と目が合ったことにより叫び声を上げた。
想定外の出来事に、アグニスほか、観客たちも怪訝な表情を浮かべている。
だがしかし、そんな中で一人。俺だけが別の顔をしていた。怪訝な顔というよりも、呆れ顔と言うべき表情である。
アワアワとうろたえるディーヴァは、俺に向かって何かを伝えようと体を動かしていた。
親指を控室へと指差し、顎を使ってこっちへ来いと言う催促だろう。
おいやめろ。頼むから、そんなに目立つ場所で俺に向けて視線を送るな。お陰で俺に向けられる観客たちの視線がすごく痛い。目立つのは余り好きじゃないんだ。
正直行きたくはないが、ここまで目立ってしまったのだから行くしかあるまい。
俺はルーンに少し待ってろと伝えると、駆け足で舞台裏へと向かった。
* *
「なんで貴方がここに居るんですの!?」
「そりゃこっちの台詞だ。そもそもここは俺が住んでる村で、お前からここ来たんだろうが」
「え……そうですの? てっきり、ワタクシの追っかけにジョブチェンジしたのかと……」
「王都でのやり取りで、お前の追っかけになるやつなんていない」
舞台裏の控室で、ディーヴァが俺に詰め寄った。どうやら、俺がこの村にいるとは知らずにやって来たようだ。
だからこそ、絶賛活躍中などという大ぼらを観客の前で吹いたのだろう。まあ、こんな辺境地にまで来て、知り合いに会うとは思わないだろうし。
「じ、実は……サトーに相談に乗ってもらってから色々と考えまして。王都だけではなく、全国を周りながら活動をしてるんですの。この村は三件目ですわ」
「ああ、まあ殊勝なことだな。と言うか、それがアイドルのあるべき姿だぞ」
「あのアドバイスは結構参考になりましたわ。王都よりも、各地を巡って地道に活動。ワタクシらしくはありませんが、コレは中々に楽しいですわね」
全国を回るための交通費はどうしているのだろう。こいつは確か、家賃すら払えない貧乏人だったはずなのだが。
アドバイスと言っても、「王都だけで活動するな」とか「属性を絞れ」とか。よく覚えてないがその程度のことしか言っていない。
その程度で売れ始めたのだから、元々アイドルに向いていなかったわけでは無いのだろう。
容姿は淡麗。ジャンル選びは酷いが歌声はかなりのもの。高飛車な口調だって、属性過多でなければ売りの一つとして宣伝できる。
コレで売れていなかったときのほうがおかしいのである…………いや、それらのプラス要素をマイナスにしていた、彼女の自業自得ではあるのだが。
「……あれ? でも王都でお前と会ってからそんなに日数は経って無いよな? 全国で三件目って……移動しながらにしてもペースが早くないか?」
「ワタクシはま…………羽が生えていますから。移動距離など大した障害ではないんですの」
空をとぶことができるのならば、馬車で移動するよりも遥かに早い。
さすがに規格外だが、メテオラが運動会の最中、ほぼ一瞬で魔界と往復してきたことを考えればわかるだろう。
「便利だよなぁ獣人って。俺も空とか飛んでみたいなぁ」
「え、ええ……そうですわね」
何故か気まずそうに顔を伏せるディーヴァ。何かおかしなことでも言っただろうか?
