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第1話
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レスター公爵令嬢であるクラウディアは目の前で繰り広げられている恋愛劇場をひどく醒めた目つきで見つめていた。彼女の瞳は澄んだアイスブルーである為、その視線は一層醒めて見える。
彼女の目の前の恋愛劇場とは、フレデリック第二王子殿下とメリー・ボナール男爵令嬢によるものである。フレデリックとメリーは学園のお昼休みに校庭のベンチに二人並んで座り、一緒に昼食を食べている。時々メリーがフォークに一口分の肉や野菜を刺して、せっせとフレデリックの口元に運んでいる。メリーに食べさせてもらっている状況にフレデリックは満足しているのか、とても上機嫌に見える。鼻の下を伸ばしながら、デレデレと締まりのない笑顔を浮かべているのは決してクラウディアの見間違いなどではない。クラウディアの前ではフレデリックがそんなに上機嫌でいたことは一度もない。
クラウディアも他人事ならここまで醒めた目つきで二人を見つめていないが、残念ながら第二王子殿下は彼女の婚約者で、その上、将来的にレスター公爵家に婿入りしてくる予定である。この国では男子しか爵位継承は出来ないという決まりはなく、直系であれば男女問わず爵位を継承出来る。その決まりに則のっとって、レスター公爵夫妻も一人娘であるクラウディアには婿を迎えて、彼女を女公爵として公爵家を切り盛りさせることにした。
その肝心の婿に誰を迎えるかという問題に対し、公爵夫妻は王弟であるエリオットを選ぼうとした。エリオットは現国王陛下の年の離れた弟で、容姿端麗・頭脳明晰、そして剣術の腕前も相当なものという婿に迎えるにはこれ以上の人はいないと思われるような人物だった。また、レスター公爵は王宮に財務官として出仕しており、時折王宮でエリオットと交流し、彼を気に入った公爵は自分の屋敷にも度々招待していた。その為、クラウディアとエリオットはお互いに面識があり、公爵から見ると良い組み合わせに見えた。
時期を見て、公爵夫妻は国王陛下にクラウディアの婿としてエリオットを迎えたいと打診したが、王家はそれを却下した。現国王夫妻は自分達の息子であるフレデリックの婿入り先としてずっとレスター公爵家を狙っていたからだ。特に王妃がフレデリックを可愛がっており、彼の婿入り先は最高の環境を選んであげたいと思っていた。レスター公爵家は広大な領地持ちで、領地経営も安定している為、財政状況は非常に良く、また、公爵家は王家を除くと最も家格が高い。
結局、レスター公爵夫妻は国王夫妻からエリオットではなくフレデリックを婿として迎えて欲しいという返事を受け、仕方なしにそれを了承した。相手は王家で、王家の意向に背くことは貴族として得策ではなかったからだ。因みにエリオットとフレデリックは年齢は近く、5歳しか変わらない。そして、フレデリックとクラウディアは同い年である。
そのような経緯でクラウディアとフレデリックの婚約は結ばれたのに、ここに来てフレデリックはメリーと懇ねんごろな関係になった。正直に言うとクラウディアはエリオットと婚約したかった。幼いながら5歳も年上のエリオットに心惹かれていたのだ。大好きなエリオットと婚約できず、フレデリックと婚約することになった時、クラウディアはエリオットのことは諦めて、曲がりなりにも婚約者となったフレデリックのことを大切にしようと思っていた。しかし、フレデリックは偉そうにするばかりで少しもクラウディアを婚約者として大切にはしてくれなかった。そして学園に入学して一年後、ひょんなことからフレデリックはメリーと出会い、彼女を恋人として扱い始めた。
それから数日後の放課後。クラウディアは先生にクラス全員分のレポートを集めて職員室まで提出するよう頼まれていた為、レポートを手に職員室へ向かっていた。その道中に、普段は空き教室として使用されている部屋の前を通り過ぎた。教室のドアは完全に閉じられた状態ではなく、微妙に空いていた状態であった為、部屋の中の声がクラウディアの耳まで届いた。
「フレデリック殿下。学園の卒業後も殿下はこのままメリー嬢との関係は続けるおつもりですか?」
「あぁ、勿論続ける」
「殿下の婚約者はレスター公爵令嬢でしたよね? 公爵家に婿入りするのにメリー嬢との関係は継続なのですか?」
「俺は公爵家に婿入りはするが、愛人としてメリーを囲う。公爵家も王子である俺を婿として迎えることができるんだ。それだけで有り難がるはずだ。だから愛人を囲っても誰も文句など言わないだろうし、言わせない」
「流石、殿下ですね…」
その会話はフレデリックと彼の取り巻きの内の一人との会話だった。クラウディアはそれ以上二人の会話を聞きたくなくて、会話が聞こえる場所から立ち去った。
