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第五章 まるで祟りな夏祭り
CASE29 水着コンテスト ディーヴァ ティアル
しおりを挟む水着コンテスト、リール村代表者の二人が会場を賑やかしていた。
パプカは一部のマニア達に、そしてジュリアスは大半の男たちに受けが良い。見た目は美少女と美女であるのだから、中身に目を瞑ればこの結果も当然だろう。
採点は全ての参加者が出揃ってから行われるが、少なくともジュリアスはかなりの高得点を叩き出すはずだ。パプカは……まあ特別賞かなにかを与えておけばいいだろう。
『では続きまして、エントリーナンバースリー! 先程のパフォーマンスは、残念ながら途中退場でしたが、なんとか戻ってきてくれた絶世の美女! 遠く王都からやって来てくれた歌姫! ディーヴァ!』
「皆さん、ごきげんよう……はぁ…………」
アイドルパフォーマンスを途中退場という形で幕を引いた女性。何故か行方不明となっていたディーヴァが、どうやら無事に戻ってきたようだ。
ジュリアスに負けず劣らず……と言うよりも、更にバランスの取れた抜群のプロポーションを、ビキニとパレオで包み込んだ扇情的な姿で登場した。
ただし、その表情は暗い。馬鹿でかいため息を漏らしながら、うなだれつつステージに立つ。
『ご無事で何よりですディーヴァさん! 先程のパフォーマンスでは何処に行ってたんですか?』
「ああ、知り合いに拉致……あ、ではなく! ちょっと野暮用を思い出しまして、ご迷惑をおかけしましたわ」
『そうでしたか! 何はともあれ、コンテストに参加していただいてありがとうございます! パフォーマンスは不完全燃焼だったでしょう? 存分に楽しんで行って下さい!』
アグニスに促されるまま、観客へと手を振ると、その美貌と肉体に男たちの欲望が爆発。会場はさらなる大盛り上がりを見せた。
アイドルパフォーマンスでは味わえなかった感覚に、ディーヴァ気を良くしたのか、暗かった表情を明るくさせて、更に大きく手を振った。
「ああ、コレですわ! ワタクシが望んでいた光景はコレでしたのよ!」
歓声とディーヴァのパフォーマンスが交互に強まっていく。
観客からすれば眼福だし、主催者側からすれば盛り上がるのは大歓迎だろう。
……しかし、なんだ? 観客たちの目がやけに血走っているようにみえるのだが、気のせいだろうか?
「う……うぅん? なぁ、オッサン。なんか息苦しくないか?」
「あん? ああ、そう言えばそんな気も……客が騒ぎすぎて酸欠になってんじゃねぇの?」
いや、確かにそう言う理由もあるのだろうが、この息苦しさはそれだけで説明できるものだろうか?
何やら体も非常にダルい。熱があるみたいに体が重く、目も少し霞むようだ。風邪でもひいたのかもしれない。やはりかき氷を食いすぎたか?
「ありがとう! ありがとう皆様方! ワタクシのためにこんなにも盛り上がってくれ……」
バツンッ!
ブレーカーが落ちたようだ。
再び会場が暗闇に包まれる。何なんだ、ちゃんと管理しておけよ主催者側。
「なんっ……またかこの糞ガキ! 今度という今度は……え、あ、あの方に? いや、それはちょ…………うわーん!」
暗闇のステージから聞こえるディーヴァの泣き声。
そして彼女の泣き声がやむと、ステージの照明がもとに戻り、前と同じようにその場にディーヴァの姿が無くなっていた。
かわりに、何故かメテオラがステージの中心で、マイクを片手に立っていた。
「あー……ディーヴァは体調不良のため欠席する。もう戻ってこない」
アイドルパフォーマンスの時と同じことを言っていた。
やはり、ステージ上でディーヴァともめていたのはメテオラだったのだろう。あの二人は知り合いなのだろうか? 友人として付き合うには、性格が違いすぎると思うが。
「ふざけんな! さっさとさっきの姉ちゃんを出せ!」
「そうだそうだ! 俺はボインを見に来たんだぞ!」
「野郎はとっとと裏に引っ込め!」
いくらメテオラの言葉とは言え、最高潮に盛り上がりを見せている観客たちは、流石に彼の説明では納得できない。
口々に罵声をメテオラへと浴びせかけていた。命知らずな奴らである。
「やかましい!!」
「「すいませんでした!!」」」
鶴の一声であった。
メテオラの大迫力の一声は、罵声を浴びせかけていた男たちを、すぐさま土下座へと移行させた。もはや彼に文句をつける人間はいないだろう。
* *
ステージからディーヴァが消え去り、彼女は残念ながら不戦敗となってしまった。
メテオラも大人しくステージから降りて、ひとまずこの一件は解決を見た。
不思議なことに、ディーヴァがいなくなったことによって、先程までの息苦しさと気だるさが嘘のように消え去った。
会場の盛り上がりが解消されたからだろうか? なんとも不思議な症状である。
『えーっと、気を取り直してエントリーナンバーフォー! …………って、何ぃ!? マジか!?』
