あのエピローグのつづきから 〜勇者殺しの勇者は如何に勇者を殺すのか〜

shirose

文字の大きさ
81 / 182
第二章 蹉跌の涙と君の体温

第28話 君の手を

しおりを挟む


「───セ! ナナセってば!」

 動悸。
 心臓が耳の中にあるように鼓動が鳴り響く。
 胸に触れて、そこに心臓があるのを思わず確かめる。
 しばらくしてから、アイナがナナセの肩を揺らしながら、ナナセの名を呼んでいることに気が付いた。

「アイ、……ナ……?」

「いきなりぼーっとして、どしたの?」

 その声に心の底から安堵するのが分かる。

「アイナ………なのか? アイナ、だよな?」

「へ……? う、うん。アイナ、……だよ?」

「……よかった……よかったっ…………」

 呟いて、目をつぶる。
 両手で顔を覆った。

「ほんと、……マジで………あぁ、アイナぁ………」

 ナナセは崩れるようにアイナの両手を強く握った。

「はぁっ? ナナセ、あんたほんとにどうしたの……?」

 崩れ落ちそうになるナナセの顔をアイナは慈愛の篭った目で見つめた。

「…………ナナセ、もしかして無理、してたの?」

「へ?」

 アイナがナナセの頬に手を伸ばした。その手には微かに水滴が乗っていた。ナナセはそうしてようやく自分がぽろぽろと涙を零していることに気が付いた。

「……普通だったらさ。お母さんとお父さんがいて、それで普通に過ごして、普通に生きてるはずだったんだよね」

 アイナが目を伏せて、もじもじと両の手を絡ませる。

「でも、記憶を消されちゃって、それでわけのわかんないこと命令されて、─────」

 ばっ、と顔を上げてナナセの顔を見て、

「不安だとは思うけど、少なくとも私がついてるから………その、大丈夫だからっ!」
 
「う、うん」

 アイナは何か勘違いしているようだが、まぁ説明する気はハナからなかったので、これでいいだろう。
 時間が来れば自分が死んでしまうなんて事実を伝えてしまうほど、ナナセは馬鹿じゃない。
 目を閉じれば、あの時の光景が瞼の裏に映る。
 正午の鐘が鳴り響き、その直後、突然、アイナの身体が焼け始めた。
 そして、ナナセは《永劫アイオーン》で世界の時を止めて、それから───
 そこから先を思い出そうとすると頭痛が酷くなる。なんだ、これ。
 ……まぁ、今は、その事はいい。大事なのはだ。
 明らかに時が遡っている。俺が、アイナを取り戻せたんだ。
 ステイタスを見なくとも頭で理解していた。

 《克刻リヴァイス

 アイナが命を落とした時、時間を巻き戻すスキル。
 相も変わらず不便さは変わらないが、ナナセにとってはこれで十分だった。アイナを絶対に失うことの無い能力。
 ───待て、待て。……そうだ!!

「い、今! 何時!?」

「えっ、今? え~と」

 アイナは窓の外に見える街の中心に聳える巨大な時計塔を見やった。

「11時56分だけど」

「ごじゅう、ろく分……っ!?」

 宿の部屋の中にいたことを察して予想していたことではあったが、これではあまりにも───
 正午までは、タイムリミットまでは、あと4分。あと4分でアイナは焦げ、焼けて命を落としてしまう。
 短い。短すぎる。
 与えられた時間はこんなにも短いのか。
 でも、やるしかない。
 4分は傍から見たらほんの短い時間だろう。だが、ナナセと、そしてアイナにとっては4分は無限で、永劫に等しい。
 もう二度とアイナに痛い思いを、苦しい思いをさせてたまるか。

 俺が、運命を捻じ曲げてやる。

「まずは、原因の追求だよな……」

 独り言を呟くナナセを怪訝そうな顔で覗き込むアイナ。アイナと話したいのもやまやまだが、今は違うことに時間を割いてる暇はない。《永劫アイオーン》で世界の時を止めて、思考する。

