14 / 33
Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友
14 フレンド解除? それとも――
しおりを挟む
**
今朝も七時三分の電車を待ちながら、FCOへログインした。ログイン中のフレンドが一覧表示される。それをスクロールし、更新し、ため息をつく。どんなに確認しても《肉食べいこ》の名前は出てこなかった。
吐いた息が冷たい外気に触れて白く浮き上がる。思わず身震いした。セーターだけではやってられない。ブレザーの前ボタンを閉じて、ふうとため息をついた。
(そういえばもうすぐ冬休みだ……)
一学期はすごく長く感じられたのに、二学期はあっという間に過ぎ去った気がする。
期末考査の期間に入り、どの部活もやっていないというのに、放課後どんなに駅を見渡しても姿を見かけない。一年二組だという滝沢の情報を信じて教室のそばまで行ってみたけれど、気後れして中を見ることすらできなかった。
(――きらわれ、た?)
だがなんの心当たりもない。最初に電車で見かけなかったときは、ついに寝坊して乗り損ねたのかと思った。
その翌日は車両を乗り間違えたかと思った。
けれど三日目には疑惑の心が芽生え。
四日目になってようやく確信した。
理由はどうあれ、避けられているのは間違いない。そして彼は電車の中だけでなく、FCOにもいない。フレンドリストに映る《肉食べいこ》のゲームキャラは、三日以上ログインされておらず、レベルも滞在マップも動いていない。
画面ごしにその名前を見ただけであの無邪気な笑顔が脳裏に浮かぶ。
ツンと鼻が痛くなった。我ながら女々しいなと苦笑する。
(連絡先知らないからどのみち会えないし。あいつとの時間はもう、終わったんだ)
わかっていた。友情なんてものは期間限定。
自分の感情だけで永遠につなぎ留めることはできないのだ。
たった一度気持ちがすれ違うだけでひび割れ、不良物件への途を辿り、最後は取捨選択されるもの。もう遊ばないゲームと同じ感覚で。
高速で変わりゆく車窓の景色を一人眺めながら、昨日まで好きだった人のフレンドコードをリストからそっと消去した。 親指ひとつで、一秒もかけずに。
早く忘れてしまおう。大丈夫。僕にはまだひとりぼっちじゃない。
FCOの世界にはサナがいる。現実世界だったら滝沢も、クラスメイトも――。
…… ……
「なあサエ知ってるか。二組から濃厚接触者が出たって」
「……え?」
「何人か休んでるらしくて、噂になってる。お前、安藤と仲良かったし気を付けた方がいいぜ」
「なんだそれ……初耳だ」
期末考査最終日の朝。滝沢から神妙な顔で話を持ち出され、圭太は困惑した。
太一があの車両に乗らなくなってから一週間は経つ。いつまでも未練がましく同じ車両に乗っていたけれど、ひとりが辛くて今日は隣の車両に乗ってしまった。
そこで滝沢と出会い、圭太は初めて気が付いた。指ひとつで消したあの子との思い出は――今までずっと二人仲良く過ごしていた時間は、奴も知っていてまだ覚えているということを。
「えっ一週間も会ってないの? まじかあ……。あいつサエより小さいから、見えなくても気にしてなかったわ。またべったりくっついてるんだと思ってたよ」
なぜ今日は違う車両に乗っているのか、滝沢もようやく把握したらしい。
「こないだも放課後一緒に帰ってたじゃん。コンビニで会ったの、覚えてるぞ」
「ん……でも僕もあれ以来、かな。毎朝必ず出会うのに」
「ということは、だ。安藤は一週間前から学校来てない可能性もあるな」
「えっ?」
滝沢の考察に驚いた圭太は、すっとんきょうな声をあげてしまった。その発想に至らなかった自分にも驚きだが、そう言われてみればそうかもしれない。いや、むしろそうであってほしい。
嫌われたわけではなく、ただ体調が悪くて休んでいるだけなのであれば、まだ望みはあるのでは。過度な期待をしてもしそうじゃなかった時は盛大に傷つくだろうけれど、今はまだ信じていたかった。
「そ、そうかもしれない。僕ら、いつも最後尾のドア付近で待ち合わせしてて。あいつが先に乗って席とっててくれるんだ」
「へえ、じゃあラインで連絡とり合ったりしねえの?」
「いや……それが……その……FCOのフレンド枠でしかつながってなくて……」
「はあ? 何それ。マジモンのゲームフレンドってことかよ。ツイッターとかインスタも知らねえの?」
「知らない。そういうの、僕あんまりやらないから。でもゲームも全然ログインしてないし……もしかしたら体調悪くて寝込んでるのかな」
「おい……マジかよ。それってまさか……」
そこまで言ってから最悪の事態に思考が傾き、圭太は思わずハッと滝沢を振り返った。同じことを思ったようで、滝沢も眉をひそめて考え込んでいるようだった。
「あいつが新型ウイルスの感染者になった可能性が……?」
「あるいは、安藤が濃厚接触者って可能性も」
「そ、そんな……まさかあいつ、入院とかしてないだろうな?」
心配のあまり声が大きくなったその言葉は、車内でざわつく声にかき消されていく。
周辺には同じ制服を着ている同級生たちがたくさんいることを、圭太はすっかり忘れていた。
今朝も七時三分の電車を待ちながら、FCOへログインした。ログイン中のフレンドが一覧表示される。それをスクロールし、更新し、ため息をつく。どんなに確認しても《肉食べいこ》の名前は出てこなかった。
吐いた息が冷たい外気に触れて白く浮き上がる。思わず身震いした。セーターだけではやってられない。ブレザーの前ボタンを閉じて、ふうとため息をついた。
(そういえばもうすぐ冬休みだ……)
一学期はすごく長く感じられたのに、二学期はあっという間に過ぎ去った気がする。
期末考査の期間に入り、どの部活もやっていないというのに、放課後どんなに駅を見渡しても姿を見かけない。一年二組だという滝沢の情報を信じて教室のそばまで行ってみたけれど、気後れして中を見ることすらできなかった。
(――きらわれ、た?)
