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六冊目 ハロウィンナイト ~おれたちの推しインキュバスをオオカミから全力で守る会~
……⑥
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「今年のWINGSは二人ともヤベエな……くじ引きの時から予感はしていたがマジでヤベエ……可愛さの暴力だ」
「おい久我ぁ、お前確かゲイだったよな。光と勝行に手を出したらこの俺が許さねえ」
「WINGSがアンタの最推しってことぐらい皆知ってるわ。俺たちの推しは狼から全力で守ってやるよ」
「いつからお前の推しになった」
「可愛いなと思った時からだ」
奥のステージフロアで盛り上がるライブ演奏を聴きながら、壁に凭れて白髪交じりの男――オーナー・沢渡と、サングラスをかけたオールバックの男・久我が電子煙草をふかしていた。どちらもクールな面持ちをして颯爽と立っているが、その鼻には赤く滲んだティッシュが大量に詰め込まれている。
WINGSのライブは終わった。大盛況だった。
いつもの女性ファンもさながら、別のバンド目当てに来ていた男性観客もその格好に釘付けだったことは間違いない。
「なんだあれ、エロすぎだろ!」
「ヒカル、超ほっそ! マジでモデルみたい!」
「だめだ俺は男の娘に目覚めてしまいそうだ……」
「しっかりしろそこの親父ぃ!」
奏でる音楽より容姿に騒ぎ立てる観客たちを押しのけ、最前列で警備員のように仁王立ちしていた沢渡は間近でしっかりと見た。
――マイクロパンツと尻尾の付け根にある、わずかな空間。そして、裾から見える絶対領域。どこにも無駄な毛が見当たらない、絹のような白肌。
そしてピアノを弾きながら零す、可憐な笑顔と。
その首元からうっすら見える、赤い花痕。
「いやしかし……エロかったな」
思い出すだけでも再び鼻血が止まらなくなる。ティッシュを差し替えながら、沢渡は本日三百回目の溜息をついた。
「あいつら、まだ高校生だろ。オーナー、……じゃなくてそこのフランケンシュタイン。うっかり手出して未成年なんちゃらで捕まんなよ」
「あほか雑魚ゾンビめ。手を出す輩がいたら即成敗だ」
「当然だ」
決まらない顔と珍妙なメイクのモンスター姿で蒸気を燻らせ、謎の協定を結ぶ男たちを見ながら、金髪イケメンのバーテンダー青年・須藤健が呆れた顔でヤジを飛ばした。
「おいオッサンら、いつまでもだせえ恰好してねえで早くその鼻血なんとかしろよ。バーカウンター、激務なんスけど! さすがにもう俺一人じゃ無理! 応援に光よこして」
「ダメだあいつがカウンターに立ったら変な輩が群がるに決まっている。猛獣に餌を与えるようなもんだ」
ヘルプを即拒否する上司・沢渡に対し、須藤はバカかと詰った。
「だからいいんじゃねーか。あいつがここでシェイカー振ってりゃ売り上げ倍増するし、カウンターの中なら悪い客にも手出しされねえだろ!」
「む……その辺に放置するより、中で俺の傍にいた方が安全か」
「中で仕事してりゃ、下半身までは見られねえし」
「そういえばさっき、仕事手伝うことないかって聞いてきたな。あいつもああ見えて仕事は真面目にやる奴だから……」
「カウンター周りで俺らが守っていれば」
「それもそうだな」
妙案だと頷いた沢渡は辺りを見渡した。だが仮装ライブは出演者も客も皆コスプレ姿。あんなに目立つ格好でもWINGSの二人の姿は早々見当たらない。当人たちのライブ出番は終わったので、楽屋で休憩でもしているのだろうか。
「そのへんにはいねえな。探してくるわ」
「俺も行こう」
「いいけどお前、どさくさに紛れて光のケツ触んなよ?」
「はあ? そいつぁ俺のセリフだ、セクハラ親父」
煙草を灰皿に押し付けて火種を揉み消すと、二人はいがみ合いながらライブに盛り上がる大勢の客をかき分け、ステージ裏のスタッフ楽屋に向かって行った。
