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第四章 ルインズガル大陸

第三十二話 ガッジュ改革

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 ガッジュの町で僕らは戦い始めた。そして今正に階級による圧制を目のあたりにしています。

「流石牛の獣人さん。パワーとガッツが凄いね」
「!?」

 僕が獣人さん達の折り重なる突撃、スクラムって奴だねそれを片手で止めると獣人さんたちの顔が歪んでいく。ただでさえ子供の僕に攻撃したことで自分を攻めていたのにまさか止められるとは思っていなかったんじゃないかな?。自尊心さえも崩された事で彼らは涙を流していく。

「チィ!。役立たずが!。これでもくらえ![エアーショット]」
「おっとっと」
「痛!」

 族長の魔法が僕へと向かってきた。うまく避けたつもりだったんだけどニーナちゃんにかすったみたい。

「お前は....」
「何じゃ!儂が儂の物に何をしようと勝手じゃろ!!」

 ダメだ。抑えられない。

 僕の体から黒い何かがもれ出ていく。皆僕の殺気を感じて縮こまっていく。族長はプライドで立ち続けているけど息子はダメみたいでその場にうつぶせる。

「ジーニちゃん。のまれないで、そんなに力を出さなくても大丈夫だよ」
「ああ、フローラちゃん、でも抑えられそうにないよ。今度は大丈夫。気絶はしないさ。覚悟を決めたよ」

「何じゃ!」

 僕は族長へと手をかざす。そして魔力の塊を族長の胴体へと撃ち放つ。

「[イレイザーガン]!」

 族長の上半身が音も無く消し飛んだ。族長の後方にあった家の壁がマンホール位の大きさにえぐられている。僕の放った魔力の塊が通った後だろう。僕はマンホールほどの大きさの魔力の塊を面の方向で撃ち出したんだ。それはとても威力があったみたいでそれが通ったあとの壁を覗くとその後の家や地面をえぐっちゃった。人がいなくてよかった。 

 ドサッと族長の上半身の無くなった体が息子の方へと倒れた。息子は涙目でその体を揺さぶるが反応はかえってこない。

「ジーニちゃん大丈夫?」
「...うん、大丈夫かな?...」

 僕は上空に飛び上がり周りを見下ろす。そして拡声魔法で宣言する。

「急ですが族長は死にました。みんな中央へ集まってください」

 僕がそう言うと半信半疑で族長の家のある町の中央へとゾロゾロとあるいてくる。

「これで全員ですか?」
「いえ、たぶん女達が....」

 ”イモムシ”と言われていた牛の獣人のモウザさんが答える。どうやら子供な僕には言えないような事をされていた人達がいたみたい。それで歩けないほどの精神状態になってしまっているらしい。

 まったく....何て人達だろうね。僕は町全体に[ヒール]を唱えた。だけど精神は治せないのであとは本人たちの意思に任せるしかない。みんなとても驚いていた。中には僕を拝んでいる人もいて何だか照れ臭かった。

「これからこの町は変わります。それに至って今までの上の人達を面接しますので呼ばれたら来てください。モウザさんにはもう少し付き合ってもらいますよ。あとドルザ君もね」
「はい、喜んで」
「....」

 お父さんが死んでしまって意気消沈のドルザ君にも協力してもらおうと思ったけどやっぱりだめかもしれない。あんな生意気な態度だったのに今は死んでいるかのように反応がない。

「ドルザ君はみんなに殺されたいの?」
「!?」

 僕の問いにドルザ君はびっくりしている。僕にではなくみんなになのである。今までのうっぷんはドルザへと向くだろうそして最上級の恨みが彼を襲う。それを少しでも和らげようと司法取引として付き合ってもらおうと思ったんだけどダメならしょうがないよね。

「わかった!、協力する。だから命だけは」
「だってさ。みんなドルザ君を今は許してあげて。協力次第では僕が許さないから安心してね」

 その言葉を聞いた下位の階級の人達が胸を撫でおろす。上の階級だと思われるいい服を着ている人達は腕を組み不服のようだ。

「じゃあ、皆さん逃げないで来てくださいね。ちなみに逃げると族長のあとを追うことになると思うので。じゃあモウザさんお願いします」
「あ、はい、では一番上の階級”竜”の位の方から」

 僕が脅迫するといい服を着ている人達がビクッと怯えて俯いた。そしてモウザさんは階級を読み上げる。あとあと分かったんだけど階級は上から竜、獣人、人、蟻、芋虫と続くらしい。

