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その後

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 るなの自殺によってこの学校のいじめの実態が公になり、その日のトップニュースとなった。
るなの両親は、るなのいじめに関して何も知らなかったらしく、るなが行った配信を何度も何度も見返していた。私とたくまは、るなの両親に、葬儀で久しぶりに会うことになった。るなは自分の両親は自分なんか気にしていないと言っていたが、そんなことはなかった。るなの最後の言葉を必死に読み取って、葬儀の次の日には頼れるものはすべて頼って、いじめっ子たちを訴え、名家の子息ばかりだったので起訴まではいかなかったものの、その子たちの将来を断つことに成功した。るなが大事にしたことにより、全国の学校でいじめ調査が抜き打ちで行われた。すると、報告されていない、いじめが数多く浮上した。そして、生徒がいじめなどの悩み事を、先生や親に相談しにくい状況になっていることも分かったのだ。スクールカウンセラーがあまり広まっていないことや、カウンセラー自体の少なさ、先生方の注意不足、話の聞き方の雑さ、いじめを隠蔽している学校の多さが問題として挙げられるようになった。
るなの自殺から五年が経とうとしている今日までで、学校の仕組みは大きく変わった。不定期でのいじめ調査や、教師たちへのいじめに対する対応の徹底指導や、教員資格認定試験での心理科目の追加、スクールカウンセラーの義務化が認められた。これによって、どの先生でもある程度の相談は聞けるようになり、教師が公認心理士の資格を取り教師とスクールカウンセラーのどちらもできる人が増えた。私もその一人だ。そして、今日私たちは国会の前でとある報告を待っていた。
すると、紙を持った人たちが出てきた。『可決』大きく広げられた紙に書かれた二文字。嬉しくて涙がこぼれてしまった。今日、るなの願いがかなった。そう、いじめが法の下で裁けるようになったのだ。可決された内容とは、『いじめ(暴言、暴力)により被害者の日常において何らかの支障をきたした場合、被疑者は相応の罰を受けなければならない。』るなが飛び降りたあの日から、るなの願いはみんなの願いに変わり、そして叶ったのだ。るなも、ありさも、これで少しはゆっくり休めるだろう。
ちなみに私は教育実習で来たこの学校で勤務している。あの時はこの学校が嫌だったが今ではるなとの思い出の場所で働けて嬉しいと思う。るなに報告に行く前に、学校へ向かった。私は廊下ですれ違う生徒たちに挨拶をしながら、いつもの時間に屋上へ向かう。扉を開けると今でも「あー!もえちゃんだ~!」と言う声が聞こえてきそうだった。
るなの墓参りに行くころにはだいぶ日が傾いていた。るなには伝えたいことがたくさんあった。
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