だがなんの心当たりもない。最初に電車で見かけなかったときは、ついに寝坊して乗り損ねたのかと思った。
その翌日は車両を乗り間違えたかと思った。
けれど三日目には疑惑の心が芽生え。
四日目になってようやく確信した。
理由はどうあれ、避けられているのは間違いない。そして彼は電車の中だけでなく、FCOにもいない。フレンドリストに映る《肉食べいこ》のゲームキャラは、三日以上ログインされておらず、レベルも滞在マップも動いていない。
画面ごしにその名前を見ただけであの無邪気な笑顔が脳裏に浮かぶ。
ツンと鼻が痛くなった。我ながら女々しいなと苦笑する。
(連絡先知らないからどのみち会えないし。あいつとの時間はもう、終わったんだ)
わかっていた。友情なんてものは期間限定。
自分の感情だけで永遠につなぎ留めることはできないのだ。
たった一度気持ちがすれ違うだけでひび割れ、不良物件への途を辿り、最後は取捨選択されるもの。もう遊ばないゲームと同じ感覚で。
高速で変わりゆく車窓の景色を一人眺めながら、昨日まで好きだった人のフレンドコードをリストからそっと消去した。 親指ひとつで、一秒もかけずに。
早く忘れてしまおう。大丈夫。僕にはまだひとりぼっちじゃない。
FCOの世界にはサナがいる。現実世界だったら滝沢も、クラスメイトも――。
…… ……
「なあサエ知ってるか。二組から濃厚接触者が出たって」
「……え?」
「何人か休んでるらしくて、噂になってる。お前、安藤と仲良かったし気を付けた方がいいぜ」
「なんだそれ……初耳だ」
期末考査最終日の朝。滝沢から神妙な顔で話を持ち出され、圭太は困惑した。
太一があの車両に乗らなくなってから一週間は経つ。いつまでも未練がましく同じ車両に乗っていたけれど、ひとりが辛くて今日は隣の車両に乗ってしまった。
そこで滝沢と出会い、圭太は初めて気が付いた。指ひとつで消したあの子との思い出は――今までずっと二人仲良く過ごしていた時間は、奴も知っていてまだ覚えているということを。
「えっ一週間も会ってないの? まじかあ……。あいつサエより小さいから、見えなくても気にしてなかったわ。またべったりくっついてるんだと思ってたよ」
なぜ今日は違う車両に乗っているのか、滝沢もようやく把握したらしい。
「こないだも放課後一緒に帰ってたじゃん。コンビニで会ったの、覚えてるぞ」
「ん……でも僕もあれ以来、かな。毎朝必ず出会うのに」
「ということは、だ。安藤は一週間前から学校来てない可能性もあるな」
「えっ?」
滝沢の考察に驚いた圭太は、すっとんきょうな声をあげてしまった。その発想に至らなかった自分にも驚きだが、そう言われてみればそうかもしれない。いや、むしろそうであってほしい。
嫌われたわけではなく、ただ体調が悪くて休んでいるだけなのであれば、まだ望みはあるのでは。過度な期待をしてもしそうじゃなかった時は盛大に傷つくだろうけれど、今はまだ信じていたかった。
「そ、そうかもしれない。僕ら、いつも最後尾のドア付近で待ち合わせしてて。あいつが先に乗って席とっててくれるんだ」
「へえ、じゃあラインで連絡とり合ったりしねえの?」
「いや……それが……その……FCOのフレンド枠でしかつながってなくて……」
「はあ? 何それ。マジモンのゲームフレンドってことかよ。ツイッターとかインスタも知らねえの?」
「知らない。そういうの、僕あんまりやらないから。でもゲームも全然ログインしてないし……もしかしたら体調悪くて寝込んでるのかな」
「おい……マジかよ。それってまさか……」
そこまで言ってから最悪の事態に思考が傾き、圭太は思わずハッと滝沢を振り返った。同じことを思ったようで、滝沢も眉をひそめて考え込んでいるようだった。
「あいつが新型ウイルスの感染者になった可能性が……?」
「あるいは、安藤が濃厚接触者って可能性も」
「そ、そんな……まさかあいつ、入院とかしてないだろうな?」
心配のあまり声が大きくなったその言葉は、車内でざわつく声にかき消されていく。
周辺には同じ制服を着ている同級生たちがたくさんいることを、圭太はすっかり忘れていた。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる