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第1章 成長
第1話 ファム
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「おお、神よ! わが村をお救いください!」
「うう! うう~!」
私の名前はファム。私は異世界に転生して5年程過ごした。今、私はダンジョンにささげられようとしてる。
日本で暮らしていた前世が懐かしい。
『金一郎さん。あなたを愛してよかった。私よりも長く生きてくれてありがと』
『姫子……。儂も君が大好きだ』
病院のベッドで見送られた時の最後の言葉も鮮明に覚えてる。とても幸せな前世だった。
1姫2太郎と子供にも恵まれ長男はしっかりと孫を見せてくれた。
とても懐かしい……。だけど、そんな記憶が吹き飛ぶほどの不幸が今世にやってきた。
村はダンジョンと言われる素材や魔物を無限に産む施設によって維持されていた。
そのダンジョンが枯渇したようで魔物も鉄などの鉱物も生まなくなったのだ。
なので人を生贄に捧げてダンジョンに元気になってもらおうと思っているらしい。そして、その生贄というのは私。
縄で縛られて動けないようにして、口にまで縄で喋れないようにしてる。抵抗は無駄。私は孤児としてこの村にいた。
両親はこのダンジョンで命を落とした。私が預けられたのは宿屋のおじさん。そのおじさんは口上を述べているおじさん。私を睨みつけてダンジョン前の落とし穴に私を放り込もうとしてくる。
「うう! う~!」
「抵抗をしても無駄だ。お前はダンジョンのマナとなる」
落とし穴はダンジョンの最深部につながっているらしい。そこに死体を入れるとマナ、魔力となってダンジョンを元気にする。なんだか畑みたい。
実質、ダンジョンには食べ物も出る。それも腐らない食べ物。マナで作られているため、寿命がないらしい。
って冷静に考えているけど、おじさんは私を掲げ上げる。
「神よ! この少女の命を捧げます。どうか! ダンジョンを復活させたまえ!」
「うう~~~~!」
掲げ上げられ抵抗の声をあげる。だけど、おじさん。イブリムおじさんは私を投げるのをやめなかった。
落ちる、落ちる落ちる……。風が耳から音を切り捨てていく。風きりの音しか聞こえない。しばらくすると私は意識を手放した。
これは幸運なんだろう。下に落ちたら衝撃で痛い思いをする。そんなことなら意識がない方がいい。よかった。
「……痛い! 痛い痛い!? な、なんで! なんで生きてるの!?」
意識を取り戻すと痛みで体を起こす。全身が痛い、両手が折れてる。指も無事な指がない。痛みで死んでしまう。
「ど、どうなってるの!」
痛みがストレスになって声を荒らげる。縄もなくなってる口も開ける。縄が自然消滅するわけない。訳が分からないよ。
「グルルルル」
「ええ!? 狼!? 大きい!?」
痛みに耐えながら考えていると唸り声が聞こえてくる。その声の方を向くと牙をむき出しにしてくる大きな狼がいた。
「いや! いや~!」
傷ついた両手で拒否する。だけど、そんな小さな抵抗は無駄だった。大きな口で私は丸呑みにされる。気持ちの悪い唾のような粘液を浴びせられて胃の中だと思われる場所まで飲み込まれる。
「あ、ああ……。私はここで死を迎えるんだ」
ジュ~という音を立てる胃液で体が解け始める。傷ついた指や腕がとにかく痛い。この痛みだけで死ねる。
『不屈、痛み耐性を獲得しました』
「……へ?」
死を覚悟しているとそんな声が聞こえてくる。子供たちの見ていたアニメでそんな言葉を聞いたことがある。
私は興味なかったけど、チャンネル争いで勝った長男が見ていた。スキルとか言っていた、それを私が手に入れた?
「確かに痛くなくなった。それになんだかこのままじゃダメだって気になってきた?」
どうしようもできないけど、精神力が強くなった気がする。痛みがなくなったのは大きい。
「……おしりから出るしかないよね」
人として終わってる考えが頭をよぎる。だけど、それしかない。
「それにしても痛みがなくなるとどうでもよくなるな~。ジュ~って言ってる割には指とかなくならないし」
熱してきている気はするんだけど、一向に体が溶ける気配がしない。むしろ回復してる? てか服も溶けてない? 布は溶かせないのかな?
「折れてた指が元に戻ってる?」
『不老不死の取得条件を達成しました。自己再生を獲得しました』
「え? 不老不死?」
指を不思議に思ってみていると声が更に聞こえてくる。
不老不死? ってことは歳をとらないってこと? っていうか死なないの?
「あ、回復してく?」
傷ついた体が回復してく。骨は元に戻り、外傷は塞がっていく。
この世界は魔法や剣の世界だってわかってた。だけど、まさか私が魔法を使えるようになるなんて思わなかった。それも不老不死なんて普通は成れないものでしょ。
「高いところから落ちて生きていて、更に食べられて生きてる? それが不老不死の取得条件かな? このどれかがそれなんだろうな~」
痛みも何もなくなったことで冷静に考える。たぶん、このどれかが取得条件なんだろう。
とにかく助かった?
「って助かってないよ! 誰か~。誰か助けて~!」
私は必死に助けを呼んだ。こんな化け物みたいな狼のお腹の中に助けが来るはずもないのに。わかっているけど、叫ばずにはいられない。
折角不老不死になったのに外に行けないなんて生き地獄だよ。
あれ? 不老不死?
