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新たな生活
ふたりの四夫人
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お茶会も無事終わり、普通の生活に戻れるんだと思ったのは何日前だろう・・・。
普通の生活とはいってもこの世界での、女官としての生活だけど。
当然、まだ何かの拍子に朝起きたら、自分の住んでた家のマンションのベッドの上にいるんじゃないかって期待するけど。
まあ、ないんだけどね。戻れてること。
といっても、明蘭た春麗と一緒にいるいまの生活もなんだかんだ言って嫌いではないんだよね。
まあ、高貴な方々に振り回されなければ、だけど。
「本当に、茉莉の作る歌は不思議ね。もっと聞かせて欲しいわ」
「これで楽譜は読めないっていうんですもの、不思議な子よね」
にこにこと笑いながら、こちらを覗き込んでくる四夫人ふたりにあいまいに笑う。
「あ、あの・・・。近いです、徳妃さま。賢妃さま」
そう、近いんだよ。おふたりとも。
いつもの演奏を頼まれるときもさ、たかが下級女官と皇后のいない後宮じゃ一番位の高い四夫人ではありえないくらいの距離で声をかけられたりしているんだけど・・・。
きょうはね、何を思ったのかお二人の座る卓でお茶を飲むように言われた。
断りたいって全身で訴えたけど、四夫人おふたりは当然笑顔で気づかないふりされたし。
おふたり付きの女官のお姉さんたちには、「まさか断らねぇよな?」という視線をもらい・・・。
そんな圧力に、横に並ぶ明蘭たちからは無言で背中を押されて、前へだされた。
「ふふ。本当に、茉莉は純粋なのね」
おかしそうに笑って、安賢妃がこちらの顔を覗き込む。
言葉の意味が分からなくて首を傾げると、今度は彩徳妃がおもしろそうに笑う。
「賢妃がいいたいのは、わたくしたちに媚を売らないのねってことよ」
そう言って、二人して私をみてくる。
なにを言って欲しいの?おねーさまがた。
正直、私はここでの権力なんて全く興味がないし。
「・・・媚、売ったほうがよろしいですか?」
なんて、率直に聞いてみたり・・・・。
私の後ろで、息をのむ楽局房の姉女官。
そんで、ため息こそ聞こえないもののめっちゃ呆れた視線をくれてるのがわかる。
反対に、目の前にいる妃ふたりは声を立てた笑った。
「あははっ、まさか聞かれるとは思わなかったわ」
「ふふ。確かに、素直にそう聞かれるとは」
あれ?もしかしてだめだった?
そうやって、権力をほしがる人に群がられる立場だから、聞いたほうが早いかなって思ったんだけど。
まあ、怒ってなさそうだし、正解じゃないけど不正解でもないよね?
「そうね、率直に言ってもらえたほうがいいわね。下心を隠してすがり寄ってくる人は多いもの」
「あなたは、権力がほしいかしら?」
笑って聞いているけど、応え如何によってはいまよりひどい扱いに変わるだろう。
べつに、四夫人のお気に入りって立場がいいわけじゃないよ。
でも楽局で、明蘭と春麗と暮らすのは好きだからここで獄中行きとかはいやだ。
だけど、徳妃さまの質問にはすぐ応えられるな。
「いいえ、せっかくお聞きいただきましたけど、いりません」
すんなりと首を振ってこたえると、さすがに驚いたように目を丸くされた。
「今いただいている御恩とご縁だけでも十分すぎるほどです」
「・・・妃賓になりたいとは、思いませんの?」
さすがに、納得しきれないようで賢妃が聞き返してきた。
まあ、普通そうだよなー。妃って位になるだけで、個室もらえるもんな。
けど、たとえ最下級の妃賓になってもそれは、それで権力争いに巻き込まれるんだよな。
女性って、いつの時代いつの国でも体外派閥作る生き物だし・・・。
「今の暮らしで、十分満足致しております」
むしろ、全力で権力から遠ざかりたい方針です。はい。
「まあ、じゃあ本心から媚を売っていないってことかしら?」
呆れた、というように徳妃に聞かれる。
「まあ、そうなりますねぇ」
さっきから本音で結構応えてるんですが、なんで呆れるんですか?徳妃さま。
あとから、明蘭に言われたのは四夫人ふたりに気にいられている私は、ちょっとしたきっかけとコネがあればすぐにでも八十一御妻くらいにはなれるだろうってことでした。