アグニスが司会の立場を忘れ、大声を上げた。
その表情は汗にまみれ、かなり焦っているように見える。司会進行のための予定表を片手に持って、それを見たことが原因のようだ。
『あー……いや、とにかく紹介しておきましょう! 各地を転々とめぐり、数々の難事件を解決してきた新進気鋭のパーティー! 飛び入り参加枠の……えっと、コースケハーレム! ティアル・ヴォルフ・ルートディッヒ!』
「みんなー! よろしくお願いしますニャー!」
「「「!?」」」
会場の空気が凍りついた。もちろん、それは俺も同様である。
その理由は、この場にいる誰もが知る、とある人物に起因する。
キサラギ・コースケ
悪名高い、他称『コースケハーレム』をパーティーとして、全国各地を周りながら厄介な事件を解決する人物である。
だがしかし、その厄介な事件というものは、召喚者であるコースケの体質から発生するものであり、冒険者やギルドの人間たちからは『歩くマッチポンプ』と評されている。
よって、冒険者からは自分たちのクエストを食い散らかす疫病神だと。ギルド職員からは、後始末を押し付けてくる厄介者だと認識されている。
そんな彼が引き連れる、コースケハーレムと呼ばれる美少女軍団。各地の事件を解決するたびに加入する、有能で個性豊かな少女たちだ。
その一人が、今ステージに立っているティアルと言う猫耳美少女である。
丁寧にも語尾に「ニャア」とつけてキャラを立たせるその少女がこの場にいるということは、それすなわち、コースケがこの近くに来ているということなのだ。
「ギルド権限で要請します! 警戒レベルを最大に上げて、奴の襲来に備えろ!」
俺の大声に、すかさず反応する客席の冒険者たち。
どこから取り出したのか、各々の武器を構えて、俺の言うとおりにコースケの襲来に備える。
普段は諍いが絶えず、喧嘩もしょっちゅうな奴らであるが、コースケが訪れるとなると、驚くほど一致団結してくれる。
何せ、冒険者の食い扶持であるクエストが荒らされるのだから切実だ。しかも、この村にいる連中は、前の街から非難してきた奴らで殆どが占められている。実体験があるのだから、警戒するのも当然だろう。
「ちょいちょい、支部長さん?」
「うわっ! びっくりした!?」
「いやぁ、ウチのご主人様がご迷惑をおかけしますニャア」
いつの間にか背後に回っていたティアルが、俺の袖を引っ張った。
眼の前に居るのは、金髪猫耳美少女ティアル。おまけに今は、フリフリのビキニを着込んだ目のやり場に困る姿。
俺は目線をそらしつつ、彼女の言葉に少しばかりの違和感を覚えた。
「ご主人様? え、なに? あいつってそんな趣味があったの?」
「いえいえ。ウチは元奴隷ですからニャ。こちらの方がしっくり来るといいますか、癖みたいなものなのです」
奴隷制度。誤解のないように始めに言っておくが、この世界にそんなシステムは存在しない。
何百年、何千年も前からこの世界にやって来ていた、召喚者や転生者。現代日本の常識的な倫理観念を持つ彼らが、この世界にその考え方根付かせてきたのだから、この世界における倫理観念は先進国レベルである。
よって、どのような凶悪犯罪集団でさえ、奴隷売買という行為に及んでいることは極端に少ない。
だが、召喚者や転生者の中には、「奴隷使い」と言う称号を積極的に使いたがる中二病的変態が、たまにいるのである。
衣食住を保証され、給料をもらい、行動の自由がある。どの辺りが奴隷なのかはわからないのだが、それで彼らが満足するのなら……まあ良いんじゃないかな。
恐らく、ティアルもそのような奴らに囲われていた人間の一人なのだろう。奴隷というのも、あくまで名目上の話である。
「ま、まあその話は置いておいて。ティアル、やっぱりコースケのやつはこの村に?」
「うんニャ? 今日はウチともう一人の仲間と一緒に、お祭りに遊びに来ただけですニャ。ご主人様や他の仲間は、少し離れたダンジョンを攻略中ですニャア」
ティアルのその言葉に、限界まで凝り固まっていた体の緊張が溶けた。
コースケがこの村にいないとなれば、マッチポンプが起きることはない。コースケハーレムがいようとも、本人がいなければ、トラブルを巻き起こす特異体質は発動しないのである。
俺と同じように緊張を解いた冒険者たち。全く、コレほど右往左往させるとは、キサラギ・コースケ。凄まじい影響力の持ち主だ。迷惑極まりない。
「あ、でもダンジョン攻略が終われば、みんなと一緒にこの村で合流する手はずになっていますニャ」
「なん……だと……?」
どのみち、トラブルは避けられそうにないようだ。
幸か不幸か、このあたりのダンジョンは数日で攻略できるほど難易度は低くない。猶予期間があるのは、ありがたい話だ。
…………ヤバイな、今のうちに復興予算を組んで置かないと。
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