フレンドコード▼陰キャなゲーマーだけど、リア充したい

さくら怜音/黒桜

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Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友

13 自粛ムードの緩和

 こうして圭太の高校生活は急に賑やかになった。
 ちょうど自粛ムードも長期戦に入り、中だるみを迎えているせいだろうか。みんなの距離がどことなく近くなった気がする。スマホの小さな画面を数人で一緒にのぞき込んでも、マスクさえしていれば密集密接とは言われなくなってきた。
 滝沢に追加してもらった教室のグループチャットから可愛い通知音が入る。
 
<誰か宿題やってる?>
<明日の時間割教えて>
<今日のプリント見せて>
 
 取り留めない質問、だがきっと急を要するであろう案件ばかり。見かけて既読をつけた以上、無視は落ち着かない。
 調べて答えたり、手持ちの宿題プリントを写真にとって送ると、みんなからは<三枝反応早い><助かる><ありがとう>と喜ばれた。
 
(反応早いって? スマホ依存症のオタクだから当然だろ)
 
 「スマホが友だち」――とは言いたくないが、暇さえあればスマホを触ってばかりいる自覚はある。バッテリーが一日以上もったことは一度もないのだ。それほどまでどっぷり依存していたことが、ここにきて他人の役に立てるようになるとは。
 
 朝は太一と電車でゲーム。学校に着いたら滝沢やクラスメイトと他愛ない話。
 やっとクラスメイトと一緒に過ごせる環境になり、弁当の時間の殺伐とした空気も薄れつつある。
 太一に貰ったキーホルダーをかばんに着けていると、「これ何のキャラ?」と尋ねられることも増えた。FCOを知っている人間はいなくても、気づけば周りにはオンラインゲームの話をしたがる人間ばかりが自然に集まる。だからFCOのもちゃっかり布教しておいた。生きるのが上手いリア充のアドバイスは的確だなと感心する。
 
「美少女、やっぱ好きなんじゃん」
 
 滝沢と仲良くしているのが気に入らないのだろう。歩夢がアクキーのことを揶揄ってきたので、圭太は仕返しに真実を教えてやった。
 
「そいつな。女っぽい恰好してるけど、性別は男なんだぜ」
「え……えっ? 男の娘ってやつ?」
「そう、妖狐の化身。滝沢の推しだって」
「マッ、マジかよ……あいつ、こういうのが好きなのか……?」
「うーん……多分だけど、自分より小さくてかわいい子が好きなんじゃない」
 
 愕然とする歩夢の反応があまりに切実で、少し同情してしまった。歩夢はお世辞にも可愛いとは言えない、がっつりスポーツ系の筋肉質だ。滝沢を真似てお洒落な髪型をしているが、色黒のムキムキボディはごまかせない。
 
「なんでそんなこと知ってるんだよ」
「ええ……なんでって。聞いてもいないのにあいつがべらべら話すし。好きなタイプとか色々」
 
 自慢げに言えばいうほど、歩夢の機嫌が悪くなっていくのがわかる。
 ああ、この男はもしかしたら本当に、滝沢から「特別な目で」見てもらって、永遠に続く友情を得たいと思っているのかもしれない。痛いほどわかるその気持ちには少し同情する。
 奴のライバルになる気はない。だが友人になりたいと言ってもらえたことは嬉しかったし、全面的に引き下がる気もない。譲れないこの微妙な気持ち、心が狭いと怒られるだろうか。
 
 
 やがて自粛ムードが緩和され、放課後の寄り道が許されるようになった。
 相変わらず太一の本名は素知らぬ振りをして付き合っているが、向こうはケイタ、ケイタとすっかり懐いてくれている。
 
(太一はまさに癒し系って感じだよな。二組の連中もきっとそう思ってるんだろう)
 
 滝沢ほどではないが、太一の周りにもいつも知らない級友たちが群がっていて、一人でいる姿を見たことがない。 
 朝、電車の中にいる時だけは、この人気者を独り占めできる。部室に籠って下校時間すれすれまでゲームしていた時は、偶然帰りに駅で出会って一緒に帰ることもできた。
 そんな時は決まって圭太が構内のコンビニでチョコバーを買い、部活上がりの太一に差し入れする。
 
「腹減ってたんよー生き返るわ!」
 
 三十円のチョコひとつで満面の笑みを浮かべる太一の可愛い姿がなんとも愛おしく、眩しい。マスクを外してチョコを頬張る素顔も拝むことができて一石二鳥。まるで餌付けしている飼い主のようだと思いながらも、圭太はキーホルダーの代金分くらいは菓子を驕ってやろうと決意した。
 けれど――。

 突然、通学電車の指定席から太一の姿は消えてしまった。
 
 
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