誠に、遺憾です。
もし、そうすすめられても絶対断るし、もしそうなったら明蘭たちを進めようと思います。
普通の生活とはいってもこの世界での、女官としての生活だけど。
当然、まだ何かの拍子に朝起きたら、自分の住んでた家のマンションのベッドの上にいるんじゃないかって期待するけど。
まあ、ないんだけどね。戻れてること。
といっても、明蘭た春麗と一緒にいるいまの生活もなんだかんだ言って嫌いではないんだよね。
まあ、高貴な方々に振り回されなければ、だけど。
「本当に、茉莉の作る歌は不思議ね。もっと聞かせて欲しいわ」
「これで楽譜は読めないっていうんですもの、不思議な子よね」
にこにこと笑いながら、こちらを覗き込んでくる四夫人ふたりにあいまいに笑う。
「あ、あの・・・。近いです、徳妃さま。賢妃さま」
そう、近いんだよ。おふたりとも。
いつもの演奏を頼まれるときもさ、たかが下級女官と皇后のいない後宮じゃ一番位の高い四夫人ではありえないくらいの距離で声をかけられたりしているんだけど・・・。
きょうはね、何を思ったのかお二人の座る卓でお茶を飲むように言われた。
断りたいって全身で訴えたけど、四夫人おふたりは当然笑顔で気づかないふりされたし。
おふたり付きの女官のお姉さんたちには、「まさか断らねぇよな?」という視線をもらい・・・。
そんな圧力に、横に並ぶ明蘭たちからは無言で背中を押されて、前へだされた。
「ふふ。本当に、茉莉は純粋なのね」
おかしそうに笑って、安賢妃がこちらの顔を覗き込む。
言葉の意味が分からなくて首を傾げると、今度は彩徳妃がおもしろそうに笑う。
「賢妃がいいたいのは、わたくしたちに媚を売らないのねってことよ」
そう言って、二人して私をみてくる。
なにを言って欲しいの?おねーさまがた。
正直、私はここでの権力なんて全く興味がないし。
「・・・媚、売ったほうがよろしいですか?」
なんて、率直に聞いてみたり・・・・。
私の後ろで、息をのむ楽局房の姉女官。
そんで、ため息こそ聞こえないもののめっちゃ呆れた視線をくれてるのがわかる。
反対に、目の前にいる妃ふたりは声を立てた笑った。
「あははっ、まさか聞かれるとは思わなかったわ」
「ふふ。確かに、素直にそう聞かれるとは」
あれ?もしかしてだめだった?
そうやって、権力をほしがる人に群がられる立場だから、聞いたほうが早いかなって思ったんだけど。
まあ、怒ってなさそうだし、正解じゃないけど不正解でもないよね?
「そうね、率直に言ってもらえたほうがいいわね。下心を隠してすがり寄ってくる人は多いもの」
「あなたは、権力がほしいかしら?」
笑って聞いているけど、応え如何によってはいまよりひどい扱いに変わるだろう。
べつに、四夫人のお気に入りって立場がいいわけじゃないよ。
でも楽局で、明蘭と春麗と暮らすのは好きだからここで獄中行きとかはいやだ。
だけど、徳妃さまの質問にはすぐ応えられるな。
「いいえ、せっかくお聞きいただきましたけど、いりません」
すんなりと首を振ってこたえると、さすがに驚いたように目を丸くされた。
「今いただいている御恩とご縁だけでも十分すぎるほどです」
「・・・妃賓になりたいとは、思いませんの?」
さすがに、納得しきれないようで賢妃が聞き返してきた。
まあ、普通そうだよなー。妃って位になるだけで、個室もらえるもんな。
けど、たとえ最下級の妃賓になってもそれは、それで権力争いに巻き込まれるんだよな。
女性って、いつの時代いつの国でも体外派閥作る生き物だし・・・。
「今の暮らしで、十分満足致しております」
むしろ、全力で権力から遠ざかりたい方針です。はい。
「まあ、じゃあ本心から媚を売っていないってことかしら?」
呆れた、というように徳妃に聞かれる。
「まあ、そうなりますねぇ」
さっきから本音で結構応えてるんですが、なんで呆れるんですか?徳妃さま。
あとから、明蘭に言われたのは四夫人ふたりに気にいられている私は、ちょっとしたきっかけとコネがあればすぐにでも八十一御妻くらいにはなれるだろうってことでした。
誠に、遺憾です。
もし、そうすすめられても絶対断るし、もしそうなったら明蘭たちを進めようと思います。
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