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一冊目 キス魔はどっち!? ~キスしないと眠れない?男の話
……⑥
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「ご、ごめん……でもノックもしないで風呂場を開けるのはよくない事だからお前も反省して」
「……」
額に大きめの絆創膏を貼ってもらいながら、光は仏頂面でフンとそっぽを向いた。反省する気はさらさらないらしい。
角が思いっきり当たったせいで、結構な傷を作ってしまった。
次の週末までに治らなければ、『芸能人は顔が命!』と毎回うるさいプロデューサーの置鮎保に怒られてしまう。
だがこの絆創膏つきで不貞腐れる光の顔は、まるで冷却パッドを貼ったお子様のようで、妙に可愛いらしい……。
――などと、口に出したら絶対殴られるので言わないけれど。
「目に当たってたらどうすんだよ」
「とっさに取ったのがアレだったんだよ。お前ケンカ慣れしてんだから、これくらい反射で避けるかと思って」
「――うっ」
避けられなかったのがよほど悔しかったらしく、唇を尖らせて黙りこくる。詫びを兼ねて今回も濡れたままだった光の髪をタオルで拭く勝行は、拗ねた姿を見てふふっと微笑んだ。
「もうお前、ほんとかわいいな」
「アアン? 誰が!」
「――ああ、ごめんごめん」
うっかり本音を滑らせてしまった。
「お詫びに髪の毛乾かしてあげるから」
「はん、当然だ!」
偉そうに自分の前で胡坐をかく光の髪をドライヤーと手で梳いて乾かしてやると、どんなに機嫌が悪くてもだんだん気持ちよくなってウトウトしてしまう。そんな癖を知り尽くしている勝行は、光の柔らかい髪を何度も梳いては撫で、優しく触れる。まるで猫のようだ。
「もう眠たそうだね。寝る?」
「うっせー、まだ……キスまだ……」
うつらうつらと頭を垂れながら首を横に振ると、勝行のシャツの裾を握りしめて、光は寝言のように呟いた。
「今日の、キス、ぜんぜん……してない……俺、死にそー……」
「そんな大げさな」
「……いいから早くしろぉ」
半分拗ねながらの物言いに笑いを堪えたくなるものの、その誘惑の唇はとろんと蕩けた瞳と共に、勝行の目の前へと差し出された。
薄っすら桃色のきれいな唇。
ほんの少しばかり不安げに、――それはまるで、従順に『待て』を覚えて飼い主を見つめる忠犬のような瞳。
それは熱いラブコールを送ってくれるファンの女の子たちよりも、大人気のセクシー美人女優なんかよりも、ずっと魅惑的な姿だった。
(うっ、無理……反則だろ、これ)
俺、もう我慢できない。
ふらりと顔を近づけた勝行は、その唇をなぞるように舐めると、隙間から舌を入れてお互いの気持ちいい場所を探り始めた。
「ンッ……ん、ふぅ……」
「……はっ……ひか、る……」
「ん……、もっと……っは……、……こっちも……」
さっきまであんなに偉そうだったくせに、与えられた甘いキスにあっさり溺れていく。
「首も? ……お前、ほんと好きだなコレ……」
「ぅ……ぁ、あん……っ」
悩殺スキルの高い掠れた喘ぎ声が耳元で厭らしく響き渡る。
こんな美少年の媚びた声を、姿を、毎日のように目の前で繰り広げられて平常心でいられるわけがない。意識するなという方が正直無理である。
丹念で濃厚なキスに蕩けきって、だんだん力尽きていく光の身体を腰から抱きかかえ、勝行はいつまでもその身体を撫でて温めた。
(かわいい、おれのひかる)
昨日の愚行の跡が消えてないのに、上塗りばかりが増えていく。
(あー……だめだ、またやっちゃった……)
明日はなんて言い訳しよう。
あれこれグルグル考えながらも、気づけば今日も光の身体中にキスしまくっている自分がいる。悪いことをしてる自覚はあるんだけど、やめられないのはなぜだろう。
これで明日も、言い訳だらけの誤魔化し優等生を演じるところから始まるのかと思うと、バカな自分に少々呆れてくる。
(ヤバいよな……もしかしたら、俺の方が実はキス魔なのかも)
性癖?
