ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
14 / 81
第1章 成長

第14話 ラッド

しおりを挟む
「ハァハァ、これでどうだ! やったレベル上がった」

 森を探索して更に3匹のゴブリンを見つけた。すべてラッドが倒すと彼のレベルが上がる。
 息を切らせて達成感で仰向けに倒れるラッド。思わず笑うと彼がニッコリと微笑む。

「まだまだ~これからもっと。って疲れた……」

「ふふ、今日はこのくらいにしておいた方がいいかもね」

 ラッドは立とうとするけど、力が入らない様子で体を起こすだけで立てなくなってる。
 私は彼に手を伸ばして立たせてあげると肩を貸す。

「重いだろ?」

「ううん。全然」

 恥ずかしそうに顔を赤くさせるラッド。重いわけない、私はステータスが高すぎるんだから。

「ゴアァァァァ!」

「「え?」」

 町に帰ろうと肩を貸しながら歩いていると背後から地響きのような声が聞こえてくる。
 二人で後ろを振り向くと木が倒れて道が作られるのが見える。

「と、トロール?」

 道を作っていたものが姿を現した。木と同じくらいの背丈の魔物、トロール。人型の魔物でとても大きい。私はすぐにラッドから離れる。

「ラッド! もう動けるでしょ? 逃げて」

「逃げてってファムはどうするんだ!」

「時間を稼ぐ、できれば倒しちゃうよ」

「た、倒すってお前……」

 ラッドに逃げるように言うと彼は剣を抜いてトロールに構える。私を残してはいけないってわけね。
 でも、彼は怯えてる。表情が恐怖を物語ってる。それもそのはず、自分の何倍も大きな存在に見下ろされているんだから。まだ全然離れているのに、動けなくなってる。

「あ、ああ……」

「馬鹿! 逃げなさい!」

 恐怖で顔を引きつらせるラッド。トロールは木を引き抜いて投げつけてくる。私は彼を庇う。木は私にぶつかり二つに割れた。

「ふぁ、ファム……大丈夫なのか?」

「大丈夫。怖がらなくていい。目を瞑ってて」

 覆いかぶさる私を心配するラッド。彼の顔を手で覆って声をかけると彼は目を瞑ってくれる。

「あまり子供を怖がらせないでよ」

「グルルルル」

 ダモクレスをインベントリから取り出して構える。トロールは再度木を引き抜いて武器にする。
 普通の人ならそれでもいいかもしれない。だけど、私と戦うなら鉄くらいは持ってこないとダメね。

「ハァッ!」

 リーチの長い木を横なぎに払ってくるトロール。それを上に躱して私も横なぎにダモクレスを走らせる。
 トロールの首が地面に落ちて辺りが静かになった。

「ファム! ファム! 無事か?」

「うん。大丈夫。私よりもラッドは大丈夫?」

「え? ああ、大丈夫だ。って足が動かね。折れてるみたいだ」

「え!? 大丈夫なの!?」

 ラッドが静かになったからか、心配になって声を上げる。私が答えるとホッとした様子で話す。
 最初の木を投げつけてきた時にかすっちゃったのかな。

「ほんとだ!? どうしよ」

「は、はは。大丈夫だよ。こんなのすぐに治る」

「すぐには治らないよ。ごめんねラッド……」

「なんでファムが謝るんだよ。謝るのは俺の方だ。情けねえ、動けなかった」

 怪我を見て謝ると彼はニッコリと笑ってくれる。
 だけど、違う。私なら絶対に無傷で助けられた。私なら簡単に助けられたんだ。私の判断が遅かった。
 素手でもいいからすぐにトロールに突進するべきだった。ダンジョンの最深部の魔物じゃないなら、簡単に倒せるんだから。

「添え木をつけて縛らないと。変な方向で固まっちゃう」

 私はそこらへんに落ちてる枝を拾う。痛がる彼に上着を脱いでもらって縛り付ける。

「いてててて! もっと優しくしてくれよ」

「ごめん。でも、こうしないと」

 見様見真似の応急処置。それを終えると彼に肩を貸して街へと帰る。

「ん? ファムちゃんとラッド? なにがあったんだ?」

 城門につくと怪我をしてるラッドに気が付いて声をかけてくるガストンさん。事情を話すと仲間の兵士を森に向かわせてくれる。

「トロールとは驚きだな。だが子供二人で倒しちまうとはな。末恐ろしい」

 ガストンさんは嬉しそうに褒めてくれる。ラッドは複雑な表情になってる。
 
「とにかく。無事でよかった」
 
 複雑な表情だったラッドに気が付いてガストンさんは私達の頭を撫でてくれる。
 彼はラッドが恐怖で表情を作ってると思ったのかもしれない。彼の手はとても温かくてひとりでに涙がこみあげてくる。

「魔石は抜いてきたのか?」

「あ、はい。抜かりなく」

「ははは、でかした。死骸はこっちで片付けておく。そのままにしておいたらゾンビになっちまうからな」

 魔石を見せてニカッと笑うと彼は再度頭を撫でてくれる。
 トロールの魔石は親指程の大きさになってる。いくらになるのか期待しちゃうな。
 死骸は放置するとマナがたまっていって動き出すんだよね。生ける屍、ゾンビになって生きているものを狙う。
 ゴブリンくらいの大きさなら死骸は放置していても大丈夫なんだけど、トロールくらいの大きさになると、体に含まれるマナが多いからゾンビ化しちゃう。改めて思うけど、この世界はほんと恐ろしい世界。

「足が折れてるのか。応急処置はファムがやったのか?」

「はい」

「見事だ。ポーションを使うぞ」

 ガストンさんはラッドの足を見て添え木をそのままで赤い液体の入った瓶を足に傾ける。
 液体がラッドの足に触れると緑色に輝きだす。

「すげぇ!? 治ってく!」

 ラッドは感動で声を上げた。
 ポーションか。私も欲しいな。ラッドだけじゃない。みんなが怪我をしたときに治せるように。怪我を治す魔法はないのかな?

「ガストンさん。怪我を治す魔法は知りませんか?」

「ん? ああ! なるほどな。トロールを倒したのは魔法ってわけか。その歳で魔法を使えるんだな」

 ガストンさんは私の問いかけに納得して手を叩く。魔法が使えればトロールも倒せる、そう思ったんだろうな。
 でも、残念でした。トロールは剣で倒しました。

「【ヒール】って魔法がある。だが、詠唱は俺は覚えていないな。なんせ使えないから覚えないんだ」

「そうですか…」

 ガストンさんが残念そうに話してくれる。詠唱がないと使えないか。でも、魔法名がわかればなんとかなるかも。今度実験してみよう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...