僕の異世界転移物語 僕は【魔王】で【モンスターメイク】

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 魔王

第2話 親切な人達

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「ではこちらの箱に服を入れてください。代わりの服はこちらですのでお着換えください。外でお待ちしておりますので着替えたらお声がけくださいね」

 ゼボリさんのおかげで簡単に町に入ることが出来た。馬車が止まって通された屋敷に入ると一室に案内される。
 彼に言われるまま、綺麗な洋服に着替えてパジャマを箱の中に入れる。代わりの服も綺麗だけど、確かにパジャマの方がきめ細かいかな。でも、この世界の服が手に入って良かった。これで可笑しなものを見る目はされないだろう。
 着替え終わるとすぐにゼボリさんを呼ぶ。彼はニッコリと微笑んで革袋を手渡してくる。

「金貨一枚を用意したのですが町で使うならば銅貨と銀貨の方がいいでしょう。両替をしておいたのでお使いください」

 ゼボリさんがそう言うので革袋の中を見ると銀貨と銅貨がぎっしり入ってる。一円玉くらいのコインが百枚ずつくらい入ってる。

「大銀貨と大銅貨になっています。少し色を付けてみたのですが大丈夫ですか?」

「あ、はい。えっと、恥ずかしいんですがこれってどのくらいの価値があるものなんですか?」

 ゼボリさんが心配しながら聞いてきた。大人としてお金の価値を聞くのは恥ずかしいけれど、知らぬは一生の恥、聞くは一時の恥。ゼボリさんにすべて聞いてしまおう。
 ゼボリさんは不思議そうに首を傾げながらもしっかりとお金の価値を教えてくれる。通貨はこの大銅貨よりも小さな銅貨が一番下の通貨となってる。銅貨から大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大白金貨がある。百枚で次の位になるからゼボリさんは革袋に百枚ずつ入れてくれてたってわけか。ってことはこのなかには金貨一枚分の大銀貨と銀貨一枚分の大銅貨が入っているわけだな。
 説明を聞いて納得しているとゼボリさんが顎に手を当てて考え出す。少しすると彼は口を開いた。

「ふむ、服装で可笑しいと思っていましたが。もしやあなたは【旅人】なのでは?」

「【旅人】?」

 ゼボリさんの言葉に首を傾げる。旅人っていうのは僕みたいな異世界から来た人のことなのかな? 普通に存在してるってことか?

「この世界には別の世界から来た人がいます。その方々のことを【旅人】というのですが、カズヤさんもそれなのではないかと思ったのです」

「えっと」

 ゼボリさんの確信をついた言葉に考える。異世界の人は特別な力を持っていることが多いのかもしれない。そう言った小説や漫画が多いのはその世界から帰ってきた人が書いてるのかもしれないからな。
 そう考えると言わない方がいいのか。

「安心してください。私の知り合いにも【旅人】がいます。口外はしませんから正直に話してみてください」

 ゼボリさんの言葉に少し安心してしまう。だけど、まだ信用するには早いよな。

「まあ、その様子をみただけで異世界の方だというのはわかりました。何か困ったことがありましたらすぐに私の所に来てください。お助けいたします」

 残念そうに俯くゼボリさんはそう言うとパジャマの入った箱を手に持って部屋を後にしようとする。彼は扉を開いて何か忘れていることがあったのか、僕へと声をかけてくる。

「お金はあるとはいえ。すぐになくなります。冒険者ギルドという働き口がありますのでそこに行くといいでしょう。ゴミ拾いから魔物退治まで、誰でも出来る仕事を斡旋してくれます。では私はこれで」

 話が終わるとすぐに部屋を後にするゼボリさん。とても優しくていい人だった。正直に話すべきだったかな。でも、優しい人だからこそ怪しいというし、用心した方がいいだろう。

「冒険者ギルドか、王道だな」

 ゼボリさんの屋敷を出て呟く。石造りの道路に石造りの家々が並ぶ町。馬車も結構通る道路だな。冒険者ギルドは町の入り口に近い広場にある。この町は結構大きいから広場も沢山あるみたいだな。

「おお! 雰囲気あるな~」

 冒険者ギルドの前につくと思わず声をあげてしまう。漫画で見たことのある建物。両開きの扉で中が少し見える作りになってる。

「田舎者が! 邪魔なんだよ!」

 ギルドの入り口で止まっていると背中を押されて悪態をつかれる。ギルドに入っていったってことは冒険者ってことか。何だか嫌な感じだな。冒険者は何人かでつるむのが主体なのかな? 今の人達は5人だったけど。まあ、僕は一人だから関係ないか。

「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」

 冒険者ギルドに入ると床を掃いていた長い金髪の女性が声をかけてくる。大体の人達は金髪だったけど、この人は更に輝いて見えた。

「冒険者になりたくてきたんですが」

「登録ですね。ではこちらにおかけしてお待ちください」

 僕の言葉を聞いて彼女はニッコリと微笑んだ。受付を指さしたので僕は素直に椅子に座った。

「おいおい、田舎者が登録してるぜ」

 椅子に座って待って居るとそんな声が聞こえてくる。声のする方を見ると併設されている酒場に、さっきの男達がニヤニヤして僕のことを見てきていた。いい感じのしない人達だな。

「気にしなくていいですよ。誰でも最初は慣れないものですからね」

 受付に座った女性がそう言って慰めてくれる。彼女の言葉を聞くとあの人たちは常習犯なんだろうことが伺える。彼女は呆れてため息をついてるしね。

「私はセリスと申します。これからあなたを担当させていただきます」

 セリスさんは自己紹介をしてお辞儀をする。僕も同じようにお辞儀をすると名前を名乗る。
 
「あ、はい。僕はカズヤです」

「カズヤ様ですね。ではこちらのカードにお名前をご記入ください」

 カードを受付の出すセリスさん。これが冒険者カードってやつか。これで身分証明が出来るようになるのかな?

「こちらのカードを町に入るときに提出していただくと身分証明を行うことが出来ます。冒険者は町の防衛を行うこともあるので、入るのに優遇されて早く入ることが出来ます」

 セリスさんの説明に感心して声をあげる。冒険者って兵士みたいな役割にもなっているのか。それだけこの世界が物騒ってことか。

「早速依頼を受けますか?」

 セリスさんが首を傾げて聞いてくる。お金はあるから受けなくてもいいんだけど、何もしないのも暇だよな。でも、魔物なんかと戦うのは嫌だな。あんなゴブリンみたいなやつとかと戦うなんて考えるだけで嫌だ。

「えっと、武器とかないので魔物退治とかはなしで」

「では配達の依頼とかどうですか? 依頼の品を届けて欲しいんです」

 配達かそれなら僕でも出来るよな。町の様子も見て回りたいと思ってたんだ。丁度いい。

「じゃあ、それでお願いします」

 セリスさんに頷いて答える。彼女は喜んでくれて受付の奥の扉の中に入っていく。荷物を持ってきてくれるんだろうな。

「ははは、田舎者は魔物も退治できないのか。配達なんかやってやがる」

 セリスさんを待って居るとそんな声をかけられる。僕は無視して彼女の帰りを待った。
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