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第五章 兄妹の絆
第三十話 いつだって正義と可愛いが勝つ!!
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「お前達!大丈夫か!!」
「ああ~ジャンヌ!ライ!レイ!!」
ツヴァイお父様とメリアお母様が帰ってきた私達を抱きしめてくれた。私は少し安心して涙が溢れたけどまだ終わってない。
「私達は大丈夫だよ。アダマイオスが」
「ああ、見ていたよ。ゾンビ達が急に進行方向を変えたんだ。みんなアダマイオスを目指してる。追撃しているが1万以上のゾンビ達だ。とてもじゃないが全員は倒せん...」
ツヴァイお父様は最悪を想定して話していく。
アダマイオスがやろうとしている事は自分の強化のようで、ゾンビ達を取り込むことであの氷を破ろうとしてるらしい。
あの数のゾンビ達が全員入った場合私達じゃ勝てないかもしれない。
「今のアダマイオスでも勝てなかったのにどうすればいいの?.....」
「諦めるな。今度はお父さんも一緒に戦う。いやみんな一緒に戦うぞ」
お父様は私を抱きしめてそう話した。だけど勝てないよあんなに大きくて強いんだよ...。
「ジャンヌ様諦めないでください!」
「俺達も諦めませんから」
「全員でかかれば倒せますよ!!」
アステリアの住人や[薔薇]の人達、それにアドスバーンの兵士達が声高らかに私達を応援してくれた。
そんな私達が下を向いてちゃダメだよね。だけどどうしたらいいの?。
「(ジャンヌ、やらないうちから諦めちゃダメだよ。全部出し尽くさないと)」
「お兄ちゃん?....そうだよね。まだ私達は出し尽くしてないよね」
私はお兄ちゃんの幻聴に答える。そして精神を集中させてマナを練っていく。精霊達が休んでいる間、私は少し無力になっちゃう。だけど弱音を吐いてる場合じゃないよね。
ライとレイも集中していく。だけど、
「もう二人共お口が汚れてるわよ」
「アブアブ~」
「ダダダ~」
一心不乱に食事をしたので口の周りが凄いことになってるライとレイ。それを見かねてメリアお母様がお口を拭いてるんだけど何だか微笑ましい。
「ほら、ジャンヌも!」
「ちょっとお母様、私は自分で~」
「あう、ジャンヌが早くも反抗期....」
「もう、お母様.....お願いします」
私が自分でやろうとしたらメリアお母様が涙目になった。私は仕方なくされるがままに口を拭かれる。だけど内心とっても嬉しい、メリアお母様に甘えられる時間が少し経りなかったかな、とすこし反省。これが終わったら思いっきり甘えちゃうよ!!。今回ばかりはライとレイにも譲れない!。
私はメリアお母様の甘い香りを嗅いで少し目を閉じた。
少し緩やかな時が過ぎゾンビ達がいなくなってしばらくすると大きな叫び声がアステリアを恐怖に陥れた。
「アドスバーン様はどこに?」
「う~んしらな~いいても居なくてもやる事は一緒だよ」
「アイーラの言う通りよガイア。私達はアステリアを守るの」
アドスバーンはジーニと一緒に上空で様子を見ている。本当に危ない時は助けに入るが今の所死人は出ていないのだ。これは奇蹟としか言いようがないが実の所不可解なことが起きていた。
ゾンビに噛まれた者達はアステリアに帰還する間苦しんでいた。しかしアステリアに戻るとすぐに体調をよくして戦線に復帰していたのだ。それはだれのおかげなのかアステリアの住人は知っていたが皆、微笑み黙秘していた。
「ジーニ様だよな?」
「ああ、そうだろうな」
「ジーニ様らしいけどなんで倒してくれないんだ?」
