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六冊目 ハロウィンナイト ~おれたちの推しインキュバスをオオカミから全力で守る会~

……⑧

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「ぅ、んぅ、……さわんなっ」
「えー? でもさっきから全身びくびくしてるよぉ? 感じてるんだろう? ふふふ……この服脱がせてやるから、大人しくしてなって」
「ちが……そんなとこ関係なぃ……っ」

光は片手で近づく男の胸倉を押さえつけ、近づいてくるその顔をどうにかして追いやろうとした。だが力を入れるとうっかり尿が漏れそうな感覚に襲われ、うまく動けない。遠慮ない男の手が、今度は僅かな胸当て布をまくりあげ、付属の飾りチェーンで乳首を激しく擦り始めた。途端、電撃のような強烈な刺激が全身を駆け巡り、膝からがくんと崩れ落ちる。

(だ……だめだ……今そこ、ヤバ……ッ)
「うっ……あ、ぁ」
「うひょ、おっぱい弱っ! 耐えちゃって、かーわいい」
「なああんた。さっきからうちの光に何してるんですか……?」
「ひっ!?」

ふいに聞き覚えのある声が耳元で響く。中年男はもちろん、光も思わず声の主に視線を向けた。スカート姿の狼男こと勝行が、にっこり営業スマイルで男の真横に立っている。

「か……かつゆきぃ……」

助けに来てくれた?
ほっとするあまり、零れ落ちた光の声はもはや半泣き状態だった。慌てふためく中年男は、必死に取り繕おうと状況を説明する。

「い、いや何ってその、ヒ、ヒカルがズボンのファスナー開かねえって言うから助けてやろうと思ってだな」
「ズボンのファスナー? 今あんた明らかに胸、触ってましたけど。そんなところにズボンなんてありましたかね」
「あ、いやそれは……」
「誰が服を脱がせろと……?」

男の耳元で囁く勝行の声は腹の底から響くほどの低音ボイス。その表情は光からはさっぱり見えないが、声からして静かにキレていることは確かだ。

「で、でで、でもヒカルが誘ってきたのは事実だ! 俺は悪くねえっ、このビッチ野郎!」

男は罵りながら光と勝行を突き飛ばし、這うように飛び出して行った。だがほんの数メートル抜けた先で、図体のでかい男性二人組に行く手を阻まれひっくり返る。

血糊まみれの包帯で身を包み、顔に傷をつけた釘付き怪物男の巨体はオーナー沢渡。その隣で黒マントを翻すオールバックの男は、目玉の取れたゾンビの特殊メイクでにたりと笑う。――まさに、本物顔負けのモンスター一味だ。

「おいテメエ……ヒカルに何してた」
「嫌がる声が聴こえたけど、どういうことだ?」
「ひぃっ……お、オーナー……久我さん」

店内スタッフで最も強面の男二人に囲まれ睨まれて、男は下半身を抑えたままへなへなと座り込んだ。

「だ……誰だってあんな誘われ方しちゃ……」
「はっ。トリック・オア・トリート、だ」
「推しを全力で守る協定、違反する奴はぁ……どうなるかわかってんだろ?」

モンスターを怒らせた代償は、相当なもんだぜ?
二人の男はそう言うと、服の上からはっきりわかるほどに勃起した中年男の一物に向かって、スポンジ製手斧を振り落とした。
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