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第三章 建国

第六話 シュミット再び

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「あ~~ジーニ様~」
「ちょ、デシウス。胸が」
「やめてよ。ジーニちゃんが窒息しちゃう」

 僕がシュミットの教会のテラスに舞い降りるとすぐにデシウスが抱き着いてきた。それをみてフローラちゃんが引きはがそうとするんだけど二人の胸が交互に僕にあたって何とも言えない状況に。

「コラ!二人共ジーニが困ってるじゃない。まったく」

 ソフィアさんが僕を開放してくれた。だけど何だか僕を見つめている。

「まったく本当にまだ赤ん坊なのね。立ってはいてもちっこい」

 ちょっとちょっと久しぶりに会ったのに何て事だ。ソフィアさんは僕を見て呆れていた。

「も~ソフィアそんな事言っちゃジーニさんも可哀そうでしょ。でも立てるようになったのね。偉いわ~」

 ソーアさんが僕の頭を撫でて話す。何だか明るくなっていて良かった。うむ、撫でられるのも悪くない。

 もう前のソーアさんじゃないんだな。僕は少しその姿にホッとした。前は何だか機械みたいな人だったから。

「ふふ、テラスで話すのも何なのでこっちにどうぞ」

 ソーアさんは優しく笑って僕をテラスからすぐの部屋に案内してくれた。




「ジーニ様のにほい~」
「抱っこは私がするの~」
「アウ」

 折角人数分の椅子があるのにデシウスはすぐに僕を抱き上げて椅子に座る。何だか懐かしいけど僕はデシウスの膝の上に座ることになった。

 フローラちゃんは横からガミガミと文句を言っている。話が進まないよ。

「フローラ、二人を困らせてはダメよ。あなたはこれから長い間ジーニちゃんと一緒に居られるんだからいいでしょ?、今はデシウスさんのものよ」

 フェリアさんが椅子に座りながらフローラちゃんを諭した。いやいや僕は物じゃないよ。

 フローラちゃんは「う~。は~い」と不貞腐れて了承して隣に座った。

「ごめんなさいねジーニちゃん。それで来てもらったのは他でもないんだけど」
「え?デシウスからはタオルの事しか聞いてないよ」
「....え?デシウスさん・・・テレパシーメールにはなんて書いたの?」

 テレパシーメールとはツヴァイお父様がアドスバーンと戦争していた時にお母様と連絡しあっていた通信機の事。魔道具の一種なんだけど魔力で通信して手紙を書かせるシステムみたい。僕もよくは知らないんだ。

「えっと~。ジーニ様の匂いが足りませんなのですぐに来てください。ハァハァだったかな~」
「「「「「・・・・」」」」」

 文面が全然違うよ。タオルが10回以上とジーニ様が20回それに匂いが30回くらい連続して書かれてたよ。

 でも直訳するとデシウスの言っている事はあっているのかもしれない。一種の暗号かな。

「デシウスさんに頼んだのが馬鹿だったみたい。でも来てもらえればそれでいいわね。実は孤児院にする為に貧民街を改造しているのだけど・・・」

 フェリアさんが今、おこなっているシュミット改造計画を話していく。僕はウンウンと頷いて話を聞いている。

 すると奥の部屋からベンジャミンさんが入ってきて更に話が続いて行く。

「とまあ、土地をめぐって金のつり上げがされてしまってね。少しでも孤児院を豊かにするには節約していかなくちゃいけないからね。少しずつ進んでいるとはいえ、畑の方はまだまだ収穫出来るわけもないし」

 シュミットは鉱山地帯ではないのでどうしても農業中心になってしまう。なのですぐにお金に出来る物もないので結構切羽詰まっているみたい。

「その土地の持ち主は誰なの?」
「ロクーデと言うアルサレムから落ちのびた元伯爵とか言っていたわね。あの人私を舐めまわすように見てきて気持ち悪かったわ」
「「・・・」」

 僕はデシウスを見上げる。するとデシウスは嫌そうな顔で頷いた。

 まさかまだここにいたとは、それもお金が無くなりそうとか言っていたのに。でもどうやら商才はあるみたい、だって貧民街の土地を買っていたって事だもんね。そこは正直褒めるしかない。また僕のお腹をくらいたいのか、よ~し。

「お二人はロクーデを知っているのですか?」
「ええ、ロクーデにはアステリア家も痛い目にあわされました」

 僕はロクーデの話をすべて話す。このシュミットで起きた事も。

「まあ、そうだったのね。でもローズさんがロクーデについている理由がわかりました」
「ええ、たぶんあの事でしょうね。お金絡みなら」

 ソフィアとフェリアが顔を見合わせて話していく。

 どうやらまだローズさんはロクーデに付き合わされているようだ。大丈夫なのかなと心配していたけどどうやら一人で護衛しているわけじゃないみたいで安心した。

「ローズさんの出生は知っていますか?」
「いえ、僕は全然わかりません」
「確かシュミットよりも東の方と聞きましたが」
「そうなんです。シュミットから東の港街シーレイクから更に海を渡った先のグリンベイルンの孤児院で生まれたのよ」

 え~そんな遠くの出身者だったの。ってことはシリカさんもそうなのかな。あ~ちゃんと聞いておけばよかった。故郷に帰りたかっただろうな。何だか心が痛む。

「孤児院で生まれたというのはどういう事ですか?普通孤児院に預けられるのでは?」

 言葉の間違いだと思ったデシウスは疑問符として投げかけた。

「間違いではありません。ローズさんは孤児院で働いていた一人の娘から生まれたのです。それも夫なしで」
「「え」」

 フェリアさんの言葉に僕とデシウスは呆然とした。え~だっておしべとめしべがないと子供って無理だよね。え~。

「その生んだ娘は?」
「子供を残して何処かに行ってしまったみたいです。孤児院や街ではその娘を気持ち悪がり迫害したようです。それを嫌って逃げるようにいなくなったようですよ」

 そうだよね。この世界では嫌われちゃうよね。仕方ないか。

「それでその孤児院を守る為にロクーデの片棒を担いでいるわけか」

 ベンジャミンさんは感慨深く俯く。

 ローズさんは自分の故郷を守る為に戦っているんだね。それで装備何かもそれほど豪華な物じゃなく見栄え重視の物を使っていたんだ。私服もおしゃれで綺麗だったけどな。

「ロクーデはローズとの契約が終わるまでは売らないでしょう」
「それはいつなんですか?」
「一年だそうです」
「「「「ええ!?」」」」

 それじゃ、それまで孤児院を作れないって事だよね。本当にローズさんは今の状況を分かっているのかな。自分が孤児院で育っているのに孤児院の必要性をわかっていないわけがないよね。

 今は貧困な子供達は教会で保護されているみたいだけどこのまま一年もの間匿うほどの力はシュミットに残っていないと思うんだ。孤児院を作って雇用も作る。孤児院を起点に色んな人達が集まってきて活気が出てくれば良い街になると思うんだけどな。

「取りあえずローズさんと話をしてみようかな」
「そうですね。それがいいと思います」

 僕はみんなにそう言ってデシウスの膝から降りてロクーデの仮住まいに向かうことにした。



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