「そりゃーお前、いつもジーニ様に頼ってちゃ俺達やジャンヌ様達の教育に悪いだろ。いつでも助けてもらえると思ってちゃだめだよって事だ」
アステリアの住人達は十二分にジーニの考えを理解していた。それはジーニの今までの軌跡がそうさせているのは言うまでもないだろう。
アダマイオスの咆哮で私は目覚める。ライとレイを見やると三人で見つめ合い頷いた。
「お母様行ってきます」
「私は見送る事しか出来ないけれど。頑張ってね」
「「アイアイ!!」」
精霊達はまだいないだけど諦めない!。
私達はアダマイオスの前まで飛んでいく。アダマイオスの足元ではみんなが戦ってる。吸収しておいてまた外に吐き出されてる魔物と戦ってるみたい、おまけに少し強化されてる。体全体に牙のような鋭い骨をつけた手の長いゴリラのような魔物でとても俊敏に動いてる。
だけど難なく倒してる。流石[薔薇]の人達とアドスバーンの軍だね。
確かに[薔薇]やアステリアの住人はつよい、普通の国の騎士達ではとてもかなわないほどに。だが今回の強化された魔物はその比ではない。
地獄から蘇った魔物と言っても過言ではないほどの恐怖を象徴とした体躯、そしてステータスだ。通常ならば[薔薇]の面々でもかてない。それははっきりと言える。
しかしこの戦場はジーニの知り合いだらけなのだ。ジーニはとても優しくて可愛い...おっと失礼私情を挟みました。
コホンッ、という事でジーニの支援魔法が充満しているのだ。魔物には弱体効果、そして仲間には自分の一割の能力が加わる強化魔法である。弱体効果は何と2割削られ一割とはいえジーニのステータスを上乗せされるという若干過保護の強化がされているのだ。負けるはずがない。
「僕って過保護なんだよね....妹達にもやろうと思ったんだけどバレると恥かしいから。だって僕って照れ屋じゃん?」
ジーニは一人事を話す。アドスバーンにも聞こえないほどの声は誰にも聞こえずに消えていった。
ジーニのおかげでジャンヌ達は気兼ねなくアダマイオスと向き合う事が出来る。
「最終決戦という事か?」
「そう言うこと!」
「「ダ~ウ~!」」
私達は各々の武器を構える。アダマイオスはニヤッと笑い大きく腕を振ってきた。
凄い風が巻き起こり私達は踏ん張っているとアダマイオスの右ストレートが風を切って襲ってきた。間一髪交わした私達に再度アダマイオスの拳がライを捉えた。
「ライ!」
「バブバブ!」
天雷の剣でガードしたライは大丈夫と声を上げた。だけど、
「ライ気をつけて取り込まれる!」
「ダブ!!」
案の定アダマイオスはライが受け止めた所だけを泥状にして天雷の剣を取り込んでいった。
すぐにレイの収納から元の剣を受け取ったライは悔しそうに下唇を噛んだ。
「大丈夫すぐに取り返せるよ」
アダマイオスの周りをしつこく攻撃して回る。嫌がってハエを払うように手を振り回すアダマイオス。だけど私は攻撃をし続けた、時間を稼いでレイの魔法を待っているの。
「バブ~~!」
「待ってたよ~」
レイが準備出来たみたい、私はすぐにアダマイオスから離れる。
離れてすぐにレイの魔法が炸裂する。[コキュートスブレス]から始まって[エアストーム][フレアスパイク][メテオ]がアダマイオスに襲い掛かった。
アダマイオスは避けようとしたんだけど[コキュートスブレス]で動きを止められていたから全弾当たることになった。
[エアストーム]はエアカッターの上位版。複数のエアカッターが竜巻のようにうねり標的に向かっていく。
[フレアスパイク]はボルケーノが得意とする魔法。溶岩のように熱を持つ棘が地面より突き出ていく。
[メテオ]これは言わずもがな、大気圏によって燃えた隕石が標的に落ちる魔法です。みんな知ってるよね?。
