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第六章 学園都市ブラウディア

第三十三話 知らぬが仏

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「ジーニ様が元気ないですって!!」
「ちょ、デシウス声がでかいわ」

 ジーニとフローラがまだ眠るなか、リビングにて女性陣が話し込んでいた。

「でも何故?」
「キッチンに爆弾が見つかって・・・それでジーニ様は」
「・・・シリカが狙われた事で怒ったという事か」
「ん、シリカの自慢?」
「ちょっとララ!」

 真面目な話をララに茶化されてシリカがララを抱きしめた。ララは無表情にシリカを抱き返す。

「でもよかった。シリカが無事で、シリカも私の大切な人」
「ありがとうララ」

 ララとシリカは強く抱きしめあった。

「しかし問題だな」
「ああ」

 爆弾があった事への不安を口ぐちにこぼす、戦力は万全なのだが警備となると何とも心もとない。

「あの爆弾はどこから?」
「ジーニ様は犯人がわかっているようで、任せてと言っていました」
「では私達が出来るのは今後また爆弾を仕掛けられないようにすることくらいか」

 皆、ローズの言葉に頷く、特に今回は警備という観点からもララとヘリアが大きく頷いた。

「ん、今回の犯人は小さな女の子だと思う」
「ララ先生もそう思うか。我も思っていた」

 二人も犯人に心当たりがあるようだ。その女の子は白髪ツインテールでスカーフを目深く被り調味料を宅配してきたのだ。少し不審に思ったものの少女という事でキッチンに入れてしまった。

 その対応をした者にも原因があった。なんとアウローラであった。

 アウローラはジーニに相手にされず屋敷にこもりっきりになっていたのだ。毎朝の挨拶と送り迎えをしていたがジーニは特別長く話す事はなかった。

 アウローラの護衛達は近くの宿に待機しているが近い内にアドスバーンへと帰る予定である。アウローラを残して。

 それもジーニの提案によるものだった。ジーニは護衛の人達を気遣いアウローラの事は僕に任せてとムガインに伝えるととても喜んだ表情で帰還の準備を始めた。その折、婚姻に日はぜひアドスバーン様にお伝えをとかいって親指を立てていた。何か勘違いをしているようだ。

 という事でアウローラは暇な一日シリカやアグリッサと共に屋敷の仕事をして花嫁修業をしていたのだがそれが原因になってしまうとは今寝ている本人にも予期できない事であった。

「まさか、そんな少女が」
「それも火と水の混合魔法という事はジーニ様と同じクラスの者でしょうな」

 少女という特徴と爆弾の魔法を鑑みてデシウスが考察している。混合魔法は上位の魔法に入る、とても普通の魔法使いの使える魔法ではないのだ。

 みんなジーニの学園生活を心配してため息をついた。

「でもジーニならば大丈夫だ。私達は私達の仕事をしよう」

 みんな少し不安な表情で頷いた。

 ジーニは自分が傷つくよりもみんなが傷つく方が嫌なのをみんなも知っている。なのでとても不安になる。

 特に今回はジーニの想い人のシリカが危険に晒されたのだ。

 ジーニの器はとても大きいがシリカを傷つける者がその器に入るには足りない、それほどにシリカという存在はジーニにとって大きな物である。

 今日も笑顔でジーニはフローラと共にリビングに降りてきた。いつも通りの表情にみんなは少し強張る。

「ジーニ様・・・おはようございます」
「シリカさんおはよ~。今日はいつも以上に綺麗だね」
「え?」

 ジーニはシリカの顔を見て満面の笑顔で褒めた。そしてすぐに食事をする為椅子に座った。

「今日もお腹いっぱいシリカさんの料理が食べれるんだ~、何だか幸せ過ぎて怖いな~」
「・・ありがとうございますジーニ様」

 場の空気がおかしい、いつも通りのジーニなのだが何故かこの場にいるシリカとララ以外の人達が口を開かないでいた。

「ん、ジーニ様怒らないで」
「え?ララさん、おかしなこと言わないでよ。僕は、っ全然怒ってないよ。それよりも~ララさんも今日は一段と可愛いね」

 ジーニの言葉にララは両手で顔を隠して赤くなった。

「みんなもどうしたの?。シリカさんのご飯が冷めちゃうよ。って動けないのか~」

 ジーニはシリカとララ以外を[マナパック]で覆っていた。息ができるように口だけ覆っていない。

「プフ!ハハハハ、嘘、嘘だよ~ごめんねみんな」

 ジーニは噴き出して笑い出した。

「ジーニ様悪い冗談を、生きた心地がしませんでした」
「ごめん、ごめんね。でも今回の事はそれだけショックだったんだ。まさか屋敷にクラスメイトが爆弾仕掛けてくなんてさ」

 ジーニは優しい笑顔で答えた。今回の事は本当に大きなことだった。

 恨まれている事は知っていたが周りを巻き沿いにしてでも僕を殺したいと思っているなんて。

「お母さんの仇とか言っていた。それだけ大きな紛争が起こっちゃったんだよね。僕のせいで」
「しかしそれは力だけで支配していたという事だ。その国が怠けていただけだろ」
「我もそう思うぞ。お前の記憶にあった人間の歴史にも出てきていた。隙を見せると人間はつけあがるものだ」

 ジーニを庇い言葉をかけるローズとヘリア。ジーニもわかってはいるもののその当事者になるというのはいたたまれない。

「どうにかして許してもらえないかな?」
「・・・本当にその人のお母さんという方は死んでしまったのでしょうか?」
「え?」
「いえ、死んでいなければ、ジーニ様の[ヒール]で治せるのではないでしょうか?」

 シリカの言葉にジーニは希望を見た。

「そうか、そうだよ。死んでなければガイアさんみたいに欠損だけだったら治せる。でも誠心誠意謝らないとね」
「そうですね。この件に関しては私達も他人事ではないですし」
「ああ、魔法を使ったのは私達の為でもあったからな」

 皆、ジーニのスキルの話を聞いている為、他人事ではないと俯く。

「何とか許してもらうしかないよ。じゃあ、そろそろ学園に行くね」

 フローラと手をつないでジーニは学園へと登校していく。

 いつの間にか二階から降りてきていたアウローラも眠そうな素振りで手を振り見送っている。

「何かありましたの?」

 何も知らないというのはとても幸せであった。
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