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CLOSING act
ENCORE-1 crafty twins
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一〇年後。
日本 枝依市──枝依中央ターミナル駅前広場。
「サムくん、好きです! 付き合ってください!」
「私も! 付き合ってくださいっ」
「私もォ!」
「私もですぅ、サム先輩!」
いくつものそんな黄色い女声は、中高生のもの。
「Oh my……appreciate it alot、Signorinaたち」
爽やかという言葉がよく似合う笑顔を、くるりと彼女らへ向ける彼──サミュエル柳田・一六才。地毛のブロンド色の頭髪が、太陽光を眩しく跳ね返す。
「ではまず、どうぞこちらを」
ポンポンポン、とサミュエルの手から次々に飛び出すは、色鮮やかな生花の数々。それらを一輪ずつ、頬を染め黄色い声を上げる彼女らへご丁寧に手渡していく。
「とっても目映くて可憐なSignorinaたち。ボクもみんなのこと大好きだよ。だから今からそこのカフェで、お茶でもいかが?」
果ての、ウィンク。キャーアと上がる、若すぎる女声。
「こら、サム!」
「んぐぁ!」
グン、と突如その襟首を後方に引かれる、サミュエル。キザ語を話す顎は不格好にもガクンと上向き、袖口に忍ばせていた生花の数々は、その反動でバラバラと広場のレンガ上へ落ちた。
「相っ変わらず、聞いてらんないような歯の浮くうわ言ね」
「え、エニー……」
首の後ろをさすりながら振り返れば、同じブロンド色の柔らかな長髪をばさりと翻した少女──エノーラ柳田・一六才が居た。長髪の先端が腰辺りで落ち着くと、サミュエルの襟首を、ぱ、と離し、黄色い女声陣へと口角を上げる。
「Hi! 今日は来てくれてありがとう、sweet Angels」
「ちょっとォ、サムくんと話してんだけど」
「そーだよ邪魔邪魔」
冷たくそうして邪険にされるエノーラは、しかし笑みを貼ったまま、むしろ更に「ふふ」とそれを深めて。
「あぁ、ごめんなさい。アタシとサム、まだ路上公演中なの。でね、もしAngelsがサムのファンなら──」
高校の制服の上着から取り出される、人数分の折紙。それはすべて、蝶の形に折られている。
「──まずはアタシたちの芸に、その声援をくださらない?」
フゥと吹きかけた一息は、手中の蝶へ向けられた。そっとエノーラが手を離せば、折紙の蝶は中空を舞い上がり、羽ばたいて、歓声を上向ける彼女らへ一人一頭の配分で降り立ち、落ち着く。
「アタシはエニー。サムの演芸相方で、双子の妹」
制服には似つかわしくない、八頭身ともいえる神経質で上質な躯体線。
深い灰緑色の勝ち気なまなざし。
高い鼻筋、キメの細かい白い肌。
上がる口角の間の艶やかで血色の良い肉厚の唇。
「その蝶はアタシの名刺。サムみたいな悪い悪魔の言葉からAngelsをお守りするのがアタシの役目なの。以後、お見知り置きを」
バチン、と飛ばされたエノーラのウィンクは、彼女らの心臓をくまなく大きく撃ち抜いたようで。
「記載してあるSNSのフォローも、よろしくね」
ヒラリと手を振り、彼女らへ背を向けたエノーラは、力強くサミュエルの左腕を引き、彼女らから遠ざかる。
「キャーア! エニー『さま』ぁ!」
黄色い女声を背中で浴びて、エノーラは満足そうに鼻を高くする。一方で、ファンを横取られ、渋面を作るサミュエル。
「ちぇ、全部持っていきやがって。エニーのバカ」
「タブラカシ禁止って言ったばっかりなのに、早速破ってるサムが悪い」
ピシャリと冷淡に突き放すエノーラは、彼女らから遠ざかった適当な時点でサミュエルと対面した。
「女心弄ぶのは許さないって、アタシ、言ったじゃない」
「弄んでなんていないよう。みぃんながボクのこと好きって言ってくれるから、ボクはそれに応えたいだけ」