アダマイオスの体は粉々になっていったけどどうせ回復するはず。レイに頼んで少しでもアダマイオスを小さくする為に封印していく。
だけど無駄な努力だった。
アダマイオスは回復して元の大きさになると結界を一つ一つ破壊していった。ニヤっと笑うアダマイオスに憤りを感じて私は握りこぶしを作った。
アダマイオスは私達を無視してアステリアへ歩き出す。いくら攻撃しても足を止めないアダマイオスはアステリアの北側の一個目の城壁を踏み荒らした。
ボトボトと落ちる魔物達が城壁内に入り内壁に群がっていく。だけどその魔物達は一瞬で消えていった。
「アステリアの王子様方こっちの心配はしないでください」
「こっちは俺達が何とかします!」
アステリアのブーンとカインが魔物達を蹴散らしていく。私は少しびっくりして頷いた。
アダマイオスをこれ以上行かせるわけにはいかない。お城には戦えない人達が...お母様達がいるんだ。これ以上は許さない!!。
私はマナの壁をアダマイオスの大きさに作ってアルデバランを呼んだ。アルデバランは体を宙吊りにされて壊れていたんだけど無理してもらってる。
「まだあがくか!何故諦めない。今までの奴らはすぐに自分の命を取って街を離れたのに何故お前達は諦めないんだ!」
「ここは私の生れた街。お兄ちゃんの帰る場所。あなたなんかに壊せる物じゃないの!!」
アルデバランと一緒に魔法の壁を押し込む。アダマイオスは力を見せつけたいのか力比べに応えて手を這わせる。
「はっはっは、この壁でお前達の帰る場所を壊してやる。そうジーニの帰る場所をなぁ~~~!!」
「キャ!!」
「ブ~~!!」
アダマイオスの圧があがる。ジリジリとアステリアの中央付近まで引きずられる。
ライとレイも押し返そうとするけど全然足りない。
「ジャンヌ様!負けるな~」
「ライ様!レイ様!」
「この野郎!!王子様方に何しやがる!、こっちに来て俺と戦え!!」
アステリアの人達がアダマイオスに悪態をつく。だけどアダマイオスは笑うばかりで相手にしていない。
「はっはっは!、悔しかったら俺を倒して見ろ。まあ無理だろうがな!!」
アダマイオスが憎い、憎くて憎くて私はアダマイオスを睨みつける。
「お~怖い怖い。人間の時だったら俺は気絶していただろうな。だが今は力を手に入れた。お前なんか怖くね~んだよ。まあ安心しろ。この街の住人やジーニをすぐにあの世に葬ってやるからよ。寂しくねえだろ!!」
アダマイオスは更に圧を上げてくる。私達はお城のすぐ前まで押し込まれる。アルデバランがバチバチと魔力回路の悲鳴を上げてる。
「(もうダメなのかな....お兄ちゃんごめんなさい。ダメだったみたい)」
私は諦めて目を瞑った力も抜けちゃったはずだけど衝撃がこない。
「ダメじゃないかジャンヌ。最後まで諦めちゃ」
私の大好きな声が聞こえてくる。だけどこれは幻聴のはず。私は恐る恐る目を開いて行く。
「お兄ちゃん?本当にお兄ちゃんなの?」
「そうだよジャンヌ。感動するのは良いけど聞いているのかい?。諦めちゃダメじゃないか」
私は怒られてるんだけど嬉しくて涙が止まらない。頭をポンポンとして怒っているつもりのお兄ちゃん、とっても優しいお兄ちゃんは私の大好きな人。
「俺を無視して何してやがる。この状況が見えてねえのか!!」
アダマイオスが悪態をつけながら一生懸命壁を押し込んで来ようとしてるけど壁はさっきとは違い全然動かない。
「君は僕が初めて殺した人だったね。あの時は辛かったよ。だけど今の君は人じゃない。心置きなく葬り去れる」
「ぐっ」
アダマイオスはお兄ちゃんの殺気に怯える。とても大きいアダマイオスもお兄ちゃんの前じゃとても小さく見える。