 小屋でいいように扱われていた人は芋虫の位の人達で食い物にされる階級の人達だ。すなわち芋虫とは食べ物という事らしい。だからか草食動物の獣人が多かったのだろう。

 ”蟻”は働き蟻からきている。彼らは適したスキルを持っている者達で構成されている。回復魔法や建築、更には農作物などのスキルである。彼らは倒れるまで使われ捨てられる存在。ある意味一番下な気がする。

 ”人”という位もあったみたいだけどこれは金でその地位を手に入れられた人達だ。下の者には偉そうにして上にはペコペコ何だか懐かしい...。

 ”獣人”はそれこそ何でもありの階級だ。法のないこの町では何をやってもいいと言われているらしい。なので”人”の人達は彼らには絶対に逆らわなかったとか。

 そして”竜”、彼らはこの町の支配者だ。支配しているのでそれほど好き勝手はしなかった。だけど外との取引で獣人を見繕っていたみたい。お金はそこから入って来ていたんだってさ。自分達の仲間を売るなんて最低だね。

 そして僕はため息をつきながら面接を開始していく。

「私は族長の下で働いていました。ですが私服を肥やした事はございません」
「この人の言ってる事は本当?」
「はい、この方は私達にも優しかった。そしてシザクさんの両親は最下級の”スミ”です。両親を守る為に働いていました」

 中にはこんないい人もいたよ。よかった全員腐っていなくて、何とかこの町を存続させるにはこういう人達に任せないといけないからね。

「何で私がこんな子供と女に調べられんといかんのだ」
「典型的だね。これは聞かなくてもわかる」
「...ええ、恥ずかしい限りですが」

 トカゲの獣人などの爬虫類系の人達はみんなこんな感じこれは族長がトカゲの獣人であった事と関係ありそうだね。

「俺達トカゲの獣人はこの町を作ったって言われてるんだ。外の世界で蔑まれて嫌われた獣人に匿う為に最初作られたんだ..」
「ふ~ん凄いんだね。じゃあ君達、今の人達はそれを忘れて過ごしていたんだね」
「....」

 ドルザ君は今までの歴史を語った。だけど正直昔の話なんか興味ないよ。今生きている人達を蔑んだ君達を罰しているんだ。それが分からないのであるならば...。

「「ニーナ!!」」
「お父さんお母さんも!」

 どうやらニーナちゃんのお父さんお母さんが見つかったみたい。よかった生きていてくれて。ニーナちゃん親子は嬉しそうに泣いて抱き合ってる、いいな~何だか僕もお父様お母様に甘えたくなっちゃった。

「ジーニ様ありがとうございます。ニーナから聞きました。ニーナはグリンベイルンへと売られたと」
「私達の考えはとてもあまいものでした。この町から外に出せば安全だと思ってしまったのです。ですが違ったようです。私もあと少し遅かったら外へと売られるところでした」
「お父さんもお母さんも助かってよかった!。ジーニ様ありがとうございます」

 ニーナちゃん親子はとても仲よさそうに手を握り合ってる。

「ニーナちゃんはどうする?。この町に戻る?それともアステリアに引っ越しする?」
「..ジーニ様が許してくれるならお父さんとお母さんと一緒にアステリアに行きたい。いいかな?」
「うん、いいんじゃないかな?僕は大丈夫だよ。お二人は大丈夫ですか?」
「「はい!喜んで」」

 ニーナちゃん達はピョンピョンはねて喜んでる。今からこの町は大変なことになるからね。中には出ていく人も出るんじゃないかな?。

 そして面接が続き最後の人を見送ると僕はため息をついた。

「半分以上が上の人でそれの更に半分が腐ってた。それで中間の階級の人達も半分腐ってて。下位の人達の大半の女性が精神的ストレスであぶない....なんだか違う意味の限界集落だね...」

 僕の言葉に俯いてるドルザ君とモウザさん。しかしモウザさんに責任はないのでモウザさんに頼むしかない。

「これから町を立て直すには腐っている物をどうにかしなくちゃいけない。腐ったものはもう元には戻らないかもしれないけど強制的に働かせることは出来るよね....」

 僕は言葉をかける。とても残酷な言葉だけどアステリアと一緒で奴隷紋を使うしかないかもしれない。そう結論付けるとモウザさんは頷いた。

「そうですね。私も期待していたのですがこんだけ腐っていては....しかし這い上がれないのはよくありません。ノルマを決めてある程度の昇格のような仕組みを考えていきます」
「うん、大丈夫だね。モウザさんにこの町を任せるよ。何か必要ならアステリアへ連絡頂戴」
「はい!ありがとうございます。どうにかこの町をみんなの誇りに出来るように立て直していきます」

 面接にとても時間がかかった為に今日の賢者捜索は中断いたします。つかれた~。
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