「ふざけないで。今の娘たち、きっとサムの『特別な一人』になりたいんだよ? その他大勢にされるなんて、女の矜持踏みつけてんのと一緒だから」
「なぁんか口煩くなったよなぁ、エニー」
「大体ね、全体的にヨッシーに言い方がそっくりなのが一番ダメ。すんごく腹立たしい。少しはオリジナリティを持ちなさいよね」
「んなこと言ったって。昔からヨッシーってこんな感じだったろ?」
「ヨッシーは女の子たちをタブラカしたりしないもん」
「ええー? そうだったかなぁ」
「そうでしたァ。一人にしか興味ありませんでしたァ」
「ていうか。もう少ししたら空港行かなくちゃ。到着何時?」
「えっと、一七時半過──」「エニーさま!」
サミュエルとエノーラの言い合いの最中、突如かけられた雄々しい一声。ギクリなエノーラと、キョトンのサミュエルが、そちらを振り返る。
「は、Hi……」
ぎこちなさを隠しきれない笑顔を、雄々しい一声を放った彼らへ向けるエノーラ。そそくさとサミュエルの背に半身を隠す。
「エニーさまっ、今日こそ我々『エニーさま親衛隊』が、責任をもってご自宅までお送りいたします!」
「し、親衛隊?!」
自らの背に隠れているエノーラを振り返り問う、サミュエル。
雄々しい声を発するは、十数名に及ぶ非公式のエノーラ専属親衛隊の面々。躯体線の厚み薄さ、身長の長短、汗や熱量のまちまちな男性陣の集合体は、サミュエルとエノーラの通う高校内で自発的に発足され活動しているという。
目的は主に、エノーラの護衛や公演応援。しかし公私の境が曖昧なことが増えつつあることで、エノーラは頭を悩ませ始めていた。
「ごっ、困る。まだアタシたち、路上公演の最中だし、お、終わったらまっすぐ、行くとこがあるんだからっ」
「しかし!」
「我々は、集まるべくして集まった親衛隊です!」
「エニーさまのお美しさや完璧さを、このターミナル駅前広場から世界へと発信する役割もございます!」
暑苦しい声の応酬に、しり込みをしてしまうエノーラ。威圧的で一方的に来られるのは、やはり苦手のままで。
「へぇええー。こォんなにぞろぞろ男ばっか集まっちゃって。みんな、ボクの妹大好きかよ」
首を傾ぎ、不敵に笑んでいるサミュエルが、言葉を大きく挟む。
「さ、サムお兄さまっ」
明らかに息を呑んだ、親衛隊の面々。
「ていうか。エニーを困らせるようなことをボクの腕が届く範囲でやる意味、わかってんだろーね?」
「我々はッ、エニーさまがお困りになるようなことは、いたしません!」
「誓っていたしません!」
広場に高く響く、雄々しいそれら。
「あーあー立派な営業妨害だよ、既に『それ』が。現にこうしてボクの後ろに隠れちゃうくらいエニーは困ってる」
腰に手を当て、やれやれを醸すサミュエル。その背後から、わずかに覗き出でるエノーラ。
「親衛隊自体はさておき、これじゃあ『活動内容に難アリ』だなぁ。早くも解散かもねぇ、エニー?」
「そっ、そんな! エニーさまぁ?!」
「そーいう大きい声とか駆け付け方が、過剰なつきまといになってきちゃってっからね? これで退かないまたは続くとなると、公的措置なんかになってきちゃうよ? いい?」
「ちょ、サム、その辺で」
腕を弱く引くエノーラ。「あのねみんな」と眉間を寄せて、改めて前へ出る。
「親衛隊は、別にいい。でも、迷惑そうな顔をする人が一人も出ないようにやって、アタシも含め。世間が持つアタシへの好感度が下がるのはホントにイヤ、迷惑、損害」
ズキリとする、親衛隊の面々。
「アタシ、生きるために信念を持って常に努力し続ける人が好きなの。だから、学生の本分を忘れるような学年八〇番より下の人は、そもそも活動を認めないことにするから」
バサリ、エノーラのブロンドヘアが翻る。
「だから、ちょっとでもアタシの好感度もあなたたちの成績も下がったら、今後アタシの目の前に現れるのを禁止にする」
いいよね? の睨みが光ると、「は、はいっ!」