「ジャンヌ、この壁は維持してね」
「あ、はい!!」
私は急に手を握られてドキッとしちゃった。変じゃなかったかなって気にしながら言われた通り壁を維持していく。
「君は不死身なんだよね」
「はっはっは、そうだ。俺は死なねえ。取り込めるものがあれば俺は復活するぞ」
お兄ちゃんはアダマイオスの言葉を聞いて「そう」って軽い返事を返した。
私はどうしたらいいのか困ってたけどお兄ちゃんは何か案があるみたい。
「ジャンヌこの壁を籠みたいに出来る?」
「出来るけど強度が落ちるかも」
「そこは僕が補助するよ。じゃあやってくれる?」
お兄ちゃんに言われたように私は壁の下部にも同じ壁を発生させた。
「何をしようって言うんだ!無駄だぞ!俺は死なないんだ!!」
「怖いんだね。大丈夫だよ。僕らが殺してあげる」
お兄ちゃんは体を金色に輝かせて髪が逆立つ。まるであの金色の戦士のようになったお兄ちゃんはアダマイオスにマナを放出していく。
下方から斜めに放ったマナはアダマイオスをいれているマナの壁を上昇させていく。
「さあ、ジャンヌ達も僕の後ろからマナを放ってご覧。みんなであいつを倒すんだよ」
「はい!」
「「アイアイ~」」
私達はお兄ちゃんの少し後ろからアダマイオスにマナを放つ。するとお兄ちゃんが笑顔でこっちを見てる。何だか嬉しいみたい。私も嬉しいよお兄ちゃん。
「相手が伝説の人じゃないのが残念だけどこれが伝説の兄妹による必殺技だよ。じゃあみんな一緒に波~ってやるよ~」
「何をしようとしているのかわからんが俺にダメージはないぞ」
アダマイオスは今の自分の状況が分からないみたい。私達兄妹は前世で何度も見た事ある事だったからお兄ちゃんの合図に合わせて掛け声と一緒にマナを放出した。
「「「「波~~~~~!!」」」」
「何だ何なんだ!!」
アダマイオスは斜めに飛んでいく。そのまま大気圏外へと飛び宇宙空間へ。
「何だ、ここは闇の世界なのか!」
宇宙という知識のないアダマイオスは困惑してる。だけど私達はマナの放出をやめないそして不死身のアダマイオスに死を届ける使者が見えてきた。
「まさか、あれはシャイン!」
この世界の太陽は神の名をつけてる。ちなみに月はアステラって言われてるとか。
太陽がアダマイオスに迫る。正確にはアダマイオスが太陽に向かっているというべきだろう。
「ちきしょう、俺は、俺は死なねえんだ。死なねえぞ!!!」
ジャンヌの魔法の壁が太陽により壊れた。そしてアダマイオスはそのまま太陽に押し付けられて焼け溶けていく。宇宙空間に声は伝わらない。誰にも聞こえないアダマイオスの断末魔は宇宙空間によってかき消された。
こうしてアステリアを襲ったゾンビ騒動は終焉を迎えた。
壊れた城壁もジーニが直し傷ついた人達もジーニによって回復していく。
ジャンヌ達はマナを放出し過ぎたようで眠りにつき、ジーニに撫でられるとくすぐったいのか笑顔になって寝言を言ってる。可愛い妹だね。
ライもレイも今回は頑張ってくれたね。ジャンヌとは違って諦めてなかったしね。そうだよ。ジャンヌにはしっかりと言い聞かせないとダメだよね。だけど今は寝かせてあげよう。
僕はお父様とお母様にジャンヌ達を任せて船に帰ろうと思ったんだけどジャンヌが僕の服を掴んで離さなかったから一緒に寝る事にした。とっても甘えん坊な妹だな~。
僕は寝るまでジャンヌの頭を撫で続けた。可愛いね。
アステリアは元の平和な街に戻って行き。ジーニはジャンヌが起きる前にアステリアを飛び出し。
ジャンヌは起きてジーニがいない事に涙した。怒られていたことを思い出したのだ。そして自分を強くしようと深淵の森にこもりっきりになっていく。