 自然発火、みたいなことは無いだろうから、これは明らかに作為的なものだ。
 誰がやったか。
 それを見つけられたら、アイナの死を止められる。
 こんな異次元的な力を発するのはこの世界では、魔人か、もしくは勇者だろう。人間領の人間がそんなこと出来るなんて一切、これっぽっちも聞いたことがない。

 魔人だと仮定すると、なぜ、このタイミングなのか。という疑問が浮かぶ。〈封魔結界〉を通り越して勇者を攻撃出来るならば、とっくのとうにやっているはずだ。

 次に、勇者と仮定する。
 勇者ならば、何時いつだってこんなことは出来る。
 ただ、出来ると言えるだけで動機が分からない。ナナセを放ってアイナを殺す動機が。

「はぁっ……」

 《永劫アイオーン》で世界を止めるのは、息を止めている感覚に近い。限界が来れば自ずと分かる。限界が来て、強制的に解除されたら、一呼吸を置いてもう一度《永劫アイオーン》を使う。これを繰り返す。
 それだけで4分は何分にも、何時間にも拡張されて、膨張される。
 ナナセが時間を止めて、アイナが瞬間移動を使う。
 これをすれば、時間がない、なんて些細な問題に過ぎない。
 しかし、どうだろう。どうしたって考え続けても分からないことはある。
 公式が分からなければ、計算問題を解くことが出来ないのと同じように、少しの答えの欠片もなければ、答えに辿り着くことは出来ない。
 ナナセはアイナを熱した犯人が誰か、全くこれといって検討もついていなかった。ナナセが一周前───ここでいう一周前はアルバートの生きていた世界のことを指す─────の記憶を持ち得ていたとしてもそれは、夢のようにファジィで曖昧模糊な記憶だ。
 アルバートやその他衝撃的な出来事以外のことがぼんやりとしていて、霞のように薄れている。他の勇者についての情報はほぼ分からない。
 息を吐くように《永劫アイオーン》を解除する。

「落ち着け……」

 大丈夫だ。まだあれから10秒しか経ってない。

「アイナ、炎を使う能力を持った勇者、誰か知ってないか?」

「えっ、炎? う~ん………」

 アイナが腕を組んで考え込む。

「ごめん、私が知ってる限りは分からないかな」

 そこまで聞いたところで一度《永劫アイオーン》で世界を止める。

 ここまでで35秒。
 あと、3分半近く。

 アイナは知らない。それは分かっていた。ナナセが知らないのであれば、基本的に一緒に行動していたアイナも必然的に知らないはずだ。
 他の勇者に聞く他ない。
 そんな時間、あるのか、あと3分だぞ、と頭の中で煩悩が囁く。
 やるしか、ないんだ。

 《永劫アイオーン》を解除し、一呼吸置いてからアイナに向かって、

「フウカ達に会おう!!」

「へ、うん、そのつもりだけど。待ってたらここに来るでしょ?」

「そんな暇はない!!」

 ナナセの大声にアイナはびくりと身体を震わせた。その様子を見て、ナナセははっ、と我に返る。そうだ。アイナからして見ればいきなりナナセが豹変したようにしか見えない。でも、説明している暇なんてない。これもアイナを救う為だ。

「……アイナ、いきなりごめん。でも、俺を信じて欲しい」

 その言葉にアイナは息を呑んで、そして、こくりと黙って頷いた。
 ナナセはその様子を確認してから、アイナの手を取って、

「ちょっ! はぁっ!?」

 窓から飛び降りた。

「アイナ! !!」

「ちょっとぉ! もう!!」

 瞬きをした次の瞬間には道の上に立っていた。

「後でちゃんと説明してもらうからね」

「わかったわかった」

 そして《永劫アイオーン》でまたしても世界の時を止めて、思考する。
 目的はアイナを殺した犯人を見つけること。
 つまり炎を操る勇者を見つけることだ。魔人という線もまだ完全には捨てていないが、八割──いや、九割は勇者の仕業だと確信している。
 犯人を見つけて、止めなければいけない。
 まずは誰でもいい。探すんだ。炎の勇者の情報を。
 《永劫アイオーン》を解除したと同時に息を思いっきり吸い込んで、

