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六冊目 ハロウィンナイト ~おれたちの推しインキュバスをオオカミから全力で守る会~
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「じゃあ恒例の、くじ引き大会ー!」
見た目に派手な成人男性だらけのステージフロア。
パフパフ、と誰かがとぼけた効果音を入れる。
一部のスタッフは盛り上がっているようだが、半分罰ゲームのようなものだ。WINGSの相羽勝行と今西光も半ば強引にくじを引かされた。
「狼男……」
「おお、勝行はモフモフか!」
「光、お前はなんだった?」
「えーと、い……いん……インキュ、バス。なにこれ?」
「っしゃあ! やばいのきたあぁああ!」
「うおおおお!」
メンバー一同が騒然となる中、光はきょとんとした顔で引いたくじとオーナー・沢渡を見比べた。彼は白髪交じりの短い金髪をふるふる震わせながら顔面を片手で覆い隠し「すまん、光、ありがとう、俺はまだ生きる、まだ死ねない」などと意味不明な言葉を呟いている。その鼻の下からは赤い液体がつらり。
「えっ!? おいオーナー、鼻血出てるぞ! ちょ、誰かティッシュくれティッシュ」
「オーナーのそれは変態エロ妄想の鼻血だから無視しても平気だよ……それより、俺たち未成年なんですけど?」
沢渡を遠慮なく睨みつけながら、勝行は「成人指定ものは勘弁していただけますか」と悪ノリが過ぎる大人たちに詰め寄った。日常は割と温和な性格の男なのだが、こういう時はすかさず反論するし、納得いくまで融通が利かない。
「わかってる、わかってるよ」
「お前んとこのプロデューサーが今回の衣装担当だ。事務所的にNG出るような変なモンはこないだろ」
「それならまあ……いやでも、あの人の方がかえって変なコスプレ衣装作りそうで怖いんですけど……」
「なあに、大丈夫だ。メインはライブであって、衣装はただのファンサだからな」
心配の尽きない勝行の肩を叩き、沢渡はにかりと笑った。
WINGSサポートメンバーの須藤と久我、藤田が間髪入れずにフォローする。
「心配すんなって」
「インキュバスって言ったって、要は悪魔だろ。ちょっとセクシーな感じの衣装ってだけだよ。多分。知らんけど!」
「お菓子代わりの客用サービスだ。諦めな」
「それは……まあ、ハロウィンイベントだし、わかってますけど……」
――ここは摩天楼輝くビル街・新宿。街中のビルの地下にある、小さなライブハウス【INFINITY】。
スタッフ兼出演者として夜な夜な働く大人たちは、今シーズン一番集客数を稼いでいる高校生Jロックバンド「WINGS」の二人を取り囲みながら、和気あいあいと新イベントの企画を練っていた。
外に貼りだされるポスターも、いつの間にか黒とオレンジの派手なイベント告知ものに変わっている。
『ハロウィンナイト――仮装ライブフェスティバル』
ジャック・オ・ランタンのあどけないイラストの上に書かれた出演者情報には、WINGSの名前も載っている。店恒例の仮装イベントにこの二人が出演するのは、これで二度目だ。今年は二人とも十八になったし、今や店で一番人気の売れっ子バンド。前座の新人枠ではなく中盤のメイン盛り上げ担当に出演枠を貰っている。
「コスプレって全員強制ですか?」
「女装じゃないからまだマシだろ」
そんなに嫌か? と笑いながら、須藤が全員の引いたくじ結果をメモってまとめている。配役は確定した模様だ。
「去年は勝行が悪魔で、光が狼男だったか」
「あーそうか。そうだった。ケモ耳つけた光に女がめちゃくちゃ群がってきて、すげえビビってたな」
「そうそう! 情けない顔して『客がこわい』って言ってるヘタレ狼だったよな!」
「そうだな……あの時の光も可愛かった……」
鼻血を拭き終えたオーナーが感慨深げに目を細めている中、WINGSの二人をよく知るサポートメンバー三人はWINGSの二人を囲って思い出を語っていた。
「……そうだっけ?」
言われてみれば、スーツに耳と尻尾をつけてピアノを弾いたり、シェイカーを振った時があるような――。ブツクサ呟く光はふいにポンと手を打った。
「そういえば変な衣装着たな。これって、あれか」
「お前、……なんのくじ引きか知らないで引いたの?」
「だって……お前が引けって言うから」
勝行のツッコミに対する光の回答を聞いた周囲のスタッフ全員、「可愛い奴め!」と頭を抱えて悶絶する。
「まさに鶴の一声ならぬ、飼い主の一声。さすが忠犬」