しかしジャンヌのお話しはここで終わり。
「ああ~ジャンヌ!ライ!レイ!!」
ツヴァイお父様とメリアお母様が帰ってきた私達を抱きしめてくれた。私は少し安心して涙が溢れたけどまだ終わってない。
「私達は大丈夫だよ。アダマイオスが」
「ああ、見ていたよ。ゾンビ達が急に進行方向を変えたんだ。みんなアダマイオスを目指してる。追撃しているが1万以上のゾンビ達だ。とてもじゃないが全員は倒せん...」
ツヴァイお父様は最悪を想定して話していく。
アダマイオスがやろうとしている事は自分の強化のようで、ゾンビ達を取り込むことであの氷を破ろうとしてるらしい。
あの数のゾンビ達が全員入った場合私達じゃ勝てないかもしれない。
「今のアダマイオスでも勝てなかったのにどうすればいいの?.....」
「諦めるな。今度はお父さんも一緒に戦う。いやみんな一緒に戦うぞ」
お父様は私を抱きしめてそう話した。だけど勝てないよあんなに大きくて強いんだよ...。
「ジャンヌ様諦めないでください!」
「俺達も諦めませんから」
「全員でかかれば倒せますよ!!」
アステリアの住人や[薔薇]の人達、それにアドスバーンの兵士達が声高らかに私達を応援してくれた。
そんな私達が下を向いてちゃダメだよね。だけどどうしたらいいの?。
「(ジャンヌ、やらないうちから諦めちゃダメだよ。全部出し尽くさないと)」
「お兄ちゃん?....そうだよね。まだ私達は出し尽くしてないよね」
私はお兄ちゃんの幻聴に答える。そして精神を集中させてマナを練っていく。精霊達が休んでいる間、私は少し無力になっちゃう。だけど弱音を吐いてる場合じゃないよね。
ライとレイも集中していく。だけど、
「もう二人共お口が汚れてるわよ」
「アブアブ~」
「ダダダ~」
一心不乱に食事をしたので口の周りが凄いことになってるライとレイ。それを見かねてメリアお母様がお口を拭いてるんだけど何だか微笑ましい。
「ほら、ジャンヌも!」
「ちょっとお母様、私は自分で~」
「あう、ジャンヌが早くも反抗期....」
「もう、お母様.....お願いします」
私が自分でやろうとしたらメリアお母様が涙目になった。私は仕方なくされるがままに口を拭かれる。だけど内心とっても嬉しい、メリアお母様に甘えられる時間が少し経りなかったかな、とすこし反省。これが終わったら思いっきり甘えちゃうよ!!。今回ばかりはライとレイにも譲れない!。
私はメリアお母様の甘い香りを嗅いで少し目を閉じた。
少し緩やかな時が過ぎゾンビ達がいなくなってしばらくすると大きな叫び声がアステリアを恐怖に陥れた。
「アドスバーン様はどこに?」
「う~んしらな~いいても居なくてもやる事は一緒だよ」
「アイーラの言う通りよガイア。私達はアステリアを守るの」
アドスバーンはジーニと一緒に上空で様子を見ている。本当に危ない時は助けに入るが今の所死人は出ていないのだ。これは奇蹟としか言いようがないが実の所不可解なことが起きていた。
ゾンビに噛まれた者達はアステリアに帰還する間苦しんでいた。しかしアステリアに戻るとすぐに体調をよくして戦線に復帰していたのだ。それはだれのおかげなのかアステリアの住人は知っていたが皆、微笑み黙秘していた。
「ジーニ様だよな?」
「ああ、そうだろうな」
「ジーニ様らしいけどなんで倒してくれないんだ?」
「そりゃーお前、いつもジーニ様に頼ってちゃ俺達やジャンヌ様達の教育に悪いだろ。いつでも助けてもらえると思ってちゃだめだよって事だ」
アステリアの住人達は十二分にジーニの考えを理解していた。それはジーニの今までの軌跡がそうさせているのは言うまでもないだろう。
