【R18】あなたが私を蔑ろにするのなら私も好きなようにさせていただきます

朝霞 花純@電子書籍発売中

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第2話

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 その後すぐに、クラウディアは父親であるレスター公爵に急ぎの用事があるという理由で早退する届けを学園に提出して、王宮へと向かった。そして、馬車に揺られて約半刻後、彼女は王宮の門の前でレスター公爵家の馬車から降りた。王宮の門に駐在している門番にエリオットを訪ねて来た旨を伝えると、門番はエリオットの侍従を呼びに行かせ、クラウディアは侍従と一緒にエリオットの私室へ向かった。

 やって来たクラウディアをエリオットは温かく歓迎した。彼女が彼を訪ねて来るということで、彼の私室にはメイドが紅茶と茶菓子を準備して待機していた。エリオットがクラウディアをエスコートして、二人で並んでソファーに腰掛けると、メイドが紅茶を給仕する。

「やぁ、クラウディア。君が約束も無しに僕を訪ねて来るなんて珍しいね。嬉しいけれど、どうしたの?」
「エリオット殿下にお願いがありまして……」
「君がそんな思い詰めた表情をするなんて珍しいね。いいよ、僕に出来ることなら何でも願いを聞くよ」
 エリオットの″何でも願いを聞く″という言葉にクラウディアはアクアマリンのようなアイスブルーの瞳を煌めかせた。
「嬉しいですわ! では、私のお願いをお伝えしますわね。私の処女をエリオット殿下にもらっていただきたいのです」

 クラウディアの発言にエリオットは優雅に飲んでいた紅茶を思わず吹き出しそうになる。そして、彼は頬をほんのり赤く染める。

「なっ、な、何でいきなりそんなことを…! ……というか女の子がそんなことを年頃の男に言っちゃ駄目だって!」
「私とフレデリック殿下が婚約した経緯はエリオット殿下もご存知ですわよね?」
「もちろん知っているよ。僕も当事者の一人でもあるしね」
「王家が無理矢理私の婿の座にフレデリック殿下を押し込んだのに、フレデリック殿下は恋人の男爵令嬢に夢中で。レスター公爵家に婿入りしてくる立場なのに私を蔑ろにしていますの。この婚約自体は愛があって婚約したのではなく、貴族の事情で決められたものだから、愛は別に求めていないですわ。でも婚約している以上、相手に誠実ではあるべきだと思うのです」
「そうだね。婚約していながら恋人を作るのは不誠実だ」
「だから、私、思ったのです。そちらがそうするなら、私も好きにしようと」
「それで僕に処女をもらって欲しいと? でも、クラウディア。処女じゃなくなったら色々とまずいんじゃないかな? 貴族の女性は結婚するまで処女でいることが求められていると思うんだけど……」
「確かにそうですわね。でも、私にとってはどうでも良いのです」
「どうでも良いってどういうこと?」
「私は婚約していながら他の女性と恋仲になるような婚約者など不要ですわ。そんな婚約者と結婚するつもりはございません。いくら相手が王家であっても、婚約解消させていただこうと思いますの。原因は彼にあるのだから王家も拒否なんて出来ないでしょう」

 クラウディアはそこで一旦言葉を切り、ティーカップに口付ける。そして、紅茶で喉を潤した後、話を続ける。

「でも、フレデリック殿下とは婚約解消しても、次の婚約者には私からは誰も選びません」
「どうして?」
「婚約解消した後でも確かに私の婚約者になりたい者は沢山いるでしょう。私と結婚すれば公爵にはなれずとも公爵家の一員。家を継げない次男・三男にとっては美味しい話だと思います」
「次の婚約を考えているならクラウディアのお願いは尚更聞けないよ」
「私が本当に婚約したかった相手を押し退けて無理矢理私の婚約者になったのに、自分自身はやりたい放題。いくら殿下自身の意思で私と婚約した訳ではないにしても、結果的に婚約は成立している以上、同意ではないとは言わせませんわ」
「クラウディアが本当に婚約したかった相手は誰なの?」

 エリオットは食い気味で尋ねる。

「それは貴方に決まっていますわ、エリオット殿下。公爵邸にいらしていた頃から貴方をずっと慕っておりました」
 クラウディアの言葉を聞いて、エリオットは歓喜する。
「僕達、同じ気持ちだったんだね。僕もずっとクラウディアのことが好きだったんだよ。レスター公爵家を訪問する度に君に会えると楽しみにしていたんだ。普段あまり笑わないクラウディアが僕だけには満面の笑みでお出迎えしてくれる様子がとても可愛くて。気づけば恋に落ちていた」
「エリオット殿下……!」

 両想いだとわかった二人は思わずお互いが相手にギュッと抱きついた。しばらくそうしていたが、クラウディアが口を開く。

「話を元に戻しますと、フレデリック殿下との婚約はお父様達の意向・私の気持ちを無視して結ばれました。彼側の瑕疵でこの婚約が解消されても、次の婚約は足元を見ている者を含め、私の意向に添わない方がきっと選ばれる。公爵家の一人娘としては結婚しない訳にはいかないこともわかっております」
「次の婚約者候補に僕は入っていないの?」
「貴方の家族を悪く言いたくはないのだけれど、王家は私と貴方の婚約など認めて下さらないと思っておりますわ。だからせめて初めては自分の好きな人に捧げたいのです」
「……わかった。僕がクラウディアの処女をもらうよ。そうと決まれば奥の部屋に行こう」

 エリオットは立ち上がり、今いる部屋の奥にある部屋にクラウディアの手を引いて移動した。その時、侍従に一言声をかける。

「今から彼女と奥の部屋で過ごす。だから余程の緊急事態が発生した場合以外、誰も部屋に通さないで」
「畏まりました」

 奥の部屋と聞いて侍従は全てを察した表情になり、承知した意を示す言葉を返した。
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