「頼むよー早く連れてきて! っとと、いらっしゃいませ。何にします? お嬢さん……」
「今年のWINGSは二人ともヤベエな……くじ引きの時から予感はしていたがマジでヤベエ……可愛さの暴力だ」
「おい久我ぁ、お前確かゲイだったよな。光と勝行に手を出したらこの俺が許さねえ」
「WINGSがアンタの最推しってことぐらい皆知ってるわ。俺たちの推しは狼から全力で守ってやるよ」
「いつからお前の推しになった」
「可愛いなと思った時からだ」
奥のステージフロアで盛り上がるライブ演奏を聴きながら、壁に凭れて白髪交じりの男――オーナー・沢渡と、サングラスをかけたオールバックの男・久我が電子煙草をふかしていた。どちらもクールな面持ちをして颯爽と立っているが、その鼻には赤く滲んだティッシュが大量に詰め込まれている。
WINGSのライブは終わった。大盛況だった。
いつもの女性ファンもさながら、別のバンド目当てに来ていた男性観客もその格好に釘付けだったことは間違いない。
「なんだあれ、エロすぎだろ!」
「ヒカル、超ほっそ! マジでモデルみたい!」
「だめだ俺は男の娘に目覚めてしまいそうだ……」
「しっかりしろそこの親父ぃ!」
奏でる音楽より容姿に騒ぎ立てる観客たちを押しのけ、最前列で警備員のように仁王立ちしていた沢渡は間近でしっかりと見た。
――マイクロパンツと尻尾の付け根にある、わずかな空間。そして、裾から見える絶対領域。どこにも無駄な毛が見当たらない、絹のような白肌。
そしてピアノを弾きながら零す、可憐な笑顔と。
その首元からうっすら見える、赤い花痕。
「いやしかし……エロかったな」
思い出すだけでも再び鼻血が止まらなくなる。ティッシュを差し替えながら、沢渡は本日三百回目の溜息をついた。
「あいつら、まだ高校生だろ。オーナー、……じゃなくてそこのフランケンシュタイン。うっかり手出して未成年なんちゃらで捕まんなよ」
「あほか雑魚ゾンビめ。手を出す輩がいたら即成敗だ」
「当然だ」
決まらない顔と珍妙なメイクのモンスター姿で蒸気を燻らせ、謎の協定を結ぶ男たちを見ながら、金髪イケメンのバーテンダー青年・須藤健が呆れた顔でヤジを飛ばした。
「おいオッサンら、いつまでもだせえ恰好してねえで早くその鼻血なんとかしろよ。バーカウンター、激務なんスけど! さすがにもう俺一人じゃ無理! 応援に光よこして」
「ダメだあいつがカウンターに立ったら変な輩が群がるに決まっている。猛獣に餌を与えるようなもんだ」
ヘルプを即拒否する上司・沢渡に対し、須藤はバカかと詰った。
「だからいいんじゃねーか。あいつがここでシェイカー振ってりゃ売り上げ倍増するし、カウンターの中なら悪い客にも手出しされねえだろ!」
「む……その辺に放置するより、中で俺の傍にいた方が安全か」
「中で仕事してりゃ、下半身までは見られねえし」
「そういえばさっき、仕事手伝うことないかって聞いてきたな。あいつもああ見えて仕事は真面目にやる奴だから……」
「カウンター周りで俺らが守っていれば」
「それもそうだな」
妙案だと頷いた沢渡は辺りを見渡した。だが仮装ライブは出演者も客も皆コスプレ姿。あんなに目立つ格好でもWINGSの二人の姿は早々見当たらない。当人たちのライブ出番は終わったので、楽屋で休憩でもしているのだろうか。
「そのへんにはいねえな。探してくるわ」
「俺も行こう」
「いいけどお前、どさくさに紛れて光のケツ触んなよ?」
「はあ? そいつぁ俺のセリフだ、セクハラ親父」
煙草を灰皿に押し付けて火種を揉み消すと、二人はいがみ合いながらライブに盛り上がる大勢の客をかき分け、ステージ裏のスタッフ楽屋に向かって行った。
「頼むよー早く連れてきて! っとと、いらっしゃいませ。何にします? お嬢さん……」
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