両翼少年協奏曲~WINGS Concerto~【腐女子のためのうすい本】

さくら怜音/黒桜

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一冊目 キス魔はどっち!? ~キスしないと眠れない?男の話

……②

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**

WINGSは今西光と相羽勝行の二人で構成されるユニットバンドだ。血は繋がっていないけれど、相羽家の養子になった光は、バンドを結成した中学三年生のころからずっと、勝行と一緒に暮らしている。

今は東京・有楽町の超高級マンションで二人暮らし。ルームシェアといっても、金持ちの道楽息子・勝行が父親をうまくたらしこんで購入した一室だ。

「あっつー」

帰るなり、汗びっしょりだった光はシャワーへと直行する。
勝行はカッターシャツの襟元だけを開けると、風呂の順番待ちの間、楽譜とスケジュール帳をチェックしていた。

「勝行ー、風呂あいたぞ」
「ん、わかった入る……」

声がする方に振り返り、勝行はぎょっとした。

「光! 裸のままで出てくるな!」
「あっついからしょうがねえじゃん」
「せめて下半身! かくして!」
「――なんで?」
「俺が気にするから! あと誰かが入ってきたら困るから!」

悠然とタオル一枚でリビングに出てくる光を強引に洗面所へ追いやった勝行は、もういい加減覚えろよ何度目の注意だ、とがっくりうなだれた。



「あいつ貞操の危機感、なさすぎ……っ」

細すぎる色白の身体。桃色に色づき、てらりと濡れた素肌が頭の片隅から離れない。
気づけばお年頃な自分の股間が若干血走りながら起き上がってくる。慌てた勝行は壁を思いっきり殴りつけた。




**

色気付いた青少年の下半身は元気だ。
勝行の血気立ったそれは、ぐーんと天を仰ぎ伸びあがっていた。

ヒカルこと今西光は、誰が見ても「綺麗」と溜息を零すほどの中性的な美少年で、一挙一動が色っぽい。
【WINGSのセクシー担当】として、プロデューサーの置鮎保が彼を売り物に育てている。
当の本人は世間知らずの自由人。いつでも野生の本能のままに生きている彼は、最近勝行がものすごく自分を意識していることには全く気付いていない。
むしろ抱きついてきたり、平気で男同士手を繋いだりするのは光の方。
性的観念が少しおかしいというか……随分子どもっぽいというべきか。
おまけにおはようとおやすみの時間には絶対甘ったるい口づけを要求する、とんでもない「キス魔」だ。夜はそれをしないと、眠れないという。先に亡くした母親(ママ)にでもしてもらっていたのか、そんな甘えた美少年に振り回されてばかりの勝行は、すっかり彼の「キス相手」として認識されていた。
今日もライブ中にちゃっかり頬キスしてきたせいで、腐女子ファンの悲鳴が絶えなかった。

とはいえ、彼とは恋人同士でもなんでもない。
ただの親友で、バンドの相方で、義弟だ。

それでも――『光が好き』
そう、その身も心も、何もかもすべてが、可愛い。


「なんでこんなことになっちゃうかなあ……」

脱衣所で力強く勃起した己の分身を見ながら、勝行は盛大なため息をついた。

邪な恋心を自覚してしまった勝行は、この感情は間違っていると思いながらも諦められないでいる。それは恋愛かと問われれば、きっとイエスと答えてしまうだろう。それぐらい、勝行には光が何万倍ものキラキラ贔屓目フィルター効果で色っぽく見えて仕方ない。
相手は男なのに。兄弟なのに。こんな目で見てはいけない相手だというのに。

くらくらしながらバスルームに入り、頭から思いっきり冷水シャワーをかぶった。

(ああ畜生……腹立つ。あの野郎、人の気も知らないで!)

いや、本当は知っている。
自分が好意を寄せていることは、いとも簡単にバレてしまった。
だがその告白を聞いて素直に喜んだ光は、ただ単に「家族として」自分を受け入れてもらえたのだと思っているようだった。
あの男にはまだ、こんなはしたない下心はバレていない――はず。

おかげさまで、身体の火照りは全然収まらない。

(はあ……色白で細くて……綺麗だった……ちくび、ピンクだったな……って俺は! 何を思い出し妄想してるんだ全く!)

ライブで興奮しただけではないその熱を、シャワールームで時間をかけて冷ました勝行は、髪をタオルで拭きながらリビングに戻った。
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