「ほんと光は勝行の言うことだけは疑いもせず聞くなぁ」
「あとオーナーの言うこともな」
「じゃあ恒例の、くじ引き大会ー!」
見た目に派手な成人男性だらけのステージフロア。
パフパフ、と誰かがとぼけた効果音を入れる。
一部のスタッフは盛り上がっているようだが、半分罰ゲームのようなものだ。WINGSの相羽勝行と今西光も半ば強引にくじを引かされた。
「狼男……」
「おお、勝行はモフモフか!」
「光、お前はなんだった?」
「えーと、い……いん……インキュ、バス。なにこれ?」
「っしゃあ! やばいのきたあぁああ!」
「うおおおお!」
メンバー一同が騒然となる中、光はきょとんとした顔で引いたくじとオーナー・沢渡を見比べた。彼は白髪交じりの短い金髪をふるふる震わせながら顔面を片手で覆い隠し「すまん、光、ありがとう、俺はまだ生きる、まだ死ねない」などと意味不明な言葉を呟いている。その鼻の下からは赤い液体がつらり。
「えっ!? おいオーナー、鼻血出てるぞ! ちょ、誰かティッシュくれティッシュ」
「オーナーのそれは変態エロ妄想の鼻血だから無視しても平気だよ……それより、俺たち未成年なんですけど?」
沢渡を遠慮なく睨みつけながら、勝行は「成人指定ものは勘弁していただけますか」と悪ノリが過ぎる大人たちに詰め寄った。日常は割と温和な性格の男なのだが、こういう時はすかさず反論するし、納得いくまで融通が利かない。
「わかってる、わかってるよ」
「お前んとこのプロデューサーが今回の衣装担当だ。事務所的にNG出るような変なモンはこないだろ」
「それならまあ……いやでも、あの人の方がかえって変なコスプレ衣装作りそうで怖いんですけど……」
「なあに、大丈夫だ。メインはライブであって、衣装はただのファンサだからな」
心配の尽きない勝行の肩を叩き、沢渡はにかりと笑った。
WINGSサポートメンバーの須藤と久我、藤田が間髪入れずにフォローする。
「心配すんなって」
「インキュバスって言ったって、要は悪魔だろ。ちょっとセクシーな感じの衣装ってだけだよ。多分。知らんけど!」
「お菓子代わりの客用サービスだ。諦めな」
「それは……まあ、ハロウィンイベントだし、わかってますけど……」
――ここは摩天楼輝くビル街・新宿。街中のビルの地下にある、小さなライブハウス【INFINITY】。
スタッフ兼出演者として夜な夜な働く大人たちは、今シーズン一番集客数を稼いでいる高校生Jロックバンド「WINGS」の二人を取り囲みながら、和気あいあいと新イベントの企画を練っていた。
外に貼りだされるポスターも、いつの間にか黒とオレンジの派手なイベント告知ものに変わっている。
『ハロウィンナイト――仮装ライブフェスティバル』
ジャック・オ・ランタンのあどけないイラストの上に書かれた出演者情報には、WINGSの名前も載っている。店恒例の仮装イベントにこの二人が出演するのは、これで二度目だ。今年は二人とも十八になったし、今や店で一番人気の売れっ子バンド。前座の新人枠ではなく中盤のメイン盛り上げ担当に出演枠を貰っている。
「コスプレって全員強制ですか?」
「女装じゃないからまだマシだろ」
そんなに嫌か? と笑いながら、須藤が全員の引いたくじ結果をメモってまとめている。配役は確定した模様だ。
「去年は勝行が悪魔で、光が狼男だったか」
「あーそうか。そうだった。ケモ耳つけた光に女がめちゃくちゃ群がってきて、すげえビビってたな」
「そうそう! 情けない顔して『客がこわい』って言ってるヘタレ狼だったよな!」
「そうだな……あの時の光も可愛かった……」
鼻血を拭き終えたオーナーが感慨深げに目を細めている中、WINGSの二人をよく知るサポートメンバー三人はWINGSの二人を囲って思い出を語っていた。
「……そうだっけ?」
言われてみれば、スーツに耳と尻尾をつけてピアノを弾いたり、シェイカーを振った時があるような――。ブツクサ呟く光はふいにポンと手を打った。
「そういえば変な衣装着たな。これって、あれか」
「お前、……なんのくじ引きか知らないで引いたの?」
「だって……お前が引けって言うから」
勝行のツッコミに対する光の回答を聞いた周囲のスタッフ全員、「可愛い奴め!」と頭を抱えて悶絶する。
「まさに鶴の一声ならぬ、飼い主の一声。さすが忠犬」
「ほんと光は勝行の言うことだけは疑いもせず聞くなぁ」
「あとオーナーの言うこともな」
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