「承知いたしました!」と裏返った敬礼が呼応した。始終を遠巻きに見ていた黄色い女声エンジェルスは、「エニーさま、ステキ」とハートマークをぷかぷか。
「ハイハイ、じゃあこっからはボクらの路上観覧の時間だよー。まさか観ていかないなんて不義理はしないよねぇ? 『エニーさま親衛隊』なんだから」
「は、ハイッ! サムお兄さま!」
「うんうん! じゃあCome on guys!」
ぞろぞろと引き連れ、広場の端へ向かうサミュエルとエノーラ。
「まったく! 誰彼構わずあんな挑発しないで。サムが危なくなるでしょ?」
「あのくらい言ってやんなきゃわかんないだろ、こーゆーヤツラって。今後もし、誰かがエニーのブロンドの長い髪を一本でも拾ったら、ボクの右腕がソイツの弛んだミゾオチに風穴空けてやるからね」
「はたしてそのご自慢の右腕は、どこかのミゾオチに風穴を空けたこと、一度でもあるんでしょうか?」
「あーもう細かいことばっかり! エニーの高嶺の花気取りのがボクは問題だと思うけど?!」
「別に高嶺の花気取りしてるわけじゃないもん。妥協ってのが嫌いなだけだもん。サムはケンカ吹っ掛けられたら、すぐアクロバットとマジック悪用して逃げちゃうじゃない」
「逃げてない、かわしてんの。しかもケンカじゃなくて、一方的に因縁つけられてるだけ」
「どうだか! 小さいときみたいに、その頭脳を遺憾なく発揮して口で負かせばいいのに」
「口使おうとしても聞いてもらえないんだ。みんな力で捩じ伏せたいから」
「あーあ、マジックを『悪用』してるってリョーちんが知ったら!」
「や、やめろよっ。リョーちんが一番怖い! あのデコピンマジで痛いんだからな!」
「帰ってきた蜜葉にも言いつけちゃおーっと」
「ズリーぞ。守ってやっただろ?!」
「フフ、頼んでないもォん」
くるりと振り返る、サミュエルとエノーラ。どこからともなく二人が出したクラッカーがスパパンと弾ける。
「さあ、サムエニの路上公演、再開するよ!」
「ここにいる全員が、片隅から世界が美しく輝く様を目撃することになるでしょう!」
意味あり気に深く笑んでだサミュエルとエノーラは、今日も蒼天に高く抜けるほどの喝采を戴く。
日本 枝依市──枝依中央ターミナル駅前広場。
「サムくん、好きです! 付き合ってください!」
「私も! 付き合ってくださいっ」
「私もォ!」
「私もですぅ、サム先輩!」
いくつものそんな黄色い女声は、中高生のもの。
「Oh my……appreciate it alot、Signorinaたち」
爽やかという言葉がよく似合う笑顔を、くるりと彼女らへ向ける彼──サミュエル柳田・一六才。地毛のブロンド色の頭髪が、太陽光を眩しく跳ね返す。
「ではまず、どうぞこちらを」
ポンポンポン、とサミュエルの手から次々に飛び出すは、色鮮やかな生花の数々。それらを一輪ずつ、頬を染め黄色い声を上げる彼女らへご丁寧に手渡していく。
「とっても目映くて可憐なSignorinaたち。ボクもみんなのこと大好きだよ。だから今からそこのカフェで、お茶でもいかが?」
果ての、ウィンク。キャーアと上がる、若すぎる女声。
「こら、サム!」
「んぐぁ!」
グン、と突如その襟首を後方に引かれる、サミュエル。キザ語を話す顎は不格好にもガクンと上向き、袖口に忍ばせていた生花の数々は、その反動でバラバラと広場のレンガ上へ落ちた。
「相っ変わらず、聞いてらんないような歯の浮くうわ言ね」
「え、エニー……」
首の後ろをさすりながら振り返れば、同じブロンド色の柔らかな長髪をばさりと翻した少女──エノーラ柳田・一六才が居た。長髪の先端が腰辺りで落ち着くと、サミュエルの襟首を、ぱ、と離し、黄色い女声陣へと口角を上げる。
「Hi! 今日は来てくれてありがとう、sweet Angels」
「ちょっとォ、サムくんと話してんだけど」
「そーだよ邪魔邪魔」
冷たくそうして邪険にされるエノーラは、しかし笑みを貼ったまま、むしろ更に「ふふ」とそれを深めて。