アダマイオスの咆哮で私は目覚める。ライとレイを見やると三人で見つめ合い頷いた。
「お母様行ってきます」
「私は見送る事しか出来ないけれど。頑張ってね」
「「アイアイ!!」」
精霊達はまだいないだけど諦めない!。
私達はアダマイオスの前まで飛んでいく。アダマイオスの足元ではみんなが戦ってる。吸収しておいてまた外に吐き出されてる魔物と戦ってるみたい、おまけに少し強化されてる。体全体に牙のような鋭い骨をつけた手の長いゴリラのような魔物でとても俊敏に動いてる。
だけど難なく倒してる。流石[薔薇]の人達とアドスバーンの軍だね。
確かに[薔薇]やアステリアの住人はつよい、普通の国の騎士達ではとてもかなわないほどに。だが今回の強化された魔物はその比ではない。
地獄から蘇った魔物と言っても過言ではないほどの恐怖を象徴とした体躯、そしてステータスだ。通常ならば[薔薇]の面々でもかてない。それははっきりと言える。
しかしこの戦場はジーニの知り合いだらけなのだ。ジーニはとても優しくて可愛い...おっと失礼私情を挟みました。
コホンッ、という事でジーニの支援魔法が充満しているのだ。魔物には弱体効果、そして仲間には自分の一割の能力が加わる強化魔法である。弱体効果は何と2割削られ一割とはいえジーニのステータスを上乗せされるという若干過保護の強化がされているのだ。負けるはずがない。
「僕って過保護なんだよね....妹達にもやろうと思ったんだけどバレると恥かしいから。だって僕って照れ屋じゃん?」
ジーニは一人事を話す。アドスバーンにも聞こえないほどの声は誰にも聞こえずに消えていった。
ジーニのおかげでジャンヌ達は気兼ねなくアダマイオスと向き合う事が出来る。
「最終決戦という事か?」
「そう言うこと!」
「「ダ~ウ~!」」
私達は各々の武器を構える。アダマイオスはニヤッと笑い大きく腕を振ってきた。
凄い風が巻き起こり私達は踏ん張っているとアダマイオスの右ストレートが風を切って襲ってきた。間一髪交わした私達に再度アダマイオスの拳がライを捉えた。
「ライ!」
「バブバブ!」
天雷の剣でガードしたライは大丈夫と声を上げた。だけど、
「ライ気をつけて取り込まれる!」
「ダブ!!」
案の定アダマイオスはライが受け止めた所だけを泥状にして天雷の剣を取り込んでいった。
すぐにレイの収納から元の剣を受け取ったライは悔しそうに下唇を噛んだ。
「大丈夫すぐに取り返せるよ」
アダマイオスの周りをしつこく攻撃して回る。嫌がってハエを払うように手を振り回すアダマイオス。だけど私は攻撃をし続けた、時間を稼いでレイの魔法を待っているの。
「バブ~~!」
「待ってたよ~」
レイが準備出来たみたい、私はすぐにアダマイオスから離れる。
離れてすぐにレイの魔法が炸裂する。[コキュートスブレス]から始まって[エアストーム][フレアスパイク][メテオ]がアダマイオスに襲い掛かった。
アダマイオスは避けようとしたんだけど[コキュートスブレス]で動きを止められていたから全弾当たることになった。
[エアストーム]はエアカッターの上位版。複数のエアカッターが竜巻のようにうねり標的に向かっていく。
[フレアスパイク]はボルケーノが得意とする魔法。溶岩のように熱を持つ棘が地面より突き出ていく。
[メテオ]これは言わずもがな、大気圏によって燃えた隕石が標的に落ちる魔法です。みんな知ってるよね?。
アダマイオスの体は粉々になっていったけどどうせ回復するはず。レイに頼んで少しでもアダマイオスを小さくする為に封印していく。
だけど無駄な努力だった。