「不老ってもしかして!? 私って5歳から大きくなれないってこと!?」
私は絶望した。
「うう! うう~!」
私の名前はファム。私は異世界に転生して5年程過ごした。今、私はダンジョンにささげられようとしてる。
日本で暮らしていた前世が懐かしい。
『金一郎さん。あなたを愛してよかった。私よりも長く生きてくれてありがと』
『姫子……。儂も君が大好きだ』
病院のベッドで見送られた時の最後の言葉も鮮明に覚えてる。とても幸せな前世だった。
1姫2太郎と子供にも恵まれ長男はしっかりと孫を見せてくれた。
とても懐かしい……。だけど、そんな記憶が吹き飛ぶほどの不幸が今世にやってきた。
村はダンジョンと言われる素材や魔物を無限に産む施設によって維持されていた。
そのダンジョンが枯渇したようで魔物も鉄などの鉱物も生まなくなったのだ。
なので人を生贄に捧げてダンジョンに元気になってもらおうと思っているらしい。そして、その生贄というのは私。
縄で縛られて動けないようにして、口にまで縄で喋れないようにしてる。抵抗は無駄。私は孤児としてこの村にいた。
両親はこのダンジョンで命を落とした。私が預けられたのは宿屋のおじさん。そのおじさんは口上を述べているおじさん。私を睨みつけてダンジョン前の落とし穴に私を放り込もうとしてくる。
「うう! う~!」
「抵抗をしても無駄だ。お前はダンジョンのマナとなる」
落とし穴はダンジョンの最深部につながっているらしい。そこに死体を入れるとマナ、魔力となってダンジョンを元気にする。なんだか畑みたい。
実質、ダンジョンには食べ物も出る。それも腐らない食べ物。マナで作られているため、寿命がないらしい。
って冷静に考えているけど、おじさんは私を掲げ上げる。
「神よ! この少女の命を捧げます。どうか! ダンジョンを復活させたまえ!」
「うう~~~~!」
掲げ上げられ抵抗の声をあげる。だけど、おじさん。イブリムおじさんは私を投げるのをやめなかった。
落ちる、落ちる落ちる……。風が耳から音を切り捨てていく。風きりの音しか聞こえない。しばらくすると私は意識を手放した。
これは幸運なんだろう。下に落ちたら衝撃で痛い思いをする。そんなことなら意識がない方がいい。よかった。
「……痛い! 痛い痛い!? な、なんで! なんで生きてるの!?」
意識を取り戻すと痛みで体を起こす。全身が痛い、両手が折れてる。指も無事な指がない。痛みで死んでしまう。
「ど、どうなってるの!」
痛みがストレスになって声を荒らげる。縄もなくなってる口も開ける。縄が自然消滅するわけない。訳が分からないよ。
「グルルルル」
「ええ!? 狼!? 大きい!?」
痛みに耐えながら考えていると唸り声が聞こえてくる。その声の方を向くと牙をむき出しにしてくる大きな狼がいた。
「いや! いや~!」
傷ついた両手で拒否する。だけど、そんな小さな抵抗は無駄だった。大きな口で私は丸呑みにされる。気持ちの悪い唾のような粘液を浴びせられて胃の中だと思われる場所まで飲み込まれる。
「あ、ああ……。私はここで死を迎えるんだ」
ジュ~という音を立てる胃液で体が解け始める。傷ついた指や腕がとにかく痛い。この痛みだけで死ねる。
『不屈、痛み耐性を獲得しました』
「……へ?」
死を覚悟しているとそんな声が聞こえてくる。子供たちの見ていたアニメでそんな言葉を聞いたことがある。
私は興味なかったけど、チャンネル争いで勝った長男が見ていた。スキルとか言っていた、それを私が手に入れた?
「確かに痛くなくなった。それになんだかこのままじゃダメだって気になってきた?」
どうしようもできないけど、精神力が強くなった気がする。痛みがなくなったのは大きい。
「……おしりから出るしかないよね」
人として終わってる考えが頭をよぎる。だけど、それしかない。
「それにしても痛みがなくなるとどうでもよくなるな~。ジュ~って言ってる割には指とかなくならないし」
熱してきている気はするんだけど、一向に体が溶ける気配がしない。むしろ回復してる? てか服も溶けてない? 布は溶かせないのかな?
「折れてた指が元に戻ってる?」
『不老不死の取得条件を達成しました。自己再生を獲得しました』
「え? 不老不死?」
指を不思議に思ってみていると声が更に聞こえてくる。
不老不死? ってことは歳をとらないってこと? っていうか死なないの?
「あ、回復してく?」
傷ついた体が回復してく。骨は元に戻り、外傷は塞がっていく。
この世界は魔法や剣の世界だってわかってた。だけど、まさか私が魔法を使えるようになるなんて思わなかった。それも不老不死なんて普通は成れないものでしょ。
「高いところから落ちて生きていて、更に食べられて生きてる? それが不老不死の取得条件かな? このどれかがそれなんだろうな~」
痛みも何もなくなったことで冷静に考える。たぶん、このどれかが取得条件なんだろう。
とにかく助かった?
「って助かってないよ! 誰か~。誰か助けて~!」
私は必死に助けを呼んだ。こんな化け物みたいな狼のお腹の中に助けが来るはずもないのに。わかっているけど、叫ばずにはいられない。
折角不老不死になったのに外に行けないなんて生き地獄だよ。
あれ? 不老不死?
「不老ってもしかして!? 私って5歳から大きくなれないってこと!?」
私は絶望した。
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