フレンドコード▼陰キャなゲーマーだけど、リア充したい

さくら怜音/黒桜

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Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友

8 グッズは嫌い?

「おはようケイタ」
「お、おう」
 
 翌朝。電車に乗り込むと、あの柔らかい笑顔で名前を呼ばれてドキッとする。
 本名だと知ったからだろうか。いきなりの名前呼びに戸惑っていると、何も知らない《肉食べいこ》こと安藤太一は「これあげる」と小さなポリ袋を突き出してきた。
 
「え、なに」
「FCOのリアルガチャ。近所の店で見つけてさ、思わず回しちゃった」
「リアル……ってまさか」
 
 慌てて袋の中身を確認すると、そこにはアクリルキーホルダーがひとつ入っていた。昨日滝沢に見せたロリ少女キャラ。狐の耳としっぽがついていて、あざと可愛い招き猫風のしぐさで飛び跳ねている。
 
「ケイタそのキャラ好きだろ。前に推しって言ってた気が」
「うん」
「せっかくその子出たから。いつもフレンドで世話になってる御礼、みたいな」
「マジか……でもこれ、金かかってんじゃん。もらうわけには」
「ああそこは気にしないで。このキャラが出たらケイタにあげるって決めてたんだ」
 
 目元をしわくちゃにして笑う優しい顔が、気後れする圭太にキーホルダーを押し付けながらそう言った。
 
「グッズは嫌い?」
「あ、いや結構好き。小遣いないから買えないけど」
「ああよかった。ゲームはやるけどグッズとかはオタクぽくて嫌いって言う奴もいるからさ」
 
 ケイタなら好きそうな気がして!
 そう言って微笑む姿はまさに神々しい天使のようだ。思わず「うっ」と目を細めてしまう。
 
(こいつ男のくせに、わんこっぽいっていうか……ケモ耳が似合うっていうか……俺の二次元推しキャラたちにちょっと似てるんだよなあしぐさとか笑顔とかが!)
 
 感動のあまりキーホルダーを持ったまましばし放心してしまった。が、慌てて我に返る。それから素直に礼を述べた。
 
「すっげえ嬉しい。ありがとう。どうしよう……かばんにつけようかなあ。オタクっぽいかな」
「いいじゃんかばん。これ付けてたらFCO好きな友だちが増えるかもよ」
「……そ、そうか」
 
 確かに先日のようにスマホ画面を見せなくても作品は説明できるし、高校で趣味の合う友人が欲しかった圭太的にもそれは名案だと思った。
 けれどどこかもやっとして、すっきりしない感情が胸に残る。
 
「俺らの学校で他にもFCOやってる奴、見つかるといいな。つか、ケイタが布教したら?」
「布教?」
「ケイタ強いもん。イベントランキングでも毎回二桁に入るような奴なんてなかなか身近にはいないよ。それにランカーのくせして優しいし。俺のも協力プレイで一気にクエスト進んだし、アドバイスもくれるし、初心者にはありがたいマジで」
「んー……そっか」
「特にメインサポートの二刀流剣士。あいつほんと最強だよな! ミッションごとに毎回サポートスキル変えてくれるのもすげえ便利。もはやチートだよなあ。ケイタ様様だよ」
 
 彼が饒舌に褒めてくれるのは嬉しい。だが連絡先の交換とか、友だちになろうとか。ゲーム以外のことも話したい、とか――。期待していた言葉はちっとも出てこない。自分からそんな話題をふれるほどの話術も持たない。
 
(そういえば、一人布教したっけ)
 
 だが滝沢の存在を話すと、二人の共有時間が消えてしまう気がして圭太は言葉を飲み込んだ。
 今はまだ、二人だけの楽しい時間を奪われたくない。それに滝沢はアニメや配信の話ばかりしていて、自分もプレイを始めたとは言ってなかった気がする。紹介するにはまだ早い。だいたいあの軽薄な男と安藤太一、どことなく同じ匂いのする陽キャだ。この二人が仲良くなれば、会話下手の自分は置いて行かれるに違いない。
 そう思うと、仲を取り持つ気にもなれなかった。
 
「じゃあお礼にお前の行きたいクエストのサポートするよ。どれに挑戦する?」
「やった! じゃあ今度はここのミッションなんだけど」
「ああ素材集めの狩り。ゴブリン一体ずつやっつけるの、時間かかるからなあ」
「そうなんだよぅ。二刀流ケイタ様、頼りにしてます!」
「はいはい」
 
 いつものように狭いボックス席で肩を寄せ合い、圭太は太一と仲良くゲームに夢中になった。
 知らない誰かに見られているとか、どう思われているかなんて、何も考えないままに。 
感想 5

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