「誰か!! 勇者のナナセ・トキムネだ!! フウカ!! シャルロット!! いやこの際誰でもいい!! 勇者の誰か居ないか!?」

 喉が掻き切れんばかりに叫ぶ。隣にいたアイナが耳を両の手で塞ぐ。周りにちらほらと立っていた民衆もナナセの方へ視線を向けてざわついていた。

「なに!? フウカ達に会うんじゃないの!?」

「変えた!! やっぱり誰でもいいんだ!! アイナ、ちょっとずつ移動しながら他の勇者を探すぞ!!」

 ナナセはアイナの手を取って、声を上げて叫び続けた。

「もう~~」

 アイナは文句を垂れつつもナナセの指示に従って街を移動し続けた。民にも目撃情報がないか聞いて回った。
 だが、しかし。なんでだ。
 なんで、見つからない。
 街は異様に大きい。宗主国アトルの王都アカロウトと比べたらその大きさは半分程度だが、それでも尚大きい。くそ。情報を聞いて終わりじゃなくて、その先だってあるのに。

 あと2分。

 ナナセの中ではとてつもない焦りが生じている所だった。
 ロークラントの西区で声を張り上げている時、返ってくる言葉があった。

「わっ、ナナセ、どうしたの?」

 ミカエルだ。その隣にはスクードとエヴァも立っている。皆、生気が感じられないような、そんな顔をしていた。

「炎を操る勇者、知らないか?」

「炎……。スクード、エヴァ、知ってる?」

「炎、……っすか。いや、知らないっす。強いて言えばフリュードを襲った災害の中に炎の球が空から落ちてきたってのがあったくらいってくらいすかね」

「それはフェイがやったヤツだな。違う、そうじゃなくて、〈炎〉の勇者が誰か知らないかっていうことで────」

「えっ、いま、なんて……」

「だから〈炎〉の勇者を探してて」

「いやそこじゃなくて、フェイが、やったって」

「あ、ああ。えっとこの際伝えておくとあのフリュードを襲った災害。あれフェイがやったんだ」

「………は?」

 スクードとミカエルが泡を食った顔をする。

「えっ、ちょっ、意味がよく……」

「いやそれは今どうでもいいんだ。エヴァはどうだ? 炎を使う勇者を知らな───」

「どうでもいいわけないじゃないっすか!! どこ情報なんすかそれ!? あれはノウトが起こしたんじゃないんすか!?」

「あーっ、だから違うんだよ、それは───」

 ゴオオオオオオン。

 正午を告げる鐘が鳴る。

「───嘘、だろ……」

「ナナセ、そろそろ聞かせてよ。なんで躍起になってんの?」

「そ、れは」

 教えられない。これから君は焦げて、焼けて、死ぬんだ、なんて。
 ───そうだ。ここから離れれば助かるかもしれない。
 そう思ってアイナの手を取る。否、取ろうとした。一歩遅かった。
 すでにアイナの中で何かが燻り、その身を焦がし、焼いている。アイナの悲鳴が周囲に叫び渡る。ああ。あああ。またしても、アイナを───

「あっづぁァァァァ!!! な、んすか、これエ!?」

 驚くべきことが起きてしまった。
 近くにいたスクード、ミカエル、エヴァもアイナと同じように焼けて焦げて叫んで、踠いて。
 ああ。肉の焦げる臭いが周囲に漂う。
 おかしい。おかしい。アイナだけじゃなかったのか。
 これは、勇者の全滅を狙った攻撃だとでも言うのか。ナナセの頭は混乱で満たされていて、《永劫アイオーン》で世界の時を止めるという考えすら放棄していた。もちろん、ここで《永劫アイオーン》を使ったところでこの場を解決できるようなすべなんて思いつかなかっただろう。
 ああ、駄目だ。
 アイナ、もうその手を離さないと誓っていたのに。
 ナナセはアイナの手に向かって、手を伸ばした。アイナの手をしっかりと握る。
 熱くて、熱くて、頭がおかしくなるくらいに熱い。アイナの目から零れ落ちた涙が昇華して、霧散してゆく。

 そして、彼女は、命を落とした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

処理中です...