ふいにそんな言葉がよぎったけれど、それもきっとこの可愛い義弟のせいに違いない。
開き直ってそう思うことにした勝行は今宵も光を両腕で軽々と抱き上げ、ベッドへと連れて行った。
そんな勝行の腕の中で気持ちよさそうに眠りこけた光は、愛撫の痕を首筋につけたまま、とてつもなく幸せそうな寝顔を見せていた。
【END】
「ご、ごめん……でもノックもしないで風呂場を開けるのはよくない事だからお前も反省して」
「……」
額に大きめの絆創膏を貼ってもらいながら、光は仏頂面でフンとそっぽを向いた。反省する気はさらさらないらしい。
角が思いっきり当たったせいで、結構な傷を作ってしまった。
次の週末までに治らなければ、『芸能人は顔が命!』と毎回うるさいプロデューサーの置鮎保に怒られてしまう。
だがこの絆創膏つきで不貞腐れる光の顔は、まるで冷却パッドを貼ったお子様のようで、妙に可愛いらしい……。
――などと、口に出したら絶対殴られるので言わないけれど。
「目に当たってたらどうすんだよ」
「とっさに取ったのがアレだったんだよ。お前ケンカ慣れしてんだから、これくらい反射で避けるかと思って」
「――うっ」
避けられなかったのがよほど悔しかったらしく、唇を尖らせて黙りこくる。詫びを兼ねて今回も濡れたままだった光の髪をタオルで拭く勝行は、拗ねた姿を見てふふっと微笑んだ。
「もうお前、ほんとかわいいな」
「アアン? 誰が!」
「――ああ、ごめんごめん」
うっかり本音を滑らせてしまった。
「お詫びに髪の毛乾かしてあげるから」
「はん、当然だ!」
偉そうに自分の前で胡坐をかく光の髪をドライヤーと手で梳いて乾かしてやると、どんなに機嫌が悪くてもだんだん気持ちよくなってウトウトしてしまう。そんな癖を知り尽くしている勝行は、光の柔らかい髪を何度も梳いては撫で、優しく触れる。まるで猫のようだ。
「もう眠たそうだね。寝る?」
「うっせー、まだ……キスまだ……」
うつらうつらと頭を垂れながら首を横に振ると、勝行のシャツの裾を握りしめて、光は寝言のように呟いた。
「今日の、キス、ぜんぜん……してない……俺、死にそー……」
「そんな大げさな」
「……いいから早くしろぉ」
半分拗ねながらの物言いに笑いを堪えたくなるものの、その誘惑の唇はとろんと蕩けた瞳と共に、勝行の目の前へと差し出された。
薄っすら桃色のきれいな唇。
ほんの少しばかり不安げに、――それはまるで、従順に『待て』を覚えて飼い主を見つめる忠犬のような瞳。
それは熱いラブコールを送ってくれるファンの女の子たちよりも、大人気のセクシー美人女優なんかよりも、ずっと魅惑的な姿だった。
(うっ、無理……反則だろ、これ)
俺、もう我慢できない。
ふらりと顔を近づけた勝行は、その唇をなぞるように舐めると、隙間から舌を入れてお互いの気持ちいい場所を探り始めた。
「ンッ……ん、ふぅ……」
「……はっ……ひか、る……」
「ん……、もっと……っは……、……こっちも……」
さっきまであんなに偉そうだったくせに、与えられた甘いキスにあっさり溺れていく。
「首も? ……お前、ほんと好きだなコレ……」
「ぅ……ぁ、あん……っ」
悩殺スキルの高い掠れた喘ぎ声が耳元で厭らしく響き渡る。
こんな美少年の媚びた声を、姿を、毎日のように目の前で繰り広げられて平常心でいられるわけがない。意識するなという方が正直無理である。
丹念で濃厚なキスに蕩けきって、だんだん力尽きていく光の身体を腰から抱きかかえ、勝行はいつまでもその身体を撫でて温めた。
(かわいい、おれのひかる)
昨日の愚行の跡が消えてないのに、上塗りばかりが増えていく。
(あー……だめだ、またやっちゃった……)
明日はなんて言い訳しよう。
あれこれグルグル考えながらも、気づけば今日も光の身体中にキスしまくっている自分がいる。悪いことをしてる自覚はあるんだけど、やめられないのはなぜだろう。
これで明日も、言い訳だらけの誤魔化し優等生を演じるところから始まるのかと思うと、バカな自分に少々呆れてくる。
(ヤバいよな……もしかしたら、俺の方が実はキス魔なのかも)
性癖?
ふいにそんな言葉がよぎったけれど、それもきっとこの可愛い義弟のせいに違いない。
開き直ってそう思うことにした勝行は今宵も光を両腕で軽々と抱き上げ、ベッドへと連れて行った。
そんな勝行の腕の中で気持ちよさそうに眠りこけた光は、愛撫の痕を首筋につけたまま、とてつもなく幸せそうな寝顔を見せていた。
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