「あぁ、ごめんなさい。アタシとサム、まだ路上公演中なの。でね、もしAngelsがサムのファンなら──」
高校の制服の上着から取り出される、人数分の折紙。それはすべて、蝶の形に折られている。
「──まずはアタシたちの芸に、その声援をくださらない?」
フゥと吹きかけた一息は、手中の蝶へ向けられた。そっとエノーラが手を離せば、折紙の蝶は中空を舞い上がり、羽ばたいて、歓声を上向ける彼女らへ一人一頭の配分で降り立ち、落ち着く。
「アタシはエニー。サムの演芸相方で、双子の妹」
制服には似つかわしくない、八頭身ともいえる神経質で上質な躯体線。
深い灰緑色の勝ち気なまなざし。
高い鼻筋、キメの細かい白い肌。
上がる口角の間の艶やかで血色の良い肉厚の唇。
「その蝶はアタシの名刺。サムみたいな悪い悪魔の言葉からAngelsをお守りするのがアタシの役目なの。以後、お見知り置きを」
バチン、と飛ばされたエノーラのウィンクは、彼女らの心臓をくまなく大きく撃ち抜いたようで。
「記載してあるSNSのフォローも、よろしくね」
ヒラリと手を振り、彼女らへ背を向けたエノーラは、力強くサミュエルの左腕を引き、彼女らから遠ざかる。
「キャーア! エニー『さま』ぁ!」
黄色い女声を背中で浴びて、エノーラは満足そうに鼻を高くする。一方で、ファンを横取られ、渋面を作るサミュエル。
「ちぇ、全部持っていきやがって。エニーのバカ」
「タブラカシ禁止って言ったばっかりなのに、早速破ってるサムが悪い」
ピシャリと冷淡に突き放すエノーラは、彼女らから遠ざかった適当な時点でサミュエルと対面した。
「女心弄ぶのは許さないって、アタシ、言ったじゃない」
「弄んでなんていないよう。みぃんながボクのこと好きって言ってくれるから、ボクはそれに応えたいだけ」
「ふざけないで。今の娘たち、きっとサムの『特別な一人』になりたいんだよ? その他大勢にされるなんて、女の矜持踏みつけてんのと一緒だから」
「なぁんか口煩くなったよなぁ、エニー」
「大体ね、全体的にヨッシーに言い方がそっくりなのが一番ダメ。すんごく腹立たしい。少しはオリジナリティを持ちなさいよね」
「んなこと言ったって。昔からヨッシーってこんな感じだったろ?」
「ヨッシーは女の子たちをタブラカしたりしないもん」
「ええー? そうだったかなぁ」
「そうでしたァ。一人にしか興味ありませんでしたァ」
「ていうか。もう少ししたら空港行かなくちゃ。到着何時?」
「えっと、一七時半過──」「エニーさま!」
サミュエルとエノーラの言い合いの最中、突如かけられた雄々しい一声。ギクリなエノーラと、キョトンのサミュエルが、そちらを振り返る。
「は、Hi……」
ぎこちなさを隠しきれない笑顔を、雄々しい一声を放った彼らへ向けるエノーラ。そそくさとサミュエルの背に半身を隠す。
「エニーさまっ、今日こそ我々『エニーさま親衛隊』が、責任をもってご自宅までお送りいたします!」
「し、親衛隊?!」
自らの背に隠れているエノーラを振り返り問う、サミュエル。
雄々しい声を発するは、十数名に及ぶ非公式のエノーラ専属親衛隊の面々。躯体線の厚み薄さ、身長の長短、汗や熱量のまちまちな男性陣の集合体は、サミュエルとエノーラの通う高校内で自発的に発足され活動しているという。
目的は主に、エノーラの護衛や公演応援。しかし公私の境が曖昧なことが増えつつあることで、エノーラは頭を悩ませ始めていた。
「ごっ、困る。まだアタシたち、路上公演の最中だし、お、終わったらまっすぐ、行くとこがあるんだからっ」
「しかし!」
「我々は、集まるべくして集まった親衛隊です!」
「エニーさまのお美しさや完璧さを、このターミナル駅前広場から世界へと発信する役割もございます!」
暑苦しい声の応酬に、しり込みをしてしまうエノーラ。威圧的で一方的に来られるのは、やはり苦手のままで。