アダマイオスは回復して元の大きさになると結界を一つ一つ破壊していった。ニヤっと笑うアダマイオスに憤りを感じて私は握りこぶしを作った。
アダマイオスは私達を無視してアステリアへ歩き出す。いくら攻撃しても足を止めないアダマイオスはアステリアの北側の一個目の城壁を踏み荒らした。
ボトボトと落ちる魔物達が城壁内に入り内壁に群がっていく。だけどその魔物達は一瞬で消えていった。
「アステリアの王子様方こっちの心配はしないでください」
「こっちは俺達が何とかします!」
アステリアのブーンとカインが魔物達を蹴散らしていく。私は少しびっくりして頷いた。
アダマイオスをこれ以上行かせるわけにはいかない。お城には戦えない人達が...お母様達がいるんだ。これ以上は許さない!!。
私はマナの壁をアダマイオスの大きさに作ってアルデバランを呼んだ。アルデバランは体を宙吊りにされて壊れていたんだけど無理してもらってる。
「まだあがくか!何故諦めない。今までの奴らはすぐに自分の命を取って街を離れたのに何故お前達は諦めないんだ!」
「ここは私の生れた街。お兄ちゃんの帰る場所。あなたなんかに壊せる物じゃないの!!」
アルデバランと一緒に魔法の壁を押し込む。アダマイオスは力を見せつけたいのか力比べに応えて手を這わせる。
「はっはっは、この壁でお前達の帰る場所を壊してやる。そうジーニの帰る場所をなぁ~~~!!」
「キャ!!」
「ブ~~!!」
アダマイオスの圧があがる。ジリジリとアステリアの中央付近まで引きずられる。
ライとレイも押し返そうとするけど全然足りない。
「ジャンヌ様!負けるな~」
「ライ様!レイ様!」
「この野郎!!王子様方に何しやがる!、こっちに来て俺と戦え!!」
アステリアの人達がアダマイオスに悪態をつく。だけどアダマイオスは笑うばかりで相手にしていない。
「はっはっは!、悔しかったら俺を倒して見ろ。まあ無理だろうがな!!」
アダマイオスが憎い、憎くて憎くて私はアダマイオスを睨みつける。
「お~怖い怖い。人間の時だったら俺は気絶していただろうな。だが今は力を手に入れた。お前なんか怖くね~んだよ。まあ安心しろ。この街の住人やジーニをすぐにあの世に葬ってやるからよ。寂しくねえだろ!!」
アダマイオスは更に圧を上げてくる。私達はお城のすぐ前まで押し込まれる。アルデバランがバチバチと魔力回路の悲鳴を上げてる。
「(もうダメなのかな....お兄ちゃんごめんなさい。ダメだったみたい)」
私は諦めて目を瞑った力も抜けちゃったはずだけど衝撃がこない。
「ダメじゃないかジャンヌ。最後まで諦めちゃ」
私の大好きな声が聞こえてくる。だけどこれは幻聴のはず。私は恐る恐る目を開いて行く。
「お兄ちゃん?本当にお兄ちゃんなの?」
「そうだよジャンヌ。感動するのは良いけど聞いているのかい?。諦めちゃダメじゃないか」
私は怒られてるんだけど嬉しくて涙が止まらない。頭をポンポンとして怒っているつもりのお兄ちゃん、とっても優しいお兄ちゃんは私の大好きな人。
「俺を無視して何してやがる。この状況が見えてねえのか!!」
アダマイオスが悪態をつけながら一生懸命壁を押し込んで来ようとしてるけど壁はさっきとは違い全然動かない。
「君は僕が初めて殺した人だったね。あの時は辛かったよ。だけど今の君は人じゃない。心置きなく葬り去れる」
「ぐっ」
アダマイオスはお兄ちゃんの殺気に怯える。とても大きいアダマイオスもお兄ちゃんの前じゃとても小さく見える。
「ジャンヌ、この壁は維持してね」
「あ、はい!!」
私は急に手を握られてドキッとしちゃった。変じゃなかったかなって気にしながら言われた通り壁を維持していく。
