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四冊目 りんごあめと白雪王子 ~絶対恋愛関係にならない二人の最後の夏休み

りんごあめ、ひとつ……②

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 ――ふう……危なかった。

 ほっと胸を撫でおろしながら歩いていると、ふいに隣から「ガリッ」とすごい咀嚼音が聴こえてきた。振り返ると、光が大きすぎる飴を齧ってバリボリとかみ砕いていた。

「光……それ食べ方ちょっと違う気が」
「そうか?」

 じゃあこっちか、と不思議そうな顔をしながら、光は舌をペロン、と突き出して大きな飴を下から舐めた。飴を少し斜め上に持ち上げ、扇動的な上目遣いでじゅるりと舐めまわす。
 その仕草がどことなく見覚えのある卑猥なワンシーンのように見えて、おもわず勝行の頬が紅潮した。
 当の本人は何も考えないで大きな飴に夢中の様子。



 「お……おいしい、のかな?」
 「んー。お前には無理だな。甘ったるい」
 「だろうね」
 「食ってみる?」
 「いや、遠慮しとくよ」
 「そう? ……うお、みろよ、かじったとこからリンゴが出てきたっ」
 「あ、ほんとだ」
 「りんごになったらここだけ酸っぱい。面白い味だな」

 純粋に飴の試食を愉しむ光の口の中からは、ほのかに甘ったるい蜜の香りがつんと漏れてきた。人よりはずいぶん早い食べ方かもしれないが、歩きながらいつまでもこんな舐め方をされるのは行儀も悪いし、何よりも見た目が……。

 ――やばい……エロすぎだろ……。

 よからぬことを考えてしまった勝行は思わず生唾を飲み込んだ。目の前の甘い飴の蜜よりも、もっと甘ったるい光景を妄想してしまった。

「……こ、これ食べながら歩くのはちょっとよくないな。あそこの木陰にでも座って休憩してな。俺、別の食べ物買ってくるから」
「ああ……うん」

 とっさに見つけた木陰に半ば強引に座らせると、勝行はなるべくその顔を見ないまま辺りを見渡した。徐々に人も増えてきたし、光にはここで食べながら待っていてもらった方がよさそうである。

「光はたこ焼きがいいんだっけ?」
「おう」
「じゃあそこで食べて待ってて」
「んー」

 互いに手を振り、二人は一旦別行動になった。
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