「へぇええー。こォんなにぞろぞろ男ばっか集まっちゃって。みんな、ボクの妹大好きかよ」
首を傾ぎ、不敵に笑んでいるサミュエルが、言葉を大きく挟む。
「さ、サムお兄さまっ」
明らかに息を呑んだ、親衛隊の面々。
「ていうか。エニーを困らせるようなことをボクの腕が届く範囲でやる意味、わかってんだろーね?」
「我々はッ、エニーさまがお困りになるようなことは、いたしません!」
「誓っていたしません!」
広場に高く響く、雄々しいそれら。
「あーあー立派な営業妨害だよ、既に『それ』が。現にこうしてボクの後ろに隠れちゃうくらいエニーは困ってる」
腰に手を当て、やれやれを醸すサミュエル。その背後から、わずかに覗き出でるエノーラ。
「親衛隊自体はさておき、これじゃあ『活動内容に難アリ』だなぁ。早くも解散かもねぇ、エニー?」
「そっ、そんな! エニーさまぁ?!」
「そーいう大きい声とか駆け付け方が、過剰なつきまといになってきちゃってっからね? これで退かないまたは続くとなると、公的措置なんかになってきちゃうよ? いい?」
「ちょ、サム、その辺で」
腕を弱く引くエノーラ。「あのねみんな」と眉間を寄せて、改めて前へ出る。
「親衛隊は、別にいい。でも、迷惑そうな顔をする人が一人も出ないようにやって、アタシも含め。世間が持つアタシへの好感度が下がるのはホントにイヤ、迷惑、損害」
ズキリとする、親衛隊の面々。
「アタシ、生きるために信念を持って常に努力し続ける人が好きなの。だから、学生の本分を忘れるような学年八〇番より下の人は、そもそも活動を認めないことにするから」
バサリ、エノーラのブロンドヘアが翻る。
「だから、ちょっとでもアタシの好感度もあなたたちの成績も下がったら、今後アタシの目の前に現れるのを禁止にする」
いいよね? の睨みが光ると、「は、はいっ!」
「承知いたしました!」と裏返った敬礼が呼応した。始終を遠巻きに見ていた黄色い女声エンジェルスは、「エニーさま、ステキ」とハートマークをぷかぷか。
「ハイハイ、じゃあこっからはボクらの路上観覧の時間だよー。まさか観ていかないなんて不義理はしないよねぇ? 『エニーさま親衛隊』なんだから」
「は、ハイッ! サムお兄さま!」
「うんうん! じゃあCome on guys!」
ぞろぞろと引き連れ、広場の端へ向かうサミュエルとエノーラ。
「まったく! 誰彼構わずあんな挑発しないで。サムが危なくなるでしょ?」
「あのくらい言ってやんなきゃわかんないだろ、こーゆーヤツラって。今後もし、誰かがエニーのブロンドの長い髪を一本でも拾ったら、ボクの右腕がソイツの弛んだミゾオチに風穴空けてやるからね」
「はたしてそのご自慢の右腕は、どこかのミゾオチに風穴を空けたこと、一度でもあるんでしょうか?」
「あーもう細かいことばっかり! エニーの高嶺の花気取りのがボクは問題だと思うけど?!」
「別に高嶺の花気取りしてるわけじゃないもん。妥協ってのが嫌いなだけだもん。サムはケンカ吹っ掛けられたら、すぐアクロバットとマジック悪用して逃げちゃうじゃない」
「逃げてない、かわしてんの。しかもケンカじゃなくて、一方的に因縁つけられてるだけ」
「どうだか! 小さいときみたいに、その頭脳を遺憾なく発揮して口で負かせばいいのに」
「口使おうとしても聞いてもらえないんだ。みんな力で捩じ伏せたいから」
「あーあ、マジックを『悪用』してるってリョーちんが知ったら!」
「や、やめろよっ。リョーちんが一番怖い! あのデコピンマジで痛いんだからな!」
「帰ってきた蜜葉にも言いつけちゃおーっと」
「ズリーぞ。守ってやっただろ?!」
「フフ、頼んでないもォん」
くるりと振り返る、サミュエルとエノーラ。どこからともなく二人が出したクラッカーがスパパンと弾ける。
「さあ、サムエニの路上公演、再開するよ!」
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