「君は不死身なんだよね」
「はっはっは、そうだ。俺は死なねえ。取り込めるものがあれば俺は復活するぞ」
お兄ちゃんはアダマイオスの言葉を聞いて「そう」って軽い返事を返した。
私はどうしたらいいのか困ってたけどお兄ちゃんは何か案があるみたい。
「ジャンヌこの壁を籠みたいに出来る?」
「出来るけど強度が落ちるかも」
「そこは僕が補助するよ。じゃあやってくれる?」
お兄ちゃんに言われたように私は壁の下部にも同じ壁を発生させた。
「何をしようって言うんだ!無駄だぞ!俺は死なないんだ!!」
「怖いんだね。大丈夫だよ。僕らが殺してあげる」
お兄ちゃんは体を金色に輝かせて髪が逆立つ。まるであの金色の戦士のようになったお兄ちゃんはアダマイオスにマナを放出していく。
下方から斜めに放ったマナはアダマイオスをいれているマナの壁を上昇させていく。
「さあ、ジャンヌ達も僕の後ろからマナを放ってご覧。みんなであいつを倒すんだよ」
「はい!」
「「アイアイ~」」
私達はお兄ちゃんの少し後ろからアダマイオスにマナを放つ。するとお兄ちゃんが笑顔でこっちを見てる。何だか嬉しいみたい。私も嬉しいよお兄ちゃん。
「相手が伝説の人じゃないのが残念だけどこれが伝説の兄妹による必殺技だよ。じゃあみんな一緒に波~ってやるよ~」
「何をしようとしているのかわからんが俺にダメージはないぞ」
アダマイオスは今の自分の状況が分からないみたい。私達兄妹は前世で何度も見た事ある事だったからお兄ちゃんの合図に合わせて掛け声と一緒にマナを放出した。
「「「「波~~~~~!!」」」」
「何だ何なんだ!!」
アダマイオスは斜めに飛んでいく。そのまま大気圏外へと飛び宇宙空間へ。
「何だ、ここは闇の世界なのか!」
宇宙という知識のないアダマイオスは困惑してる。だけど私達はマナの放出をやめないそして不死身のアダマイオスに死を届ける使者が見えてきた。
「まさか、あれはシャイン!」
この世界の太陽は神の名をつけてる。ちなみに月はアステラって言われてるとか。
太陽がアダマイオスに迫る。正確にはアダマイオスが太陽に向かっているというべきだろう。
「ちきしょう、俺は、俺は死なねえんだ。死なねえぞ!!!」
ジャンヌの魔法の壁が太陽により壊れた。そしてアダマイオスはそのまま太陽に押し付けられて焼け溶けていく。宇宙空間に声は伝わらない。誰にも聞こえないアダマイオスの断末魔は宇宙空間によってかき消された。
こうしてアステリアを襲ったゾンビ騒動は終焉を迎えた。
壊れた城壁もジーニが直し傷ついた人達もジーニによって回復していく。
ジャンヌ達はマナを放出し過ぎたようで眠りにつき、ジーニに撫でられるとくすぐったいのか笑顔になって寝言を言ってる。可愛い妹だね。
ライもレイも今回は頑張ってくれたね。ジャンヌとは違って諦めてなかったしね。そうだよ。ジャンヌにはしっかりと言い聞かせないとダメだよね。だけど今は寝かせてあげよう。
僕はお父様とお母様にジャンヌ達を任せて船に帰ろうと思ったんだけどジャンヌが僕の服を掴んで離さなかったから一緒に寝る事にした。とっても甘えん坊な妹だな~。
僕は寝るまでジャンヌの頭を撫で続けた。可愛いね。
アステリアは元の平和な街に戻って行き。ジーニはジャンヌが起きる前にアステリアを飛び出し。
ジャンヌは起きてジーニがいない事に涙した。怒られていたことを思い出したのだ。そして自分を強くしようと深淵の森にこもりっきりになっていく。
しかしジャンヌのお話しはここで終わり。
応援ありがとうございます!
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