離縁をなかったことにしてくれ? 今更そんなことを言われてももう遅いです

朝霞 花純@電子書籍発売中

文字の大きさ
1 / 3

第1話

しおりを挟む
「離縁はなかったことにして俺と再婚してくれ! 頼む、この通りだ!」

 ブロンテ伯爵邸の屋敷の応接室で、ある男性と女性が向かい合っている。

 男性の方は女性に必死に頭を下げている。


 男性の方はリチャード・ハウエル。

 若きハウエル伯爵だ。


 女性の方はソフィア・ブロンテ。

 ブロンテ伯爵家の出戻り令嬢で、チャードの元妻だ。


 二人は政略的事情で結婚したが、一年程前にとある事情で離縁している。

 結婚生活はたったの一年で幕を閉じた。


「あの彼女とはもう別れたのですか?」

「ああ、既に別れた。あいつがあんなに金遣いが荒くて馬鹿な女だったなんて気付かなかったんだ……! このままあいつが俺の妻だったら我がハウエル伯爵家は破産してしまう……!」

「……そうですか。私があなたの妻だった頃は私に”こんな無駄遣いをするな!”とよく怒鳴りつけていらっしゃいましたが、ようやく真実にお気づきになられたのですわね。あの頃、私はドレスや宝石類を購入していない、彼女を虐めていないといくらあなたに言っても信じてくれることは一度たりともなかったのに」

「それは悪かったと思っている。あの頃は可愛い幼馴染のエリーが可愛くて目が曇っていたんだ。だからエリーが涙を浮かべていると無条件にエリーの方を信じてしまった。今では本当にあり得ないと猛省している」

「結論から申し上げますと、私はあなたと復縁するつもりはありませんわ。復縁したくても出来ない、と言った方が正しいですが……」

「はぁ……!? 何でだよ! まだ離縁してからたった半年過ぎただけだぞ!? あっ、まさか俺と婚姻中に新たな男を作って不倫していたのか!」

「あなたじゃあるまいし、そんなこと私がするとでも? もし仮に本当にそうしていたとしても、あなたにだけは言われたくないですわ。幼馴染兼恋人の女性をメイドとしてハウエル伯爵家に囲って、私の目を盗んで肉体関係を持っていたあなたにはね」


 リチャードは幼馴染のエリー・メリング男爵令嬢と恋人同士だった。

 しかし、リチャードが政略結婚をしなければならなくなる。

 そこで二人は別れを選択することなく、リチャードはハウエル伯爵邸のメイドとして彼女を伯爵邸に住まわせた。

 勿論エリーは本当にメイドの仕事をしている訳ではなく、メイドは伯爵邸にいる為の口実だ。


 結婚式を挙げた日の初夜をすっぽかしたリチャードに不信感を持ったソフィアは、伯爵邸の使用人の噂話をこっそり盗み聞きして真相に辿り着いた。


「ねぇ、ハンナ。アランをここに呼んで来てくれる?」

 ソフィアは応接室の隅で待機していた自分専属の侍女のハンナに用件を命じる。

「畏まりました。呼びに行って参ります」


 ハンナはそれから数分後にソフィアの指名した相手を連れて応接室に戻って来た。

「ソフィア、どうしたの? 僕を呼んでいると聞いて来たのだけれど……」

 アランは艶やかでさらさらな銀髪に水色の瞳の美青年だ。


「仕事中に呼びつけてごめんなさいね。あなたを彼に紹介したくて」

「そうだったんだね。僕にはソフィア以上に大事なものはないから、いつでもソフィア優先だよ」

 アランは白皙の美貌に麗しい微笑みを乗せて甘ったるい声色でソフィアに答える。

「初めまして、ソフィーの元旦那様。僕はアラン。ソフィーの遠縁の親戚で、今はソフィーの夫だよ」

「そういう訳であなたと再婚なんて出来ません。お引き取りを」

 ソフィアは冷たく言い捨てる。

「う、嘘だろう……。お前と再婚出来なかったなんて父上と母上に何と申し開きすれば……」

「そんな事情、私には関係がありませんわ。お客様のお帰りです」

 ソフィアの掛け声で使用人が崩れ落ちたリチャードを強制退場させる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

わたしはただの道具だったということですね。

ふまさ
恋愛
「──ごめん。ぼくと、別れてほしいんだ」  オーブリーは、頭を下げながらそう告げた。  街で一、二を争うほど大きな商会、ビアンコ商会の跡継ぎであるオーブリーの元に嫁いで二年。貴族令嬢だったナタリアにとって、いわゆる平民の暮らしに、最初は戸惑うこともあったが、それでも優しいオーブリーたちに支えられ、この生活が当たり前になろうとしていたときのことだった。  いわく、その理由は。  初恋のリリアンに再会し、元夫に背負わさせた借金を肩代わりすると申し出たら、告白された。ずっと好きだった彼女と付き合いたいから、離縁したいというものだった。  他の男にとられる前に早く別れてくれ。  急かすオーブリーが、ナタリアに告白したのもプロポーズしたのも自分だが、それは父の命令で、家のためだったと明かす。    とどめのように、オーブリーは小さな巾着袋をテーブルに置いた。 「少しだけど、お金が入ってる。ぼくは不倫したわけじゃないから、本来は慰謝料なんて払う必要はないけど……身勝手だという自覚はあるから」 「…………」  手のひらにすっぽりと収まりそうな、小さな巾着袋。リリアンの借金額からすると、天と地ほどの差があるのは明らか。 「…………はっ」  情けなくて、悔しくて。  ナタリアは、涙が出そうになった。

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

処理中です...