「ま、地道に活動してるなら、俺から言うことは何もないな。せいぜいイベントを盛り上げてくれ」
「ええ、おまかせ下さい。呼び出してすみませんでしたね」
と、話し終わった俺は、客席のルーンの元へと合流した。
はじめは、王都でやっていたようなおかしなアイドル活動で、この場を荒らすのではと心配していたが、どうやらあの後反省していたようだ。
真面目に全国で活動しているらしく、この村に来たのもその一環。俺がここにいたのは偶然で、俺に何かをしに来たというわけではない。
ならば俺は静観するだけだ。俺の助言で、一が成長するというのは中々に気分がいい。普段は人の話を欠片も効かない連中ばかりを相手にしてるからなぁ。
「あの、お知り合いだったんですか?」
「ああ。王都でちょっとな。まさか、ギルド職員としての醍醐味を、勤務外で味わうことになるとは思ってなかったよ」
「? よく分かりませんが、嬉しそうですね」
相談窓口に来る連中も、アレくらい素直であればどれだけ救われることだろうか。ディーヴァの爪の垢でも煎じて飲んでほしいくらいだ。
ディーヴァは再びステージへと上がり、いよいよ彼女のパフォーマンスが始まるようだ。
気を取り直して、マイクを片手にステージの中央に立つ。アグニスがステージから降りて、ディーヴァに照明が当たった。
観客たちは静まり返り、固唾をのんで彼女パフォーマンスを待つ。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございますわ。実は、この場にも居るある人に出会い、ワタクシのアイドルとしての人生が変わりました。その人への感謝も込めて、ワタクシは今日。精一杯のパフォーマンスをさせていただきます!」
何とも照れくさいことを言ってくれる。
軽快な音楽が流れ始め、マイクを口の前に持ってくると、ディーヴァは大きく息を吸った。
「――――こ……」
バツンッ!
ブレーカーが落ちた。まだ歌詞の一文字しか発していないにも関わらず、機械トラブルとは運が悪い。
辺り一面が真っ暗となって何も見えず、聞こえるのは観客のざわつきと、うろたえるディーヴァの声だけである。
「ちょっと! 一体どういうことですの!? ちゃんと説明を……うわっ!? なんでアンタがここに!? え、ちょっ……待って下さい! まだ歌ってもいないのに…………コラァ! 離せこの糞ガキ……うわわっ!?」
暗闇で全く見えないが、何やらステージ上でドタバタとディーヴァが騒いでいるようだ。
内容からして、誰かステージに上って口論をしているらしい。
おまけに、突如として発生した豪風が辺りを襲った。屋台なども吹き飛ばしそうな、強力な風である。
ブーイングを起こす観客たちをアグニスがなだめていると、その内にステージの照明が復旧した。
「…………あれ? ディーヴァは?」
照明が照らすステージの上。先程までディーヴァが立っていたその場所には、なぜだか誰も居なくなっていた。
慌ててアグニスが舞台裏へと向かい、彼女の姿を探し始める。そしてしばらくして戻ってきたものの、やはりディーヴァは一緒ではないようだ。
『えーっと、大変申し訳ありません。探してみたものの、ディーヴァさんの姿が見当たりません』
再びブーイングの嵐。娯楽に飢える辺境地域の住民たちが、アイドルという普段お目にかからないような人種を前に、お預けを食らったのだから仕方がない。
見つからないからと言って、メインステージのイベントを中止にさせるわけにも行かず、アグニスはすぐさま次のイベントに移行することにしたようだ。
『ディーヴァさんのパフォーマンスは、見つかり次第再開と言うかたちにします! 順番を入れ替えて、次のパフォーマンスは彼ら! リール村のオタクトリオ! なんとバンドでの参加です! メテオラ、リュカン、エクスカリバー!』
楽器を携えて登場した三人組。中央に立てかけられたエクスカリバーに、ドラムを運び込むリュカン。そしてギターを携えるメテオラである。本当に仲が良いなこいつら。
演奏の準備に取り組む中、何故かメテオラがアグニスのマイクをひったくった。
『お前たちには迷惑をかける。さっきの女は体調がすぐれないそうだから拘束……休ませておいた。すまないが、もう戻ってくることはない』
それだけを告げると、メテオラも準備をし始めた。どうやら、先程ステージ上での口論相手はメテオラだったようだ。
ディーヴァの行方を間違いなく知っているのだろうが、誰も彼に深く追求はしなかった。
なぜならば、彼が放った殺気は「コレ以上何も聞くな。殺すぞ」と明確なる台詞を含んでいたからである。
ディーヴァ…………生きていると良いのだが。
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