(私は好きだった人との婚約を諦めてあなたと婚約したのに、あなたは私と婚約しながらも好きな人と恋人関係になるなんて。もういいわ、あなたがそうするなら私も好きなようにさせてもらうから)
彼女の目の前の恋愛劇場とは、フレデリック第二王子殿下とメリー・ボナール男爵令嬢によるものである。フレデリックとメリーは学園のお昼休みに校庭のベンチに二人並んで座り、一緒に昼食を食べている。時々メリーがフォークに一口分の肉や野菜を刺して、せっせとフレデリックの口元に運んでいる。メリーに食べさせてもらっている状況にフレデリックは満足しているのか、とても上機嫌に見える。鼻の下を伸ばしながら、デレデレと締まりのない笑顔を浮かべているのは決してクラウディアの見間違いなどではない。クラウディアの前ではフレデリックがそんなに上機嫌でいたことは一度もない。
クラウディアも他人事ならここまで醒めた目つきで二人を見つめていないが、残念ながら第二王子殿下は彼女の婚約者で、その上、将来的にレスター公爵家に婿入りしてくる予定である。この国では男子しか爵位継承は出来ないという決まりはなく、直系であれば男女問わず爵位を継承出来る。その決まりに則のっとって、レスター公爵夫妻も一人娘であるクラウディアには婿を迎えて、彼女を女公爵として公爵家を切り盛りさせることにした。
その肝心の婿に誰を迎えるかという問題に対し、公爵夫妻は王弟であるエリオットを選ぼうとした。エリオットは現国王陛下の年の離れた弟で、容姿端麗・頭脳明晰、そして剣術の腕前も相当なものという婿に迎えるにはこれ以上の人はいないと思われるような人物だった。また、レスター公爵は王宮に財務官として出仕しており、時折王宮でエリオットと交流し、彼を気に入った公爵は自分の屋敷にも度々招待していた。その為、クラウディアとエリオットはお互いに面識があり、公爵から見ると良い組み合わせに見えた。
時期を見て、公爵夫妻は国王陛下にクラウディアの婿としてエリオットを迎えたいと打診したが、王家はそれを却下した。現国王夫妻は自分達の息子であるフレデリックの婿入り先としてずっとレスター公爵家を狙っていたからだ。特に王妃がフレデリックを可愛がっており、彼の婿入り先は最高の環境を選んであげたいと思っていた。レスター公爵家は広大な領地持ちで、領地経営も安定している為、財政状況は非常に良く、また、公爵家は王家を除くと最も家格が高い。
結局、レスター公爵夫妻は国王夫妻からエリオットではなくフレデリックを婿として迎えて欲しいという返事を受け、仕方なしにそれを了承した。相手は王家で、王家の意向に背くことは貴族として得策ではなかったからだ。因みにエリオットとフレデリックは年齢は近く、5歳しか変わらない。そして、フレデリックとクラウディアは同い年である。
そのような経緯でクラウディアとフレデリックの婚約は結ばれたのに、ここに来てフレデリックはメリーと懇ねんごろな関係になった。正直に言うとクラウディアはエリオットと婚約したかった。幼いながら5歳も年上のエリオットに心惹かれていたのだ。大好きなエリオットと婚約できず、フレデリックと婚約することになった時、クラウディアはエリオットのことは諦めて、曲がりなりにも婚約者となったフレデリックのことを大切にしようと思っていた。しかし、フレデリックは偉そうにするばかりで少しもクラウディアを婚約者として大切にはしてくれなかった。そして学園に入学して一年後、ひょんなことからフレデリックはメリーと出会い、彼女を恋人として扱い始めた。
それから数日後の放課後。クラウディアは先生にクラス全員分のレポートを集めて職員室まで提出するよう頼まれていた為、レポートを手に職員室へ向かっていた。その道中に、普段は空き教室として使用されている部屋の前を通り過ぎた。教室のドアは完全に閉じられた状態ではなく、微妙に空いていた状態であった為、部屋の中の声がクラウディアの耳まで届いた。
「フレデリック殿下。学園の卒業後も殿下はこのままメリー嬢との関係は続けるおつもりですか?」
「あぁ、勿論続ける」
「殿下の婚約者はレスター公爵令嬢でしたよね? 公爵家に婿入りするのにメリー嬢との関係は継続なのですか?」
「俺は公爵家に婿入りはするが、愛人としてメリーを囲う。公爵家も王子である俺を婿として迎えることができるんだ。それだけで有り難がるはずだ。だから愛人を囲っても誰も文句など言わないだろうし、言わせない」
「流石、殿下ですね…」
その会話はフレデリックと彼の取り巻きの内の一人との会話だった。クラウディアはそれ以上二人の会話を聞きたくなくて、会話が聞こえる場所から立ち去った。
(私は好きだった人との婚約を諦めてあなたと婚約したのに、あなたは私と婚約しながらも好きな人と恋人関係になるなんて。もういいわ、あなたがそうするなら私も好きなようにさせてもらうから)
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