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しおりを挟む《コンコン》
「失礼致します。カイルです。ルークを連れてきました」
「…入れ」
「失礼致します」
「ひ、つれいします!」
重い声が中から響いた。あまりの緊張に胸が張り裂けそう。書斎であろう陛下の重い扉が開かれ、俺はカイル様に続いた。部屋の雰囲気は静かで、空気が重く、俺はカイル様の背に少し隠れ、正面を見なかった。唯一の逃げ道であった後ろの扉も静かな音を立ててしっかり閉ざされる。
少しの静寂が、何十時間にも感じた。そして、陛下であろう人物の重い声が響き渡った。
「君がルークか?」
「…は、はいッ」
突如の呼び名に俺は下に向かって叫んだ。何故だろう、足が震え、それが肩まで伝わる。この場の雰囲気と言い、とてつもなく俺には重く感じた。でも、その聞こえてくる声は優しく、決して怒ってはいなかった。でも、何故かどこかで彼奴らの顔が思い出してしまう。ルイビルの王、あのディオス陛下と言う人物のあまりの緊張に、目を合わせられないでいた。
「そんなに緊張しなくていい。顔を見せてくれ」
「ルーク?大丈夫だから…」
俺はゆっくりながらも目を陛下に向けた。そこにはカイル様と同じように若くて、優しい表情が立派な王の品格を醸し出している机の奥にはあった。立派な服装も、光る金色の美しい目も、金の混じった髪も、全てが凄かった。胸に光る青色のペンダントが、彼の優しさを示しているようだった。目の前の美しい王に、息をのみ、立ち尽くした。
「大丈夫。怖がらなくていい。息子のレイディオが随分とお世話になったな。娘のディーレともよく接してくれて嬉しいよ」
「い、いえ、そ、そのディ、ディオス陛下様。この杖に…ふ、服に、本当に、ありがとうございます。お、れのことも助けてくれて…ありがとうございます!!」
俺は必死に深く頭を下げた。命の恩人、国王とあろう人が自ら魔法を使って助けてくれたなんて未だに信じられない。カイル様があそこから出してくれただけで十分なのに、再び歩けるようにまでしてくれた。自然と涙が溢れ出る。
そしてコツコツと足音を鳴らし、ゆっくりと近づく音がする。もしかしたら、何か悪いことをしてしまったのか?こんな言葉だけじゃ、意味無いって言われる。俺にはたまらなく怖かった。いや、ここで死んでも別にもう悔いは…無いかもしれない。
その時、ぽんと肩に温かい手が乗っかった。俺はびっくりして、恐る恐る目の前を見た。そこには、目線を低くしてしゃがんでいる陛下の顔が目の前にあった。笑みを浮かべて、「人として助けるのは当たり前だ」と優しく言ってくれた。目にはどこか悲しそうにしていることが気になったが、唯一の左目が涙のせいで見えない。必死に拭うが、涙は止まらない。
「今まで辛かっただろう。この目の怪我も…何があったのか話せるならぜひ教えてくれ…。今までよく頑張った」
そういうとディオス陛下が俺の頭を撫でた。そして、そっと身体を引き寄せた。溢れる涙の状態で引き寄せられたら、ディオス陛下の服を汚してしまう…。
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